57 桃太郎伝説 (マップあり)
「それで明日はどこ行くの?」
『うむ。那岐山断層の少し南に、畑ヶ鳴断層と塩之内断層があるという話をしたじゃろ?』
「うん」
『前回は塩之内断層に行ったわけじゃが』
「河童さんのとこね」
『うむ』
「羽の生えた河童さん、可愛かったなぁ」
『う、うむ、そうじゃたの』
「またあそこ行くの?リベンジ?」
『確かにあそこには、まだ邪気が残っておるのじゃが、そこにたどり着くにはちと不便での。鉄の馬車の道からちと外れておる』
「そか、ボク、自転車お家に置いてきちゃたからね」
『そこでじゃ、もう一つの断層、畑ヶ鳴断層に巣食う邪気退治はどうじゃ?』
「はたごなる?」
『畑が鳴くと書いて、はたごなる、じゃ』
「わかった!グーグーマップで見てみるよ!」
「んー 出てこないな。普通にグーグー先生に聞いてみよ」
『ふむ』
「あ!元祖桃太郎伝説のウォーキングって、出てきた!カッコいいぞ!」
◆剣巫女 岡山県 塩之内断層・畑ケ鳴断層 マップ
畑ヶ鳴断層は、岡山県吉備中央町を南端とし、そこから北西に岡山県美咲町にいたる活断層である。
昭和三年発刊の『三保村誌』(玉木実氏編纂)の鬼山の由来に桃太郎の名が記されている。
「紀元一千八百年代保延の年、此の山に悪鬼現はれ 種々災害をかもした。……中略…… 當時桃太郎と異名をとつた、豪傑が此の里に住んでゐた。或日單身此の山に登り、悪鬼と格闘し迯ぐるを追ひ一劍のもとに退治た」
後に「みさき桃太郎の会」の有志の方々により、みさき桃太郎伝説ゆかりの地(鬼山、焼寺、退治山、勝﨏、祝詞)に案内板が設置された。
同会有志の方々により、「元祖 美咲桃太郎伝説ウォークマップ」が作成され、一般公開されている。
桃太郎伝説は全国各地にある。特に有名なのが、岡山県岡山市、香川県高松市、愛知県犬山市のものであり、三大桃太郎伝説と呼ばれている。
岡山県は有力なブランディング戦略として、桃太郎伝説を推している。その甲斐あり、日本遺産(文化庁)に、『「桃太郎伝説」のうまれたち おかやま』が認定されている。岡山市の吉備津彦命を祀る吉備津彦神社もその認定群の一つである。
美咲町の桃太郎伝説は岡山市のものとは別だが、書物に記されたものとしては最も古いと主張されおり、興味深い。三保村は今日の美咲町にあたる。
「鬼タイプ?ってことは相手も武器持つ系?ぶっといイボイボの鉄のこん棒だよね。ボク、武器持った敵と……、大丈夫かなぁ?」
マズい!マケヒロ根性勃発案件か!勝﨏で、「ざぁこ、ざぁこ」されてしまうのか!?ザコだけに……、太いイボイボ、口に突っ込まれて!?
『いや、あそこの本体はもう浄化されておる。本体討伐の闘いが、伝説としてのこったのやもしれぬ』
「ふうん」
『地名に祝詞という名前も残されておるしの。もっとも読み方は違うようじゃが』
「なるほど?」
『闘い敗れた残存連中、ある程度は地脈の力を喰らい、回復しておろうがの。それでも今残っておる奴らに、剣奈が負けるとは思うておらぬよ』
「むふふふふ」
『じゃが油断は禁物じゃぞ!』
「はい!師匠っ!」
どうやら今回はマケヒロにならなくて済みそうである。いや、フラグか!?まさか!?
『ではゆっくり眠るが良い』
「明日万全でのぞみたいから、コンディション整えとくね!来たれ、オートヒーーールッ!ん♡」
剣気を取り込み、身体中に薄く行き渡らせる剣奈である。体がほのかに光につつまれ、安らぎに意識が遠のいていくのだった。
剣奈は心地よい気分で眠りについた。女の子の身体のままであることに、剣奈は全く気づいていない。