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48 神隠し


「えーーーー!」

 幽世で剣奈たちはかなり高い空間に出現した。ホテルの8階にいたのである。仮にロビーフロアを4.5m、一般フロアを3.5mとすると、単純計算で25mほどとなる。小学校のプールを空中に建てた長さに相当する。かなり高い。

 

「高いよ!高すぎるよ!クニちゃ!」

 幽世に現れた剣奈。想像以上の高さに、剣奈は驚いた。

「ん♡」

 剣奈は剣気を吸い込み、足を強化した。つま先が地面に触れる瞬間、剣奈は衝撃を、足先、足首、膝、腰の順に逃がし、軽やかに着地した。

 千剣破は、

「尊い、、」

 そうつぶやきながら、身も心も剣奈に委ねるのだった。

 

「異世界に着いたよ。お母さん」

 剣奈はそっと千剣破を下ろした。千剣破はうっとり剣奈を見つめ、、慌てて自制心で百合心を抑えた。

「んんん、んん。それで、来国光さん?」

 咳払いし、取り繕ってから、来国光に呼びかけた。

「それで?どうして剣人は剣奈ちゃんになってるのかしら?説明してもらえるかしら?」

『うむ。乙女舞の神事の為だ。舞い手に宿る清らかなる神気。それがワシを通じ、地脈の邪気を払うのだ。舞い手は、清らかなる乙女でなくてはならぬ』

「はあっ?さっぱりわからないんですけど?よしんばそれが本当だとして、じゃあ女の子にお願いすればいいじない?わざわざ男の子を女の子に変えてまで乙女舞をさせる意味がわからないんですけど?」

「そんな理由でうちの大事な息子を女の子にしちゃったの!?」千剣破は大きな憤りを感じた!剣奈に百合のときめきを覚えたことは、すっかり、ほんとにすっぱり、心の棚に上げ、親としての憤りをぶつけるのだった。

『それがな、ワシにもわからぬのだ。以前の闘いで意識が飛び、気がついたら、川原で剣奈に(なかご)を握られ、地面から引き抜かれおったのじゃ。そもそもじゃ、通常、人は幽世(かくりよ)に来れぬはずなのじゃがの。招かれぬ限り。じゃがの、剣奈は忽然とそこにおったのじゃ』

 千剣破は、とんでもないことを言い出した来国光の言葉に混乱し、思わず剣奈に問いただした。

「剣奈?どういうことなの?」

 千剣破はこの姿の剣人を、剣奈と呼ぶことに決めたようだ。すっかり女子の剣奈を受け入れていた。千剣破本人はまだそれに気づかない。

 

「川に輝く朝日がとってもきれいでさ、なんだか川沿いを歩きたくなって、、途中で電車を降りて歩いたんだ」

 剣奈は出会いの時を思い浮かべながら、説明を始めた。

「それでさ、ダムを降りたらクニちゃが地面に刺さってて、捨ててあるからいいだろうって、抜いてみたらスポット抜けたんだ。ホントだよ?でもね、ダムが高くて帰れなくなっちゃって、そしたらクニちゃが話しかけてきてね」

「いったんそこまででストップ!」

「はい!」

 思い出しつつ言葉を紡ぎだす剣奈であったが、いきなりの千剣破のストップ宣言にびっくりし、大きな声で返事した。

「いろいろツッコミどころは満載なんだけど、、まずどうして電車を降りたって?剣奈、寝台電車あんなに楽しみにしてたじゃない?」

「それが、ボクにもわからないんだ。きれいだなーって朝日見てて、気がついたら電車を降りてたんだ」

 そうだ、この子はそんな子だった。昔からそうだった、、そして夜と朝が交わる時間、、彼は誰時(かわたれどき)じゃないの!現世(げんせ)幽世(かくりよ)が重なる時間帯だわ!そして千剣破の心に忽然(こつぜん)とある言葉が思い浮かんだ。


 神隠し!


 そうよ、まさに神隠しの流れだわ。イギリスで言うチェンジリング!いえ、入れ替わってないから。ううん、入れ替わってる!剣人と剣奈が入れ替わってる!!

 えっ!?えええええっ??

「剣奈!その時、なんか変なことなかった?誰かに呼ばれたとか、霧がかかってたとか」

「誰にも呼ばれてないよ?えーっと、霧はわかんないけど、山から風が吹いてた!」

 結界の風だわ!人が近寄るのを妨げる。本来誰も近づけないはず。  

「向かい風が吹いてたのね。どうして風に逆らってまで進んだの?」

「えーーー、冒険ってそんな感じでしょ?向かい風に逆らって草木をかき分けて森を進む。そしてダンジョンを見つけるんだ!ダンジョンで宝物を見つけながら進むんだ。勇者の剣や魔法の装具を見つけるんだ。そして最後は封印の間でダンジョンボスが出てくるんだ!そのダンジョンボスを倒したら、そのダンジョンはボクのものになるんでしょ?」

 千剣破はグラリとした。そうだ。確かに剣人はそんな子だった。でも、そんな子供じみた理由で結界を破ったの!?剣人らしいと言えば剣人らしいけど。

 生きてたからいいけど、下手したら幽世に囚われて戻れないパターンじゃない。完全にっ、神隠じゃないの!剣奈、よく現世に戻れたわね。

 

 千剣破は息子がナニカに招かれたことを確信した。そして、さらに質問を投げかけていくのだった。

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