47 百合じゃない!本当だっ!
「荷物は準備できた。クニちゃもベルトに差した!じゃあ身体強化いくよ!」
剣奈は来国光から剣気を吸い、丹田に溜めた。
「ん♡」
色っぽい声を上げ、清冽な色気を放つ剣奈である。
「ちょっと!ちょっと!ちょっと!!なにそれ?剣人に何しちゃってくれてるの!?そういうのはまだ剣人には早いって!もっと大きくなってから!」
女性としての愉悦の声をあげる剣奈に母は驚く。
「お母さん何言ってるの?剣気を使って身体強化するだけだよ?」
気の所為なのか?
気の所為だったのか!!??
剣人が色っぽい声を上げたように聞こえたのは、自分が汚れてしまってるだけなのか!!??
ふっ。大人って、イヤね。
目をぐるぐる渦のようにして、千剣破は思考停止した。
剣奈は軽々と千剣破を抱いた。「きやっ」千剣破が驚き声を上げた。
横抱きである。百合である!いや、よそう。
しかし千剣破の心は違った様である。潤んだ目をして、凛々しい剣奈の顔を見上げ、そっと頬を胸に寄せた。少しだけ柔らかい気がした。
千剣破はいまの剣人が、剣奈であることをようやく受け入れた。息子に横抱きにされてる背徳感、女子とイチャイチャしてるような高揚感、色んな萌え感情が自分でも訳が分からず混じり合い、溢れ、千剣破は幸せな気分にぴくんと体を震わせた。
いや、軽イキしたんじゃない。本当だっ!
「お母さん、大丈夫?怖くないからね」
剣奈は、かすかにふるえた千剣破を、異世界移転を怖がっているからだと、そう判断した。
「剣奈、、」
息子、いや娘から、優しく声をかけられ、千剣破は潤んだ目でそっと頷くのだった。
『剣奈、いくぞ。追唱せよ』
「うん!」
『「掛けまくも綾に畏き
天土に神鎮り坐す
最も尊き 大神達の大前に
慎み敬い 恐み恐み白さく
今し大前に参集侍れる
剣奈と来国光と千剣破 幽世に送りたまへと
拝み奉るをば
平けく安けく
聞こしめし諾ひ給へと
白すことを聞こしめせと
恐み恐み白す』」
剣奈と千剣破の体が淡く光り、静かに現世から消えていった。