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46 剣奈


 千剣破(ちはや)は自制心を振り絞り、できるだけ優しく尋ねた。

「剣人、ちょっと確認していい?」

 剣奈は母の葛藤に気づかない。

「なあに? お母さん」

「剣人、女の子になってない?」

「え?」

 ぺたぺたぺた自分の身体を触る剣奈。よくわからないけれど、異世界にいる時の自分のような気がした。

「あ、うん、もしかすると、なってるかも?」

 どういうことだろう。来国光の先導した呪文に間違いがあったのかもしれない。剣奈は来国光に確認することにした。

「クニちゃ、ボク女の子になってない?こっちだと身体、変わらないんじゃなかったっけ?」

『いや、そんなことはないぞ。祝詞を唱えたことにより、神の力を受けやすい身体に、自然と変わったのじゃ』

「「えーーーーーっ!」」

 剣奈と千剣破、2人の声が重なった。

 剣奈は現実世界で女の子になった自分に、千剣破は短刀が話したらしいことに驚いていた。

「か、か、か、刀、刀! 刀が喋った!」

「いやだなー、お母さん。お母さんの推しの刀剣たちなんて、普通に話してるし、人の姿に変身して冒険してるじゃん。ソッチのほうがすごいよ。クニちゃは人の姿に変身できないみたいよ?」

「そ、そ、そ、そ、そうだけどお!あれはゲームとか、舞台とか、物語の世界であってぇ!現実では!」

 千剣破ははっと思った。ホントはそんなことは現実では起こりえない。そんなことを剣人に言うわけにはいかない。そんな現実を教えてしまったら、剣人の夢が壊れてしまう。

 子どもの夢は守るべき。いずれ知るようになるまで、出来るだけ夢は守ってあげるべき!

 って、、、

 え?

「ええええええーーーー!!!!」

 今、現実?あれ?刀が喋るはずが、、剣人が女の子になるはずが、、あれ?あれーーーー??私、夢見てるのかな?ひょっとしてまだバスの中?混乱し、現実逃避をする千剣破である。

「だから現実だってば。ボク、選ばれたんだ!悪の暗黒ガスエネルギー生命体をやっつけないと、地球が滅びちゃうんだ!」

「えっ?」

「アニメでみんなやってることじゃん。ボクの番になっただけのことだよ。ボク、選ばれて、見込まれてヒーローになったんだ」

「えっ?」

 あ、やっぱ剣人だわ。正義の味方ごっこ。でも、よくできた手品。全然タネがわからないわ。

 現実逃避をし続ける千剣破であった。

「クニちゃ。お母さんを異世界に連れて行ったほうが話が早いと思うんだけどさ」

 話を理解できていなさそうな母であった。剣奈は母を異世界に連れて行った方が話が早いと判断した。

「今クニちゃさ、もう出てきちゃてるじゃん?あっちに行くために、またアイテムボックスはいる?」

 これまで、来国光の顕現と、異世界(幽世(かくりよ))への移転はセットであった。だから、剣人は異世界に行くためには、来国光に再び、アイテムボックス(隠れ場)に入ってもらう必要があると考えた。

『いや、あの術式はワシの顕現と、剣奈の幽世(かくりよ)への転位を同時に行う術式じゃで、ワシの剣気と祈りによる神気を合わせてじゃの、、転位だけなら、別にワシがこっちに顕現しておっても、、』

 来国光は修行や自らの手入れ、さらには現世での剣奈を定着させるためにも、現世で顕現しておくことも悪くないと考えた。そうであれば、幽世(かくりよ)に剣奈だけの力によって転位する術式に慣れてもらうのは良いことのように思えた。来国光は続けた。

『ワシはもう顕現しとるし、剣奈ももう神気を受けやすい身体に変わっておるでな。ここは別の術式を使おう』

「わかった!じゃあ川原に行く?橋の下の目立たないところ」

『いや、ここでよかろう』 

「ん?ここだと、ビルの中で高い場所にいるから、異世界でも高く放り出されるんじゃなかったっけ?」

『そのとおりじゃ。しかしの、転位に際して神気をいただき、ワシの剣気も使うて脚力を高めるほどに、剣奈であれば悠々着地できるであろうよ』

「えーぶっつけ本番で?」

『おなごの姿にて現世で表に出るのは嫌なんじゃろ?』

「あー、まあ、もう、慣れちゃったけどね。まあいいや。クニちゃが出来ると言うなら、ボク、出来る気がするよ」

『うむ。剣奈なら必ず出来る』

「どうすればいい?」

『ワシを腰紐に差し、荷物を背負い、母御を抱いて、我に追唱せよ』

「えー お母さん大人だよ?ボク、抱きかかえられるかなぁ」

『その姿なら剣気を使えるじゃろ。剣気を体全体に薄く流し、足、体幹、腕の筋肉の強化を意識するのじゃ』

「わかった!」

 母を抱えての異世界移転(幽世転位)である。「カッコいいっ!さすが剣人!」そう褒めてくれる母を想像しながら、剣奈は移転準備に取り掛かるのだった。

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