33 穏やかな朝
「クニちゃん、おはよ」
『うむ。おはよう。剣奈』
「いい天気だね。歯を磨いて朝ごはん食べよ」
今日は敵と闘わないとだから、たくさん食べるぞ!意気揚々と食堂に向かう剣人である。
剣人の泊まっているホテルでは、朝食はビッフェが用意されていた。大好きなカレーにエビフライをトッピング。ウインナー、ベーコン、スクランブルエッグもトッピングに加えた。別のお皿にはポテトフライもこんもりと盛り付けた。
良い子の剣人は、母から言われてる野菜、牛乳もきちんと取ることを忘れない。野菜にはツナ、コーンをトッピングし、たっぷりとマヨネーズをかけた。野菜のわきにはポテトサラダをたっぷり盛り付けた。
「もぐもぐもぐ。おいし~♪おかわりも自由!旅はいいなー」
至福の朝を過ごす剣人であった。
「さあ!お母さんにライムして出かけよう」
お母さん、おはようございます。クニちゃんに聞きました。クニちゃんはお父さんっ子みたいです。お土産は刀に塗る丁子油か椿油がいいそうです。拭紙も欲しいそうです。クニちゃんもお母さんと会うのを楽しみにしてるそうです。
「よし、送信っと」
ピロン♪
「あら?剣人からライム。もう遊びに行くの?子供は早いわねぇ。クニちゃんに聞いた? ホテルで待ち合わせしたのかしら?フォト送ってほしいとこだけど、プライバシーあるものね」
息子からのライムを読みながら独り言をいう千剣破である。息子のライムを読みながら、脳内会話を続けた。
丁子油か椿油ってまた渋いわねぇ。しかも拭紙までとは。小学校低学年とは思えないわ。やっぱり居合道場か古武術道場の息子さんなのね。お父さんに懐いてるみたいだから、きっと色々教えてもらってるのね。
ちっちゃい子が偉そうに「抜刀とは」、なんていってるのね。可愛い。うふふふふ。
千剣破は剣人のライムを常識で判断し、頭にクニちゃんを思い浮かべた。剣人と2人で夢中にチャンバラごっこを繰り広げている様子。難しい言葉を使って剣人に偉そうなことを言っている様子。使い道などないだろうに、親の言葉で覚えた御刀油と拭紙をお土産に欲しがる様子。精一杯背伸びして大人ぶっている小さな子供を頭に思い浮かべた。そんな想像に思わず頬を緩ませるのだった。
剣人へ。おはよう。気をつけて行ってらっしゃい。楽しんでね。
「送信っと」
ピロン♪
黒震獣との初対決を控えた朝、剣人は一日の始まりを穏やかな気分ですごすのだった。