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27 幽世へ (マップあり)

『さて剣奈よ、今日はいよいよ幽世(かくりよ)で修行じゃ』


 翌朝、朝食を終えた剣人はいよいよ異世界での初修行だと胸を高鳴らせていた。


「うん!異世界って時間の流れが早くなったり遅くなったりする?向こうで1週間修行してもこっち帰ったら一時間だったりとか?」

『あー、時間の引き伸ばし、あるいは幽体だけでの修行じゃな。できるぞ。しかしそれをやるには、もそっと修行が必要じゃな』

「わかった。剣気をうまくコントロールして、使えるようスキルアップしないとダメなんだよね?新しいスキルが発現しないとだめとか、レベルアップしないとダメとかもあるかも?」


 コントロール?スキルアップ?スキルの発現?レベルアップ?来国光に理解できない言葉が並んだが、(わざ)を磨いて上達する意味だろうと解釈する来国光である。もはや剣人の謎言葉、剣人語の変換と解釈は手慣れたものである。


『そのとおりじゃ。さすが剣奈じゃ。では表に出るぞ』

「ここから直接行けないの?』

『ほぼ同じ座標点での位相転換じゃからの。ちょっとのズレならワシが調整することも出来るし、慣れれば剣奈自身がある程度座標点をずらすことは可能じゃ。が、今はまだ無理じゃ』

「異世界って現実世界と全く同じ感じなの?」

『似てはおる。しかし異なっておる。たとえば現世には大きな建物が立ち並んでおるが、幽世(かくりよ)には無い。しかし不思議なことに現世で作った建物が、幽世にあることもある。例えば剣奈が登れなんで難儀していた大きな石の建物、ダムといったかの?幽世(かくりよ)にもあったじゃろ?』


…………


 正直に言おう。色々設定を真面目に考えたのだが、どうしても整合性が取れない部分が出てしまう。なので神様によるご都合主義を採用させていただくことにした。

 

 一応考えた設定は、次のような感じである。

 

 現世と幽世は座標軸が同一の別次元であるが、次元の位相が重なっては離れを周期的に繰り返すと想定した。

 現世と幽世での同時存在性は次のように考えた。現世と幽世の層移転で依り代としたものは両次元で同時存在性をもつ。神様は両次元の行き来を自由にできる。邪気の両次元の行き来は、地力(地球生命エネルギー、地脈エネルギー)の吸収蓄積度合いが高まると可能となる。

 神様が現世の建築物・構築物を幽世に望んだ場合、その外形は幽世で存在可能となる。邪気の望み実現度(念を繭とした怪異の実体化など)は条件による。人家や街などの人の住まいは幽世では平原や森、荒れ地や湿原などになる。ダムなどの構築物は幽世に存在する場合もあるが内部に発電施設やポンプなどはない。幽世のダムが水を通す仕組みは、内部孔による素通しということにさせていただいた。

 幽世には電気は通っていない。発電施設なども幽世には存在しないということにした。剣人と来国光との出会いの砂防ダムは神様が剣人を導くため幽世にも存在させた。(こしらえ)を隠した楠木の霊木は依り代にした関係で両次元に存在する。

 基本、現世と幽世は似たような空間だが、両次元の風景、地形は微妙に異なる。神様や邪気の意思で両次元に同時存在するナニカもある。そんな感じのイメージでお願いしたい。


…………


 さて、話を二人の物語に戻そう。


「たとえば、ここで変身するとどうなるの?」

『幽世ではかなり高い空間に放り出されることになる。もちろん多少ならワシも出現地点をずらせるが、これだけ高いとな。ということで剣奈よ、表に出るのじゃ』

「わかった」


 リュックに荷物を詰め込みホテルを出る剣人である。宿泊延長については幸い部屋が空いていたので2泊増やした。ホテルには母から連絡済みである。

 剣人の泊まっているホテルは岡山駅の南東に位置する。ホテルを出て東に歩くと程なく一級河川の旭川に行き当たった。岡山観光で有名な岡山城、後楽園などもこの旭川沿いである。桜の名所でもあり、緑豊かな河原が広がっている。


◆剣奈 旭川岸修行 マップ

挿絵(By みてみん)


 剣人らは櫻橋の対岸たもとに緑地が広がっているのを見つけた。旭川緑地である。剣人らが到着したとき人影はまばらだった。


『あそこの橋の下はどうかの?あそこなら目立たぬじゃろ。本当は天が空いていた方が良いのじゃが、まあ大丈夫じゃろ』

「わかった」

『では参る。右手を天にかかげよ』

「うん」

『左手を胸にかかげよ』

「うん」

『右手を下ろし手を前に、左手も前に、ハの字になるようにして静止せよ』

「ん!」

『手を合わせ合掌せよ』

「ん!」

『両手のひらを天に向けよ。続けて唱和せよ』


『「吐普加美依身多女(とおかみえみため)。来たれ、来国光』」


 剣人は光りに包まれ、やがて体が風に溶けた。剣人のいた旭川の岸辺は人影なく、ただ清らかな風が吹き渡るだけだった。

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