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22 敵の正体、そして帰還


来国光の説明は続く。


『ワシの手伝ってほしいことを詳しく話すとじゃな、、幽世(かくりよ)の次元断層に根付く不定形生命体がおってな。そいつらを退治する必要があるのじゃ』


「うんうん」


『そいつらが巣食っておるのは幽世なのじゃがの、不思議なことに幽世と現世であたかも同時存在するがごとく、現世にも影響を及ぼすのじゃよ』


「そうなんだ!」


『奴らが巣食う狭間の強度が限界に達すると、幽世で大地が大きく歪む。ところが、同じ座標点の現世も大きく撓むのじゃ。狭間の限界が来て(たが)がはずされると、幽世でも現世でも同時に大地が大きく揺さぶられるのじゃ。つまり、「なゐ」、すなわち大地震が起きるのじゃ』


「なるほど!わかったよ!謎の悪の生命体が、現実世界を破壊すべくこっそり異世界に隠れて悪巧みをしてるんだ!そいつらが現実世界を破壊するために地震を起こすんだ!そんな奴らをやっつけるため、ボクは正義のヒーローとして選ばれた。ボクは異世界に召喚された勇者なんだ。だからボクはそいつらをやっつけなきゃならないんだ。そうだよね?」


『うむむむむ。剣奈は(さと)いのお!まさしくそのとおりじゃ!』


来国光はだいたいあってればそれでいい、やってもらえることをやってもらえればそれでいい、的外れすぎなければ褒めて育てよう、改めてそう決心するのだった。


「よし!ボクが勇者として、ヒーローとしてやることは分かったよ。がんばる。まずは異世界移転と現実世界への帰還の魔法を覚えなきゃね。教えて!」


『承った!まずは現世への戻り方じゃが、これは簡単じゃ。深く一礼して、ワシを(さや)に入れて両手で捧げ持つ。捧げた両手を高く挙げ、そして一言』


(さきわ)ひ給ひし事を

嬉辱奉うれしみかたじけなみまつりりて

ここに来国光を清き真心以ちて

置足(おきた)らはし

(まつ)(さま)

安らけく聞こしめし給へと

恐み恐み白す』


一言とは?いや言うまい。恐れ多い。かなり省略した術式であるのは事実。


「分かった!ちゃんとクニちゃんが先に言ってね!」


分かってない!


『うむ。間違いなくそうさせてもらおう』


「うん!」


『して、じゃ。次はワシの顕現と幽世への転位の術式じゃ』


「異世界移転の呪文だね!」


『右手を天にかかげよ。左手は胸にかかげよ』


「うんうん」


『次に、右手を下ろし手を前に、同時に左手を前に。ハの字になるようにして静止。一拍おいて、肘を折って手を合わせ、合掌せよ』


「う、うん」


『最後に、両手のひらを天に捧げ向け、

言葉を発せよ。吐普加美依身多女(とおかみえみため)。来たれ、来国光、と』


「なるほど。変身ポーズと呪文がセットなんだね。わかる、わかるよ。大体そうなんだもん。変身ポーズがこんな感じて、最後に呪文、「とおかみえみため。きたれ、らいくにみつ」か」


『そうじゃ!』


「こっちは短いね。そのうち覚えられそう」


『うむうむ。さすがじゃ』


「とおかみえみため。とおかみえみため。とおかみえみため」


さわさわさわ


「あれ?なんかひんやり涼しい」


清冽(せいれつ)なる気が充ちたのじゃ。力のある言霊じゃからな。大切に言うのだぞ!仇や疎か(あだやおろそか)にしてはならんぞ』


「わかった!」


「じゃあ帰るね!またね!」


シーン、、、


じとーーー


「もうクニちゃん!ちゃんとその時になったら言ってくれるって約束したばっかじゃん!プンプン!」


『お、おう。すまぬ。では言うぞ!深く一礼せよ』


「ん!」


『ワシを鞘に入れて両手で捧げ持て』


「ん!」


『捧げた両手を高く挙げよ』


「ん!」


『ワシの言う言葉を唱和せよ』


『「(さきわ)ひ給ひし事を

嬉辱奉うれしみかたじけなみまつりりて

ここに来国光を清き真心以ちて

置足(おきた)らはし

(まつ)(さま)

安らけく聞こしめし給へと

恐み恐み白す』」


風が吹いた。剣奈と来国光の姿が薄くなり、やがて幽世から消えた。清冽(せいれつ)なる空気だけがその場に残っていた。


(第一章 ヒーロー(♀)爆誕 完)



一章終了です。

ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。


第二章ではいよいよ闘いが始まります。今後とも、お付き合いしていただけましたら、大変うれしいです。


夏風


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