21 隠れ場
『さて、そろそろ現世にもどるかの』
「げんせ?」
『うむ。そうじゃ。ワシが今顕現しておるのは、剣奈の住まう次元とは微妙に異なる幽世とよばれる次元なのじゃ』
「んー???」
『つまりワシが顕現しておるこの次元と、剣奈が「剣人」として存在している次元とは違う次元なのじゃ』
「全然わかんないよ」
『そうじゃな、細かい話はあとにして、剣人の現世とこの世界、幽世と呼ばれている世界じゃがな、その行き来の術式を覚えてもらおうかの』
「えー、またあの長い呪文を言うの?さっきはクニちゃんに続けてだから言えたけど、意味わかんないし。長すぎて覚えらんないよ」
『あー、そこは大丈夫じゃ。剣奈は賢いし、ワシの声は現世にも届けられる。なんなら現世に顕現することも可能じゃ』
「でもボク、旅してるんだよ?この楠木からも、川からもすぐ遠く離れちゃうよ?」
『それも大丈夫じゃ。ワシと剣奈の魂は結紐で繋ながっておるでな。剣奈を依り代として、ワシの居場所、隠れ場を作ることが可能じゃ。剣奈を依り代として隠れ場をつくっておるので、現世で剣人が移動しても問題ないのじゃよ』
「う、うん、、」
『さらに詳しく言うとじゃな、現世と幽世は座標が繋がっておってな、剣人がいる座標で術式を使うと、剣人が剣奈になり、ワシが剣奈の手に現れる。現世の座標はそのまま幽世の座標になる。正確にはその座標に剣人が剣奈として召し出され、剣奈に紐付けされた隠れ場からワシも召し出されるわけじゃ』
「わかった!(分かってない)」
目がぐるぐるになって、頭が真っ白の剣奈。すでに理解することを放棄していた!
「じゃあ、クニちゃんが言ってたお手伝いって、どうするの?」
『お手伝いの内容は、またゆっくり話すとしてじゃな。お手伝いしてもらいたいことは幽世で行うのじゃよ。まず剣人に現世でその座標に行ってもらい、その座標で幽世に転位する。そして手伝ってもらいたいことをしてもらうわけじゃ』
「わかった異世界転生ものだね?ぼくは異世界に召喚されて転生したヒーローってことだね?剣に選ばれて召喚された勇者か。ボク、カッコいい」
すれ違ってるようですれ違ってない。かみ合っていないようでかみ合っている。不思議と意思疎通ができている二人である。
「でもそういうのって、異世界に召喚されたら、その世界で旅をして冒険して、最後にラスボスを倒すんじゃないの?」
『異世界?ラスボス?異世界は幽世のことか。まあその認識でだいたい合ってると言えないこともない。ところでラスボスとは?』
「ラスボスっていうのは主人公の宿敵。だいたい魔王のパターンが多いんだ。でもいろんなパターンがあって、悪役令嬢のパターンもあるんだ。お母さんのゲームでは、謎の組織が過去に悪もの軍団を送り込んで、歴史を改変させようとしてるんだ。刀剣の付喪神が顕現して、その人たちがヒーロー集団として闘って、歪められかけた歴史を正すんだ」
『パターン?ヒーロー?悪役令嬢?歴史を正す?刀剣の付喪神が顕現?』
「そう!」
『ん、むむむむ。わかるぞ!ワシにはわかるぞ!わかるぞ、剣奈よ(分かってない!)』
この二人実に正直でない。しかし正確に理解しなくても、だいたいわかれば良いのだ。だいたいあってればいいのだ!
たぶん、、、