19 結界斬り
『剣奈よ、剣気を目に集めてみよ』
「わかった。ん♡」
下腹部に広がる快感。キュンとする下腹部。思わず眉を寄せ、目を閉じてしまう剣奈である。
『剣奈よ、そのまま目を開くのじゃ』
来国光、やはり鬼である。わからなくてもわかれ!
頑張って目を開く健気な剣奈である。何もない空間に、仄かに漏れ光る線が見えた。
『結界の境界がみえるかの?そこをワシで斬るのじゃ。いまのワシは拵がついておらぬでな。迂闊につかうと怪我をするから気をつけるのじゃぞ』
「わかった」
『右手でワシの茎を持て。そして結界の境界にワシの刃をあてるのじゃ。棟に左手を添えよ。結界の境界線に刃を押し込むようせよ。さすれば簡単に結界が解けるでの』
かなり丁寧に手取り足取り、説明したつもりの来国光である。
「えっーと、なかご?刀にムネ?」
全然伝わってなかった!
『茎というのはな、わしの刀身の根本の黒いところじゃ。まあ黒いのは錆じゃがの。棟は峰とも言い、刀身の分厚い側、刃のついてない側じゃ』
「あーわかった!『安心しろみねちじゃ』 のみねだね。刃のついてないほうがみねだったんだ!切れてないから安心しろってことだったんだ」
母の意味不明なセリフを思い出し、やっと意味がわかった剣奈である。いや、たぶんしっかりとは分かってない。
黒いところが茎というのと、刃がない側が棟というのは理解したようである。
剣奈は言われた通り、右手で茎を持ち、左手を棟にそえ、光る線に押し当てるのだった。
「ん♡」
パリン
剣奈が刃を押し込むと、高めの、何かが割れるような硬質な音が鳴った。
結界が解かれ、折りたたまれたウコン布と、その上に乗せられた拵一式、そして桐の小箱が姿を現した。
「クニちゃんの服がでたよ?どうやって着せたらいいの?」
『剣奈が、川の水でワシを綺麗に洗ってくれていて助かったぞ。さて剣奈よ、まずはそこの木の箱を開けておくれ。その紙、拭紙というのじゃがな。それを2枚つうて刀身をぬぐっての、次に新しい拭紙に油をちょっとだけ垂らして拭くのじゃ。やってもらってよいかの?』
「わかった!お手入れ部屋でのお手入れだね!これがお手入れ資材かー」
母のつぶやきは、意外に剣奈の心に深く浸透しているようである。母の言うお手入れ資材と、ここにあるお手入れ道具は内容がかなり違うものなのだが、話が通じているようなので結果オーライだろう。
『おっと手を切らぬように気を付けるんじゃぞ。うむ。そうじゃそうじゃ。うむむっ。気持ちよいぞ。剣奈は上手じゃのう』
「そう?さすがボク。えへへへ」
来国光にのせらせ、丁寧にお手入れをする剣奈。
チョロ剣奈なのであった。