14 男に巫女はできない?
『うむ、実はな、助けてもらいたいことは、巫女でないとできぬのだ』
「みこでないと?」
『巫女舞の神事の為だ。舞い手に宿る清らかなる神気。それが我を通じ、地脈の邪気を払うのだ。舞い手は清らかなる乙女でなくてはならぬ』
「なんで?男子と女子何が違うの?」
『ワシにも詳しくはわからぬ。しかしこの国では古来より、巫女は清らかなる乙女が務めておる』
「どうして?」
『巫女の始まりであるアマノウズメが、女性であったからとも言われておるし、神の妻として仕えるからだとも言われておる』
「神様のお嫁さん?でも女性の神様もいらっしゃるでしょ?」
『うむ、確かに。そして先ほど契り結びで、立ち会ってくださった神々には、女性神もいらっしゃる』
「じゃあどうして?」
『正直に言おう。ワシもわからん、、陰陽道の考えで、女性の方が力を受け入れやすいから、というものもおる』
『神を受け入れる神社は、そもそも女性の体を模しておる。そういうものもおる』
「おんみょうどう?映画お母さんとみたけど、魔法つかって悪者と戦ったりするんでしょ?でも、男の人だったよ?」
『うむ。陰陽師は男がなる。そして術式を使って術を発動させる。一方、巫女は女性しかなれぬ』
「おんみょうじ、みこ、、」
『ワシはこう考えておる。古来より、巫女は清らかな女がなるもの。そういう習慣があった。習慣がカタチになった。カタチが形式となり引き継がれた。そして形式が術式として固定化されたと』
「んー、全然分かんない」
『つまりじゃ、理由は分からんが、女性でないと術式がうまく働かん』
「ふーん。女でないととか、性別にこだわるのって、なんか昭和。古すぎ。お母さんがいつも言ってるもん」
『昭和?母御殿が古い?』
「お母さんが生まれた時代の呼び方」
『なるほどの。じゃとすると、その昭和より、もっともっと古くからの、人の想いの積み重ねじゃ』
「じゃあ、さらにがちがちじゃん!」
『ふむ。否定せん。ケントよ、ワシは思うのじゃ。人の想いの積み重なり、それが神力の源であると。じゃから、多くの人が信じることに力が宿る。そういうものかもと』
わかったような、わからないような話であった。しかし来国光の静かな、諭すような話しぶりに、ケントはなんとなく「巫女は女の子でないと、、」、そういうものなのかと思い始めるのだった。