11 巫女
ケントは光の奔流の中にいた。
体に溢れるナニカ、自分じゃないナニカに、侵食されるのでは。自分が自分で、なくなってしまうのではないか。そんな思いに囚われ、怯えていた。ケントの腕は震え、口は大きく開き、大声で叫びそうになっていた。
そんな様子を見た来国光は、術が失敗し、ケントが消滅してしまうことを怖れ、大声で叫んだ。
『力を込めるな!心を無にせよ!でないと器が裂けて壊れるぞ!』
ケントは何を言われてるのか分からない。けれど器が裂けて壊れるというのは、きっと体がおかしくなってしまうということだろう。ケントは体が裂けてしまわないよう、壊れてしまわないよう、一生懸命体の力を抜き、体に満ちるナニカに逆らわず、受け入れようとした。
ケントの心は真っ白になり、身体が宙に浮いたような気がした。心と身体がナニカに満たされ、自分がドロドロに溶かされたような感覚にとらわれた。
やがてケントは自分の腹部で何かが生まれ、波うって脈動するのを感じた。その波は、心地よい安らぎとともに全身に広がっていった。ケントはその心地よさに心と身体を委ね、夢心地のままぼんやりと弛緩し、そのまま意識を手放した。
どれくらいだっただろう。
『終わったぞ。成った』
刀からそう告げられた。
意識が現実に引き寄せられ、はっと気がつくケント。
「なった?」
『うむ、ワシと貴様の結びが認められた。認められた貴様は力が使えるようになったはず。これぐらいの高さなら飛び乗れるだろう。やってみろ小僧。いやもう小僧はおかしいか。跳べ、巫女よ』
「みこ?みこってなに?」
『ああ。体が幼いからあまり変わらぬか。貴様は巫女、つまり女姓になった』
「にょしょう?」
『あー、つまり、女の子になった』
「えー? どゆこと?ぼく男の子だよね?」
「えっっ? えーーーーーっ!!??」