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132 聖なる白雪(Sunlight St. Snow Sword)誕生 勇者パーティー

「それじゃあ出発します。剣奈ちゃんは牛城さんの後ろで。山木先生は俺の後ろでお願いします」

 

 出発の朝、藤倉がそれぞれの乗車を確認して言った。

 

「おう!」


 剣奈を後ろに乗せることにご機嫌の玲奈が答えた。

 

「幽世では私は藤倉君と一緒にいて敵が来たらバイクにまたがって逃げる。それでよかったかな?」

 

 山木が昨日の作戦会議の合意事項を念のために確認した。

 

「はい先生。敵が現れたらすぐにバイクにまたがれる準備をしてください。俺がまたがったらすぐ先生もまたがってください。そしたら俺がバイクを走らせて敵から遠ざかります」藤倉が答えた。

「怪異を女性二人に任せて我々だけ逃げるというのもちょっと気が引けるがね」山木が言った。

「主戦力の剣奈ちゃんが前衛、隠れた怪異を見通す目を持つ牛城さんが中衛。我々の役割は知識供与です。賢者ポジションです。我々が貢献するのは知恵です。残念ながら戦闘には貢献できません。ですので我々は最後衛です」藤倉が言った。

「はっ、足手まといどもが。ついてくんなよ。ここで待ってりゃいいだろ?」玲奈が吐き捨てた。

「そんな冷たいことを言うなよ。我々はパーティじゃないか」藤倉が恨めし気に玲奈を見つめた。

 

「うん。その通り!ボクたちは同じ勇者パーティーなんだ。魔王を倒すまで。ううん。魔王を討伐してもいつまでもボクたちは一緒だよ?」

「お、おう」玲奈が気圧されたように頷いた。

「そうだ!ボクたちの絆を強くする意味も込めて、そろそろパーティー名とか考えた方がいいかも?」


 剣奈が提案した。

 

「剣奈とゆかいな仲間たち」玲奈があんがい真面目に考えて発言した。

『最強巫女組』来国光が自信満々に言った。いつのまにかパーティという言葉をしっかり認識していた。

「邪滅レディース」山木が言った。どこの暴走集団だ?

「サンライト・セイント・スノーソード」藤倉が言った。

 

「タダっち、それどういう意味?」


 剣奈が食いついた。なんとなくかっこよさげである。どうやら藤倉案が剣人ワールドアンテナに引っかかったようである。

 

「剣奈ちゃんが必殺技を出すとき、国光さんが光るだろ?邪気を滅ぼす聖なる光。ちょっとだけ黄色が混じった白」

「うん!」

「太陽の光を浴びてキラキラ輝く雪のような白黄の輝き。それで「Sunlight Saint Snow、サンライト・セイント・スノー」。太陽の光をおびた聖なる雪」

「うんうん」

 

「それで国光さんは刀。英語で言うと「Katana:カタナ」あるいは「Blade:ブレード」なんだけど、それだと「剣奈」ちゃんの「剣」にかからない」

「そうなんだ?」

「国光さんは刀剣で英語では「Sword、スウォード、ソード」。ソードは剣を指す言葉でもあるので剣奈ちゃんの剣につながる。剣奈ちゃんが国光さんを握って、まさに必殺技を出さんとしているときのイメージが「サンライト・セイント・スノーソード」(Sunlight Saint Snow Sword)なんだ」

「なるほど……」

「その必殺技を出す剣奈ちゃんを中心としたパーティが俺たち」

「うんうん!勇者を中心とした冒険者パーティー!まさにボクたちにぴったりかも。さすがタダっち」

 

 剣奈が食いついたことで気をよくした藤倉がドヤ顔で自分のネーミングを解説した。

 

「長げえよ」玲奈が一刀両断に切り捨てた。

 

「じゃあ、剣奈ちゃんと国光さんは一心同体なのは当たり前すぎて言う必要もないとしたらどうだろう。そうすると「サンライト・セイント・スノー」、陽光輝く聖なる白雪。清らかなる剣奈ちゃんにもぴったりじゃないだろうか」

「う、うん?」

「ただね、「Sunlight St. Snow、サンライト・セント・スノー」だと頭文字はSが3つでトリプルS、「Sunlight St. Snow Sword、サンライト・セイント・スノーソード」だと頭文字のSが4つでクアトロS。これからパーティメンバーが増えるかもしれないけれど、今の僕らは一振りと4人。4つのSで我々4人を表すというのもいいかと思ったんだけど」

「う、うん……?」


 気を取り直して藤倉が次案を説明した。


――しかし英語の連発に剣奈が全くついてきていない!藤倉、いいのか!?

 

「えっとぉ。じゃあギルドに登録する真名は「サンライト・セイント・スノーソード」。通常僕らが他のパーティーに名乗る時は短く「セイント・スノーソード」でどうかな」

 

 剣奈が一生懸命考えたあげくそれらしいことをドヤ顔で言った!さっぱりわかっていない割には的を得てる。

 剣奈はどうしても来国光とのつながりを示す「剣」にこだわりたかった。英語を連発する藤倉の言葉の意味はよく分からなかった。ただ分からないまでも正解を引き当てていたのである。剣奈恐るべし。


――まあそれはともかくだ。剣奈君?幽世は確かに異世界だけど、ギルドシステムあるのかなぁ?それに他のパーティーっているのかなぁ?まあ剣人ワールドだ。仕方がない。

 

「聖なる白雪。輝く聖なる白雪。剣奈ちゃんにぴったりだ。儚く、可憐で、愛おしく、神々しい」

 

 ゾーンに入ってしまった藤倉がそこにいた。中年男のうっとりした顔は……キモかった。

 当然のように藤倉の尻は玲奈の回し蹴りを受けていた。藤倉はその痛みに目を閉じながら、さらに輝く白雪の剣奈を想像して陶然とするのだった。

 

 剣奈パーティの名前が決まった。正式名称 Sunlight St. Snow Sword。別名、「クワトロS」、「セイント・スノーソード」、そして「聖なる白雪」

 

 果たして彼らにそれを名乗る機会が訪れるのかどうか、山木はふと思った。

 

 山木のこの時の思いとは別に、後に「聖なる白雪」は剣奈を指す隠語として、そして「クワトロS」は剣奈パーティーの略称として知る人ぞ知る名になってゆくのである。

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