129 だいち4号の驚愕 処女を強いられし生贄少女(少年) 無自覚に日本を救う
剣奈が望まぬ絶頂を強いられるのを目の当たりにして玲奈は怒りに震えた。玲奈は苦い記憶と今の剣奈が重なって見えた。玲奈は何度も無理やり貫かれ揺さぶられた。不本意ながら望まぬ快感と絶頂を何度も強いられた。
剣奈の場合はどうだ?来国光は無理強いしてはいない。剣奈が自ら剣気を大量に吸い込んだ。剣奈が闘うために仕方がなかった。
いや待て。本当にそうか?玲奈は考えた。剣奈とて無理やり子宮を揺さぶられ、望まぬ快感と絶頂を与えられたのではないか?自分と何が違う?玲奈は混乱した。
玲奈は剣気を肚に溜めねば黒巨蛸を倒せなかったことは理解していた。来国光の結紐が剣奈の子宮につながっている以上、剣気が子宮を刺激することは避けられないこともわかっていた。
玲奈は無理やり結紐を引きちぎり、背中などにくっつけられないのかと考えたことがあった。寝ている剣奈の服をめくって腹を出した。そして結紐を掴もうとしたのである。スカッと空振りしただけであったが……
結局剣奈は生贄なんだ。人柱なんだ。人類を……、地球を救うとやらのために犯され、悶えさせられ続けるのだ。
ならいっそ、このまま何も知らない方が幸せか。こいつ一生処女でいないとダメらしいし……。女の快感を知らずに一生を終えるより、これはこれで幸せなのか。
玲奈はもう何が何だかわけが分からず混乱していた。ただ感情だけが高ぶった。
「うおおおおおおおおおぉぉぉ!」
玲奈は吼えた。天に向かって吠えた。
風が吹いた。風は玲奈の周りをそよそよと吹き、そして消えた。
「玲奈姉のところに神様きてたみたいよ?」
「はっ知るかよ」
玲奈は吐き捨てた。神なんぞどうでもいいことだった。剣奈だけが大切だった。
『では地脈を正そうかの。妙見山の山頂で邪気払いの儀式を行う』
「うん!」剣奈が健気に返事した。
「ちっ」
玲奈は舌打ちをしながらも山頂をめざした。不覚の行為をしてしまった藤倉は黙って山頂をめざした。あまりの出来事に呆然としていた山木は事態を把握しきれないまま黙って一行に従った。
藤倉は山頂を目前にして「今回俺はここから見てるよ」と歩を止めた。玲奈と山木も剣奈の邪魔にならないようにと考え、藤倉とともに山頂から少し離れて待機した。
剣奈はそんな一行を見て「別に近くても構わないのに」と思いつつ巫女舞のためにはある程度距離が必要かもと思い直して一人山頂に進んだ。
「わぁ。いい景色」
大阪湾を見渡す絶景に剣奈はうっとりと声を上げた。そして剣奈は背中からペットボトルを取り出し、来国光と自らを清めた。それから四方拝を行い跪いて大地に深く敬意を払った。
剣奈は来国光を頭上に掲げて緩やかに舞い始めた。剣奈は緩やかに回転した。旋舞である。来国光はらせんを描くように徐々に下げられた。そして来国光が大地にまで下げられた。
剣奈は次に小さく虚空を斬り始めた。玲奈には見えていた。空間が正常化され邪気がみるみる減じていくのを。
やがて剣奈は両膝をつき来国光を地中深く突き立てた。そして祝詞を奏上し始めた。
掛けまくも綾に畏き天土に
神鎮り坐す
最も尊き 大神達
ことわけて
伊弉諾尊
伊弉冉尊
素戔嗚尊
武甕槌命
大山祇命
迦具土命
綿津見命
瀬織津比売命
速開都比売命
気吹戸主命
速佐須良比売命
の大前に
慎み敬い 恐み恐み白さく
今し大前に参集侍れるものどもは
高き尊き御恵みをかがふりまつりて
辱み奉り尊み奉るを以って
今日を良き日と択定めて、
禍事の限を
祓清めむと、
根の国、地のもとに持ち込まれたる
諸々の禍事・罪・穢・邪の気、有らんおば、
持ち去りて
祓ひ給ひ 清め給えと白すことを、
聞こしめせと
恐み恐み白す
剣奈が白黄の輝きに包まれた。地面から白黄の輝きが放出された。
剣奈は来国光を地面から抜いて両ひざをついた。そして上半身を伏せて妙見山に深く礼をした。それから山頂の端に歩いていきペットボトルの水を来国光に注ぎかけてから布で丁寧に来国光を拭いて鞘に収めた。
この島に巣食う邪気はあまりに巨大広大。それでもこの地に巣食う邪気を少しでも滅せられただろうか。剣奈は切なげに柔らかく微笑んだ。
少し後の話になる。淡路島を大混乱に陥れたとある事件のさなか、陸域観測技術衛星「だいち4号」がフル稼働で淡路島の地質観測を行っていた。地球に向かって照射された電波は衛星に搭載されたフェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR-3)により受信され、リアルタイムで解析が行われた。
その解析で驚くべき発見がなされた。淡路島の大地、海底、断層にたまっていた歪が驚くほど短期間に解消されたのだ。理由のわからない巨大な大地の歪み解消に科学者、マスコミ、政府は大騒ぎになった。
山木は検討メンバーとして参加していた。そのとき、山木は言葉を発せずただ小さく微笑むだけだった。「真実を言っても誰も信じまい」山木は心でそう思った。そして同時に山木は強く思った。剣奈ちゃんと邪斬君にこのことを伝えなければ……と
そしてふと思い立った。総理には内々に打診しておくか……
このことが後に剣奈パーティーを大きく変えることになる。もちろんその時の山木は予想だにしていなかったのである。
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*淡路島の大混乱について
(現時点で一部タイトルネタバレ注意。ネタバレを望まない方はここで終了させてください)
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淡路島の大混乱については、剣奈シリーズ『地図にない村、書けない池』「2-13 緊急地震速報 異界の鼓動」「2-17 混乱する淡路島と玉藻の活躍 現れた白石村」「2-22 邪気去りて地脈戻る 夢終わりて 金狐は碧海に輝く」などに詳細。(タイトルが修正された場合、将来的に一部語句が異なっている可能性あります)