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120 地質学者 山木茂 二人目賢者 そして剣奈フードファイター疑惑


 合宿の日、三人は須磨と明石を経由して鶴甲大学の淡路島マリンサイトに来ていた。


「あー楽しかった。海綺麗だったね。ハンバーガーとタコ尽くしおいしかったなぁ」


 剣奈は昼食に食べた須磨の海岸沿いのハンバーガー屋と明石で食べたタコ尽くしを思い出してうっとりしていた。ちなみに国道二号線海岸沿いのお寿司屋でしっかりと握り盛り合わせを食べ、明石ではさらに出汁につけて食べるタコ焼き「玉子焼」をしっかり平らげていた。

 剣奈よ、君はフードファイターにでもなるつもりか?


「さて、これらか合わせたい人がいるんだ」藤倉はそう話を切り出した。

「合わせたい人だぁ?いらねえよそんなの」


 玲奈は忌々し気に言い返した。剣奈の事情はおいそれと他人に話すことではない。下手に騒がれたりSNSにあげられたりすると剣奈が好奇の目にさらされてしまう。玲奈は剣奈を守ると決めたのだ。見世物のような扱いをされてはかなわない。


「ここの予約を取るとき、文理融合研究のためってことにしただろ?今から紹介する人の存在は我々にとって重要なんだ。二つのメリットがある。一つがここの予約を取りやすくすること。二つ目が邪気を探し出すのに彼の知識が大いに役立つことだよ」

「はぁ?そんな都合のいい奴がいるのかよ。そいつ、剣奈に性的興味を持ったり、学術的興味だとか言って実験動物扱いしたり、面白いからとSNSにさらしたり絶対しないと言い切れるのか?」


「彼は俺の同僚で長い付き合いだよ。人柄は良く知ってる。彼なら大丈夫だ。あ、ちょうど来たよ。こんばんわ、山木先生お世話になります。紹介させてください。このお嬢さんが久志本剣奈ちゃん。私の教え子の娘さんです。そしてこちらが牛城玲奈さん。今回の調査の強力な助っ人です」

「初めまして。ボク、久志本剣奈です。よろしくお願いします」


 剣奈は藤倉と初めての挨拶の時、うっかり「剣人」と名乗ってしまい、話がややこしくなったことを千剣破との反省会で指摘されていた。今後は自己紹介の時は「剣奈」と名乗ると千剣破に約束していたのだ。


「アタイは玲奈。剣奈のボディガードだ。変な目を向けやがったら承知しねえぞ」


 玲奈はじろりと山木をにらんだ。


「ははは、おっかないね。見ての通り僕は枯れ果てたおじいちゃんだよ。結婚もして孫もいる。さすがに孫のようなお嬢ちゃんに変な気持ちはわかないよ」


 剣奈に変な気持ちがわいてしまっている藤倉である。世間的にはそうなのか。改めて自分と剣奈との常識的な関係性を突き付けられ、藤倉は胸が痛んだ。

 山木茂五十八歳。鶴甲大学理学部惑星学科・惑星学専攻の教授である。専門は日本の形成に関することである。山木はこれまで多くの地質調査や地磁気の測定を行ってきた。山木研究室では日本列島の誕生と今日までの変遷について国内外にたくさんの論文を発表していた。


 鶴甲大学マリンサイトでは淡路島の岩屋港を母校とする9.7tの調査実習船「おのころ丸」を保有している。山木がいることにより、おのころ丸を使って淡路島沿岸の海洋調査を行うことも可能になる。なにより淡路島の地質に詳しく、淡路島に潜む幽玄体「邪気」の巣探しに強力な助っ人となることが期待された。


 淡路島は総面積五九二㎢の大きな島である。外周は二百kmを超える。周回道路の延長ががおよそ百五十kmである。時速五十kmでバイクを走らせたとして、島を一周するのにノンストップで三時間もかかる。

 淡路島は「島」という言葉からこじんまりとした小さな陸地のイメージがある。しかし実際に来てみるととても広く感じる。


「まずは荷物を部屋に置いてきたまえ。淡路島の地質の講義のためにセミナー室を確保してあるのでそちらで集合でいいかな?まずはお風呂入るかね?夕食はどうするかね?」山木は尋ねた。

「そうですね。自炊室もありますのでコンビニでごはんとおかずを買って温めますか?」藤倉が返答した。

「近くに海鮮めし屋や漁師めしの店もあるが、コンビニがいいかね?」山木は尋ねた。

「漁師めし、ボク食べたいなぁ」剣奈が目を輝かせた。


「じゃあ決まりだね。荷物置いて集合したらバイクで行こう。先生の分もヘルメット持ってきました」と藤倉。

「そうだね。それもいいけど車出せるよ?四人だし車で行こうか」山木が提案した。

「ありがとうございます。では車でお願いします。それじゃあ荷物置いたら十五分後に入り口に集合しようか」藤倉がみんなに言った。


 食いしん坊剣奈の要望により夕食に漁業協同組合の漁師めし屋に行くことが決まった。しかし剣奈、君はどれだけ食べるんだ。フードファイターかね?すでにたくさん食べただろう。

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