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119 阪神淡路大震災の震源地 淡路島へ

「込められた剣気は数時間くらいは余裕で持つか。明日まで持てばいいんだけどな」藤倉が言った。

「そうだね。そうすると前日に剣気を込めれるもんね。寝てる間にクニちゃの剣気が回復するから。そしたら実質剣気の消費ゼロだもんね」剣奈が答えた。

「まずは飯を食おうぜ。千鶴さん、飯の準備手伝うぜ」


 玲奈はそう言って台所に向かった。すっかり千鶴に懐いた玲奈である。捨て猫が自分の居場所を見つけた。いや、捨て牛か?

 飼い主は千鶴、妹分が剣奈である。藤倉は玲奈にとって害虫、剣奈に付きまとうロリコンキモオタ変態ストーカーである。今回のがんばりで少しは扱いは変わるだろうか?がんばれ藤倉。


「どうやった?訓練は?」千鶴が台所から尋ねた。

「そうですね。希望が持てます。あとは弾の剣気がどれだけ持つのか、そして黒震獣にどれだけ効果があるのかです」藤倉が答えた。

「それで次の冒険はなんか考えてはんの?」千鶴が尋ねた。

「はい。淡路島に鶴甲大学の海域環境教育研究センターマリンサイトがあるんです。研究調査で借りれないかと思って知り合いの理学部の教授に尋ねてみたんです。そしたら文理融合型研究で申請しようということになりまして、それで申請してみたら利用許可が下りました。明後日から二泊三日で合計二部屋借りました。私用が一部屋、剣奈ちゃんと牛城さんで一部屋です」藤倉が答えた。


「俺って言ったり、私っていったり、ころころ言い方変えるやつだな。人によって態度変えるやつは信用ならねー」玲奈が吐き捨てた。

「え、そこ?ごめんよ。さすがに千鶴さんに俺は言えないし、冒険しているときは俺っていいたいし」

「は、ガキが」

「せっかく海が見れる合宿しようとプランたてたのに、嫌なら君は参加しなくていいよ?剣奈ちゃんはどうする?」

 

「わぁ、海が見えるんだ。行く行く。絶対行きたい」

「だそうだよ?じゃあ今回は私と剣奈ちゃんの二人合宿かな?」

「ざけんなこのクソロリ野郎。剣奈とテメエを二人きりなんぞにできるか。アタイも行く。剣奈はアタイのバイクに乗せる」

「ひどい言い方だなぁ。千鶴さんや剣奈ちゃんに誤解されたくないし、勘弁してくれないかなぁ」

 

「何言ってやがる。ホントのことだろうが」

「確かに剣奈ちゃんは素敵だと思うよ?でも教え子のお嬢さんだよ?変なことするわけないじゃないか」

「はっ、どうだか。で、場所はどこなんだよ?」


「淡路島だよ。直行なら北神戸線経由で明石海峡大橋を渡って、そこから淡路ICで降りてすぐだよ。一時間ちょっとかな。でもせっかくだから初日は国道二号線で須磨から明石を回って観光したり、美味しいものを食べようよ。夕方に橋を渡って一泊して、二日目から淡路島を廻らないかい?」

「はっ観光かよ。地脈浄化とやらはいいのかよ?」

「もちろんそれが本命さ。神戸から淡路島にかけて大きな地脈があると思うんだ。一九九五年(平成七年)、そこの地脈がずれて大きな被害が出た。阪神淡路大震災っていってね、私も被災したよ。千鶴さんも千剣破さんも経験してる。すごく大きな地震だったよ」

「そうやったな。宝塚もよう揺れたわ。うちも瓦がずれて大変やったわ。水も止まってお風呂も何日も入れんかったしな」千鶴がしみじみと答えた。


「私もです。自衛隊さんには本当に世話になりました。それでその地震の震源地は淡路島の北部だったんだ。震源の深さは地下十六km、最大深度七、マグニチュード7.3。あの時はほんとうにすごかったよ。家やビルは倒壊し、高速や電車の高架も横倒しになった。日本は地震大国だからちゃんと地震を考えてインフラが作られてるはずだと思ってた。まさか高架が横倒しになるなんて思いもしなかったよ」

「ええ?高速道路や高架線路が倒れたの?」剣奈がびっくりして尋ねた。

「そうだよ。フォト見るかい?」


 藤倉はネットで阪神淡路大震災の被災写真を剣奈たちに見せた。剣奈たちは目を見開いて画面を見つめていた。


「神社も潰れてる、、」

「生田神社だよ。千年以上の歴史がある神社だよ。この火災は神戸の長田区のものだ。ほんとに酷い有様だった」

「ヘリコプターとかで消火できなかったの?」

「諸外国からもいろいろ言われたんだけどね、ヘリコプター貸してやるとか。でも問題はヘリの有無じゃなかったんだ。消防や自衛隊の方々も何とか消火しようと一生懸命検討してくれたんだよ。でも結果的に何日も燃え続けた」


「そんな大きな災害をお祖母さん、お母さんは生き抜いてきたんだね。先生も」

「そうだね。あの時の驚き、無念さはいまでも忘れることは出来ないよ。それでね、あの地震、ひょっとすると邪気が関係している可能性はないかってね。もしそうなら次の地震を未然に防げないかって、そう思ったんだ。淡路島には地震でずれた野島断層の露出断面もあるし調査してみたらどうだろう」

『うむ。三十年ほど前か。地震で邪気が溜めた力を使っておったらまだ回復しとらんじゃろ。本体でなくとも、はぐれ邪気でもおったら浄化しておいた方がよいじゃろな』


「そんな大きな地震を起こした邪気、ボクに退治できるのかなぁ」

『鉄の馬でいくんじゃろ?いざとなったら逃げればよい。しかし剣奈よ、おぬしは鬼を倒したのじゃぞ?自信をもってよいと思うぞ?』

「そうだね。ボクがやらなきゃ。ボクしかいないもんね」


「はっ、誰がそんなこと決めたんだよ。勝手に押し付けられた責任なんぞに縛られてんじゃねーよ。かなわねーと思ったらさっさとずらかりゃあいいんだよ。かなわないのに立ち向かうのは勇気じゃねぇ。ただの無謀だ。力を溜めてからぶっ殺せばいいんだ。アタイが小っこい頃、もし勇気をださねーととか思ってクソ親父に立ち向かってたら、今頃アタイはいなかったろうぜ。(おか)されて、ぶちのめされて、無残に死んでた。それだけのことさ」


「うん。そうだね。ボクも塩之内断層では無様に負けちゃったけど、鬼山ではちゃんと勝ったもんね。塩尾寺(えんぺいじ)の闘いでも、甲山の闘いでも勝てた。あの敗北があったからボクは強くなった。ボクだって強くなってる。頑張ってみるよ。もしかなわなかったらいったん引くことにする。勇気ある撤退は負けじゃないんだ。諦めなきゃ負けじゃないんだ」

「その通りだ。よし、そうと決まれば準備だ。出発は明後日だから、今日と明日でしっかり準備できるよ。私はLCPIIのマガジンをあと二つとホルスターを買っておくよ。他に必要なものがないか、みんなで考えて準備しよう」


 五人は知恵を出し合い、必要な準備を進めていくのだった。剣気の込められたBB弾はその夜には輝きが褪せはじめた。翌日には光量は半分ほどになっていた。


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