118 藤倉、初めての対邪気武器 LCP II (フォトあり)
幽世に到着した藤倉たちはさっそく銃の練習に取り掛かることにした。
「じゃあ使い方を説明するよ。これがマガジン。弾を込めるところだね。さあ、BB弾を装填しよう。このタイプは10発装填できる。このノズルを後ろに引いておくんだ。そしてバネを親指で下に引っ張ってと。そしてこんな感じで弾を入れていく。さあ弾を装填してごらん」
「は、おもちゃの割に結構しっかりしてやがる。武器って感じしやがるぜ。ほらよ装填完了だ」
「さあ次はガスを装填するよ。マガジンの後ろにバルブがあるから、そこにこのガスを差し込む」
シューーッ
シューーッ
「はい、これ。マガジンの後ろのボタンを押さないようにね。それはガス抜きのボタンなんだ。それでエアガンにマガジンを装填するよ?マガジンを左手に持って、グリップのこの四角いボタンを右手の親指で押さえながら、マガジンをグリップの下から押し込むんだ。取り出すときはこの四角いボタンを押しながらマガジンを下に引っ張るんだ」
シュッ、カチャッ
「は、重めーなこりゃ。案外本格的だぜ」
「見た目より案外重量あるだろ?これが一番小さいタイプなんだ。もっと大きいタイプとか、連射が効くタイプもあるけどね。運びやすさ、取り扱いのしやすさを優先したんだ。俺たちが主戦力じゃないし、これだとジャケットのポケットにも入るからね。ホルスターも売ってるけど、現実世界でバイクに乗りながらホルスター装着してたら危ないやつだからね。警官にとめられたらほぼ確実に職務質問だ。それで剣奈ちゃんの刀が見つかったら大ごとだ」
「はっ、確かにな。刀みつかったらムショ行きだぜ」
「え?ボク、刑務所に入れられちゃうの?」
「いや、大丈夫だろ、多分。いろいろ尋問されるし、きついお灸は据えられる。親御さんは呼び出されるだろう。まあ邪斬さんは取り上げられるだろうけどね」
「いやだよ、そんなの」
『大丈夫じゃ。そんな状況を察したらすぐに隠れ部屋に籠るでな』
「ははは、そうだったね。まあそれにしても目を付けられるような隙は見せたくないからね」
「馬鹿かテメエは。銃と一緒にホルスターもバッグに入れとけばいいだけだろうが」
「ははは。確かにそうだね。やっぱりホルスターも買っとこうか。さあ早速練習しよう。まずは五mから。的を置くよ」
藤倉は歩数で測りながらおよそ五位置にキャンプチェアを置き、その上に的をセットした。後ろが網になっていて弾が回収できるタイプである。
「バイオ弾とはいえ、なるべく環境に負担はかけたくないからね。持って帰れるゴミは持って帰ろう。さあ練習しよう。このBB弾は0.2gのものなんだ。初速が 六十m/sほどかな。多分二十mくらいまでは十分威力をもって的にあてられるよ。三十mだと弾道が落ちて狙いにくくなるし、威力も出ないだろうね」
「何発まで撃んだよ」
「そうだね、キチキチいれたら三十発くらいかな。でもボンベのガスの残り具合とか色々あるからね。あと戦闘中に弾やガスの充てんはできないと思ったほうがいい。なのでマガジンは一回で使い切りだね。実戦では弾とガスを充填した予備マガジンをもう一つ用意しとくべきと思ってる」
「じゃあ剣奈にはアタイとテメエ合わせて四十発剣気を込めてらえばいいってことか」
「そんな感じかな。今日はマガジン一つだし練習でたくさん撃ちたいから普通の弾でいくよ。弾込めとガス充てんもしよう。じゃあやってみよう。狙い方はリアサイトを利き目で覗いて、二本の棒の真ん中の谷に先端のフロントサイトが来るように合わせるんだ」
パシュ、パシュ、パシュ
「は、楽勝だぜ、こんなの」
「距離が近いと弾道のズレの影響が小さいからね。今は無風だし。遠くになると重力で弾が落ちる。風が吹くと風に押されて弾道がずれる。そのへんは慣れるしかないね。あと持ち方だけど、右手でグリップを握って、左手をグリップの下からそえて親指は右手の中指、ほかの指は右手の甲に添えて、右手ごとグリップを支えるようにするんだ。そうすると安定して狙いやすい。トリガーは人差し指で引いてもいいけど、俺は中指で引いてる。右手の人差し指を銃に添えて中指でトリガーを引くと安定する気がするんだ。まあ好みだね。五さて五mは問題ないようだし、次は十m行こうか」
「おう。案外面白れーなこれ」
パシュ、パシュ、パシュ
的への命中率が上がると、藤倉たちはだんだん的を遠くしていった。二十mになると弾道のずれが目立つようになり、三十mになると弾がドロップして的から大きく外れた。
「やっぱり二十mを目安にした方がいいね。距離感は小学校の二十五mプールかな。プールの距離から近づかれたら撃つって感じかな。二十mだと弾が的に当たるまでおよそ0.3秒。短いようで案外長いよ。弾道が十分目で追えるからね」
「そうだな。案外遅せーよ。避けられたりするかもよ?」
「その可能性は十分あるね。だから逃げる方向を予測して弾を二発うつ練習もしておこう。マガジンの弾は十発だし、剣気弾の総数が一人三十発。大事に使いたいところだ。バランスを考える必要があるね」
「ボク、何度でも弾を握って剣気を流すよ?」
剣奈が言った。藤倉は剣奈の小さな手に自分の玉を握られる想像をして一瞬うっとりし、それを鉄の自制心で押しつぶした。何事もなかったように笑顔を浮かべで言った。
「その余裕がある時はそもそも銃はいらないかな。それに剣気を無駄遣いすると国光さんが消えるんだろ?」
「そうだった。難しいね。バランスって」
「ははは。まあやりながら慣れていくしかないね」
「さあ、とりあえず二十mの距離できちんと当てられるように練習しよう。そうそう言い忘れたけど、持ち運ぶときはセーフティーロックをかけておいた方がいいよ。グリップの上の細長いボタンがセーフティロックなんだ。上にスライドするとロックされ、下にスライドするとロックが外れる。黒震獣が現れたらいつでも撃てるようロック解除したほうがいいかも。さあどんどん練習しよう」
パシュ、パシュ、パシュ
二人は的を狙ってエアガンを発射していくのんだった。途中でワクワクした剣奈に藤倉は銃を奪われた。藤倉は嬉しそうにニコニコして剣奈が銃を撃つのを眺めるのだった。
グーーーッ
三人が的に当てられるよう十分な時間をかけて練習をこなしたころ、誰かのお腹が鳴った。
「は、食いしん坊め」玲奈が言った。
「えー、今のボクじゃないよ?」剣奈が慌てて答えた。
「じゃあおっさんか」
玲奈が藤倉を睨んだ。実は腹の音を出したのは玲奈だった。藤倉はそれを知っていたが、「ここは大人の余裕で」、などと心で独り言を言いながらニコニコしていた。剣奈と銃のやり取りをしてスキンシップをしたのがよほど嬉しかったらしい。相変わらずむっつりのロリコンキモオである。
「じゃあ帰ってご飯にしようか」
荷物を片付けて剣奈は帰還の術式を行った。
玲奈はリビングの上のBB弾を眺めた。BB弾はまだ十分な輝きを放っていた。
◆剣巫女フォト LCPII 東京マルイ