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116 剣奈は人類の犠牲?生贄?人柱?人身御供?哀れ?

 食事の後、玲奈は剣奈とお風呂に入った。


「ほんまに嬢ちゃん男やったんか?アタイは男の身体はよう知っとるで」

「巫女舞は女の子じゃないとダメなんだって」

「はー。ほんならはじめから女の子選んだらええやん」

「たぶん女の子だと闘えないからじゃないかな?神様は闘える巫女、戦闘巫女が欲しかった。だからボクが選ばれたんじゃないかな」

「迷惑な話やないか?まあ嬢ちゃんが男に戻れたらアタイがちゃんと大人にしたるからな」

「ありがと。でもボク、クニちゃとずっと一緒にいたいから女の子でいい」

「この腹の紐の先か。嬢ちゃんも可哀想にな。よりによって刀の生贄かよ」

「生贄とかじゃないよ。クニちゃはボクのパートナーなんだよ。ずっとずっと」


 玲奈は思った。


「このボクッ娘は神に勝手に選ばれた。そして望みもしないのに性別を変えられた。人類の為とかいうてよ、刀の生贄にされたんやな。邪気退治とやらの人柱にされたんや。可哀想にな。でもこのボクッ娘、生贄にされた自覚ないんやな。哀れにな。いや、でも知らん方が幸せやな」


 玲奈は剣奈をきつく抱きしめた。


「えへへへへ。あったかーい」


 その夜、剣奈と玲奈は布団を並べて寝た。剣奈は玲奈に抱きしめられて幸せな気分で眠りについた。


ピンポーン


 翌朝、藤倉が来た。藤倉は手に紙袋を持っていた。藤倉は食堂に通され、席に着いた。藤倉の隣に玲奈、向かいに剣奈、主人席には千鶴が座った。

 玲奈が剣奈の側に座ろうとした藤倉を追い払った結果だった。藤倉は少し残念そうな顔をしたが気を取り直して口を開いた。


「みなさん。おはようございます」

「「おはようございます」」

「ちっ」


 そっぽを向いて舌打ちしたのは玲奈である。そんな玲奈を見て剣奈は口をひらいた。


「勇者パーティー、これで四人になっね。みんなありがとう。仲良くなっていこうね。それで一つ提案なんだけど、ボク、お母さんから挨拶はちゃんとしなさいって言われてて。だからボク、お姉さんもそうしてくれたら嬉しいな」


 パーティー内でギスギスするのは嫌な剣奈であった。玲奈は舌打ちをしそうになった舌を我慢し、ボソリと呟いた


「おはよ、キモヲ……」


 一言余計だった!


「おはよう。牛城さん。ところでキモヲはやめてもらって良いかな?せめて呼び捨ての藤倉で」

「はあ?テメエ、嬢ちゃんのことヤラシイ目でガン見しとるやんけ。ロリコンのキモヲやんけ。児童趣味なんて最悪やんけ。人のクズやんけ」

「ストップ。分かった。私にも反省すべき点はある。反省する。だから、勘弁してくれないかな」

「そやね。まあキモいんは分かるけど、藤倉さんって呼んであげ」千鶴がとりなした。

「キモい、、千鶴さんまで、、」


 藤倉が涙ぐむそぶりを見せた。しかし中年男のそのしぐさはキモチワルイだけだった。


 藤倉は思った。


「自分の邪なきもちがバレバレか。穴があったら入りたい。しかし仕方がないではないか。心に自然にわき上がってくるのだ。でもまあ、なるべく態度に出さないでおこう」


 剣奈の危機が一つ減った瞬間であった。藤倉に襲われ剣奈の操が奪われる。そして邪気を浄化するものがいなくなった世界が滅亡する。そんなバッドエンドルートはなんとか回避できたようである。

 世界を救った救世の玲奈である。しかし玲奈にその自覚はない。だたロリコンクズ野郎に釘をさしただけである。


「あとよ、お姉さんは辞めろよ、がらじゃねぇ。玲奈でいいよ」

「ん。じゃあ玲奈姉(れなねえ)で。あとボクも嬢ちゃんじゃなく、剣奈って呼んで」

「剣奈……ちゃん……。剣奈……」


「うん。パーティーメンバーだもんね。呼び方も大事だよね」

「ああ。そだな。ところでキモ……、んんっ……藤倉、テメエ何で来やがった」

「私、いや、冒険するんだから「俺」でいいかな。俺はね、この前剣奈ちゃんの足を引っ張ってしまったんだ」

「そうかよ。クズな上に役立たずか。ほんと生きてるだけでゴミだな」


 玲奈が心底ゴミクズを見る目で藤倉を見つめた。藤倉はブルっと身震いした。


「ま、まあ、役立たずだったのは否定しないかな。そ、それでね、俺も考えたんだ。そして今度は牛城さんが加わることになったろ?つまり戦闘ができない足手まといが二人になったわけだ」


 いきなり役立たず呼ばわりされて玲奈はムカついた。そして藤倉を睨みつけた。しかし言ってることに誤りはない。


「ちっ」


 玲奈は舌打ちすることでなんとか感情を抑えた。藤倉は続けた。


「まあそう怒らないで。俺もその対策を考えたから。剣奈ちゃんの足手まといが二人に増えるのは避けたい。対策をうとうってね」

「藤倉は異世界行かずにこっちで待ってたらいいだろ?アタイとけっ、剣奈で冒険行くからよ……アタイにはこの目がある。役に立ってみせるさ」


「牛城さん、君はまだ黒震獣の強さ、恐ろしさを知らない。君も剣奈ちゃんの足手まといでしかない。その自覚は持ったほうが良い」

「けっ。そうかよ。で、何かあんだろ?その紙袋。もったいぶらずはやく出せ。ガキのおもちゃにしか見えねーけどな」


「俺に考えがあるんだ。聞いてくれ」


 藤倉は袋から箱を二つ取り出してテーブルの上に置いた。



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