8 来国光
『ほっほっほっほ。困っているようじゃな』
「だ、だれ?」
助けてもらえるかも!そう思って勢いよく顔をあげ、あたりを見回すケント。けれど人影は、どこにも見当たらなかった。
『ワシか?ワシはここじゃよ』
「えっ? ここって?」
『小僧の背中じゃ』
「えっ?? 背中?もしかして!
まさか!でも、、、さっき拾ったナイフ?ナイフの妖精なの?」
『ふむ、ワシはナイフじゃなく、刀なのじゃがな』
「かたな?」
『そうじゃ。人はワシを来国光と呼ぶ』
「らいくにみつ?」
『そうじゃ。ワシを打った刀工の名じゃよ』
来国光は鎌倉後期から南北朝時代にかけて活躍した刀工である。今日の京都府南部、旧称『山城国』で活躍した。
何処かよりきた一族で、国俊が自作に『来国俊』の銘を用いたことから来派とよばれる。
『来』銘はその後引き継がれるようになり、来派の刀工の作が今日、多く残る。
国光は国俊の後継で、優れた短刀を多く打った。年期銘が打たれたものから、作刀期間は少なくとも1313年から1363年の50年間とみられる。
刀工としては活躍した期間が長く1330年代に作風変化が見られることから、
初代と後継人が存在し、続けて『来国光』銘を用いたのだという説もある。
今後深いつながりとなる一振りと一人。いや、『二人』の初めての出会いだった。