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108 藤倉 それはキモいって! そしてサラリと明かされる剣奈の真実っ!


 剣奈は優しく藤倉を抱いた。子供をあやすように背中を叩いた。藤倉は女神に抱かれたような安心感を覚え、身体中で幸福を味わっていた。


「剣奈ちゃん……」

 

 しかしである。はたから見たらどうか。年甲斐もなく大泣きした中年男が小さな小学校3年生の女の子に縋りつき、抱きしめられて嗚咽を漏らしているのである。


 はっきり言おう。犯罪であると。見苦しいと。キモいと。ドン引きであると。


 千剣破がここにいたらどうなったか。瞬時に藤倉は引き剥がされ、藤倉の左頬は強烈なビンタを食らっていたろう。

 いや、右頬も無事ではなかったろう。正面から拳が飛んだかもしれない。ひょっとすると強烈なキックが藤倉の股間を……、ゲフンゲフン。

 

 藤倉は幸運であった。千剣破が見ていなくて。

 

 そして剣奈である。「かわいそうに。よっぽど怖かったんだな。よしよし。剣気って、人に流して回復されてあげられるかな」

 剣奈はそんなことを考えていたのである。まじ女神である。


「クニちゃ、剣気って他の人に流してもいいの?」

『藤倉に流すのか?いや、やめたがよかろう。剣気も神気も人の身に持て余す。剣奈は神に身体を作り変えられておるから良い。しかしタタビトは身体がもたぬじゃろ。毒のようなものじゃ』


 来国光、恐ろしいことをさらりと暴露した。千剣破がいたらな烈火のごとく剣奈から奪い去られ、般若のごとき顔で睨まれていただろう。

 千剣破は「剣人の身体が滅せられて剣奈の身体に作り替えられたかもしれない」、そんなことは剣奈に絶対に知られたくなかったのである。

 しかし、


「ふうん、そうなんだ。確かにあの時、身体がドロドロに溶けたような気がしたもんね。そういえばお母さんの漫画で見たことがあるよ。腐海の毒に耐えられるように人の身体が作り替えられたって。その漫画の主人公さん、森の人にお風呂に浸けられて、毒でも平気なように身体を作り変えられてたような気がする。タダちゃはお風呂に浸けられていないもんね。確かに無理かも……」


 これである。剣奈はやはりバカである。何も理解していなかった。っていうか、何を言ってる剣奈。それはとある不朽の名作である。全く違う……。

 ん?あれ?全く違くもないか?いや混乱してきた。剣人語、剣人ワールドの破壊力恐るべし。


『さて剣奈、行くぞ。あの山へ。巫女舞の神事を行おうぞ』

「ん!タダちゃ、ごめんね。治してあげたいけど、ボクの力、タダちゃにはきつすぎるかもしれない。それにタダちゃが女の子になったら、おっぱい膨らんじゃうよ?」


 いや、剣気を藤倉に流しても女性化しないから。君の身体の本質はすでに女性なのだよ。剣気や神様の力を受け、まやかしの男子姿の幻術が解けているだけなのだよ。

 藤倉に剣気を流すと……、あれ?どうなるんだろう。ちょっと試してみたくも。


「大丈夫だよ。十分癒された。本望だ。これ以上は望みすぎだよ」


 聖者のような、すっきりとした顔で言い放つ藤倉である。キモい。まさか貴様、股間が濡れ……、ゲフンゲフン。


『よし、では行くぞ』

「うん!」


 甲の山、神功皇后の宝物の山、銅戈の出土した山、ビスマルクの山、真言宗の霊峰、猛々しい荒御魂の神奈備、火山、さまざまな顔を持つ山である。


 剣奈たちは向かった。地脈の作りし聖なる山へ向けて。

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