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5章 1部「王都攻略戦5」

「なんだ、これ……」


 台座の脇から回り込み、再び階段を上り、頭を半分だけ出して様子を伺ったユイトだったが、

 目に飛び込んできたのはよくわからない獣たちが、ミコトの精霊たちと戦っていて、

 魔法戦では、乱戦地へ援護射撃しつつ本体同士も殴りあっている状況だった。

 幸い乱戦になっているので、こちらを気取られることはないだろうと思いつつ、

 こうも乱戦だと射線が通らないと、様子を伺っていた。

 それでも、気配を殺しながら伏せて、銃と体に一部だけを露出し、他は階段で隠し様子を伺った。

 そんな様子に、真っ先に気が付いたのは精霊のユリだった。

 実体化せずに話しかけてきた。


「ユイト様」


「ユリか。状況は理解している。奴の全身どこでもいい。

 どこでもいいから銃弾を当てたい。そうすれば、奴を殺せる」


「わかりました。射線を開けれるように獣たちを誘導してみましょう」


 そう言うと、骸の兵士たちは少しだけ動きを変えた。

 がむしゃらに殺しにかかるのではなく、獣たちをうまく誘導し、射線を開けてくれた。


(今しかない……!! )


 そう思う、絶好の機会が訪れた。

 そのタイミングで迷いなく、引き金を引いた。

 今のユイトは血の記憶の補正により、武術はもちろん射撃も超一流の能力を持つ兵士となっている。

 そんなユイトが弾を外すわけがなく、左肩に弾が命中した。

(頭は外したが……これで……)

 終わった。と思った。だが、


「なるほど、記憶の呪いの類いか。面白い……」


 と、傷口を押さえ、顔を伏せながら笑っていた。


「な……」


 ユイトは絶句した。

(呪いが……効いてない!? )

 ユイトの撃つ弾には血の記憶の呪いを転写することができる。

 この呪いは被弾者に対し、強力な負の記憶を転写することができる。

 古今東西あらゆる場所での死の間際の一瞬の記憶を凝縮した呪いだ。

 普通の人間なら狂ってしまう。

 だが、王はその呪いを受けきったのだ。

 銃声でミコト達は、俺が無事戻ったことに気が付き、ユイトも階段を上り合流した。


「今のはあなたが撃った弾、でいいのよね」


 と、シズクも確認してくる。


「ああ、撃った弾に呪いをかけてあったのだが、呪いの類いは効かない……みたいだ」


「そう……」


「どちらにしろ、これだけ騒ぎが大きくなれば、宮殿内にいる衛兵がじき集まってくるわ。

 もうそろそろ決めないと」


 ここで、無言になるユイト。

 正面の王を見据え何かを考えているようだった。


「シズク様」


「どうしたの?」


「王は俺が倒す」


 その言葉に、シズクは静かにこう答えた。


「どうやってやるかは、この際いいわ。指示だけ頂戴」


 全員が固唾をのんで指示を待った。


「みんなはさっきと同じように、盤面を維持しつつ王にも攻撃を。

 そこに俺がさらなる高火力魔法を叩きこんで決着をつける」


「お前、そんな魔法使えたのか? 」


 と、思わず口にしてしまうアカリ。


「俺では、無理だな。だから血の記憶。

 俺の前世の記憶を使って戦う」


 その突拍子もない言葉にアカリは「ぜ、前世!? 」と素っ頓狂な声を上げていた。

「どちらにしろ、やるなら早いほうがいい。

 なるべく俺から離れてみんなは陣取って。行くよ」


 と言い、ユイトは王の左手側へ走り出した。

 そして、十分離れると右手を天に掲げた。


「来い!もう一人の俺!」

 そう叫ぶと、ユイトが光に包まれる。

 まばゆい閃光に直視できない。

 そして、光が収まったかと思うとそこには


 女の子が立っていた。


 ***


 小柄、だけどその容姿はどことなく見覚えのある女の子はゆっくりと掲げた手を正面に構えた。

 そして、渾身の一撃を放つ。


「龍神よ、今こそ我に力を! 龍の水刃!! 」


 そう叫ぶと、超高圧の水柱が王へ襲い掛かった。

 耳をつんざく音を出しながら水を撃ち続けるユイト。

 さすがの王も、防御一辺倒になる。


「はぁあああああああ!!! 」


 それに呼応して、シズクも細かい氷柱を雨あられと降らせ、さらに圧力をかける。


「雷よ!!」


 と、水柱に雷を乗せる。

 圧力はさらに上がる。

 ここが、正念場とシズクも氷柱に加えかまいたちをぶつけさらに圧力をかける。


「まだです!!」


 と、王が防御一辺倒になったためミコトが自由になった。

 精霊をさらに召喚し、獣だけでなく王本体にも狙いを定めた。

 骸の弓兵が雨あられと矢を王に浴びせる。

 がそれすらも、防ぎきる。

 すでに全開火力で1分以上魔法を叩き込んでもやりきれない。


(これでもまだ……足りないのか……)


 と、ユイトはまだ何か、使えるものはないか思案した。


(どうする。体への負担覚悟でさらに火力を上げるか……!!)


 と、考え、「もっと出力がいる!記憶だけじゃなく、魔力も貸してくれ! 」とユイトの精霊に呼びかけた。


「ははは、まだだ!まだこの程度では、私は倒せんぞ!」


 そう高笑いしながら話す王。

 骸の兵士が俺たちの魔法を迂回するように動き出した。側面から直接攻撃しようとしている。

 だが、その兵士たちに火の玉が降り注いだ。


「あの野郎、まだ攻撃するだけの余力を残してるのかよ」


 と思わずぼやくユイト。

 まだ、手が足りない。

 あと何手あれば奴を倒せる。

 そう、思った。


「ははは、今度は私の番」


 そう言いかかった時だった。

 王の背後に台座を這い上がってくる人影が見えた。


(あれは……!)


 そう思った時には、その刃が王の背中を貫いていた。


「がはっ!? な、なに!?」


「わが友、わが家族の恨み、討取ったぞぉぉぉぉぉぉおおおおおお!」


「このぉ、このような小娘にぃぃぃいいいいいい」


 アカリは、振り向いてきた王に、持っていた2本目の両手剣で首を跳ね飛ばした。


「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」


 ユイト、ミコト、シズクは肩で息をしながら、呆然としていた。

 だが、最初に発言したのは、ユイトだった。


「あと一手が、届いた……のか……」


 だが、すぐに檄が飛んだ。


「まだよ!ここにいる獣は飼い主がいなくなった! 今ここですべて殺さなければ町に被害が出るわ! 」

 その言葉で、ハッとした。


「ユリさん、お願いします!」


 そう叫んだミコトもだいぶ苦しそうだ。


「まだ、倒れるわけにはいかないな」


 そうユイトも踏ん張り、掃討戦に入った。

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