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4章 4部「勝利の暁には」


「最後にいいかしら」


 と、話を切り出してきたセッカ。


「連絡要員として派遣されたあなたは、なぜ前いた組織が壊滅した際に元の居場所に戻らなかったのかしら」


 そうセッカは、質問してきた。

 その話に、ユイトはこう返した。


「自暴自棄、と言えばいいのかな。俺も召喚主を裏切ったんだよ」


「どういうこと? 」


「いくら子飼いの反乱分子と言えど表沙汰になれば処分せざるを得ない。

 俺がそうなるように仕向けたのさ」


 その言葉に納得がいっていない様子のセッカ。


「どうしてそんなことを? あなただって、世界の守りの付与がなければ生きていけないはず……」


「この術式、というより世界の守りにも抜け穴があってな、要は血縁者がこの地にいれば

 その縁を頼りに、世界の守りの加護を得ることができるんだ」


「血縁者……? 」


 全員いまいちピンと来ていない様子だった。


「まあ、言ってしまえば子供ができれば、世界の守りは付与されるんだ」


 その言葉に全員が目を丸くした。


「あなた……子供がいるの!? 」


「え……ユイトさん……」


「何!? 」


 三者三様の反応を示してくれた。


「実際はいたらしい。だけどな」


「どういうことかしら」


「生まれる前に死んじまったのさ。母体共々。

 これは、俺があの「名もなき反乱勢力」にいたころの話さ」


 と昔話を始める。


「俺の任務は、反乱勢力の内部調査。そして暴走しないように調整するのが任務だったんだ」


「なぜ、【覇】から協力を得ているのに、内部調査なんてするの?」


 セッカは疑問に思ったことをぶつけた。

 元をたどれば同じ組織に行きつくわけだ。

 調査の必要性がどこにあったのかと。


「詳しいことは分からないが【覇】も一枚岩ではないということだ。

 反乱勢力が属していた組織と、摂政ヨイチの組織は別の会派だったということは確かだな」


「【覇】内での政治闘争の結果送り込まれたということね」


「そんなところだ」


「そうして、任務についてすぐ、俺はある女の子と出会ったんだ。

 名前は、サキ。

 魔法鍛冶師で、少し背は低かったがかわいいやつだった」


 三人は押し黙りながら話を聞きいる。


「最初はなんて事のない話や、各地へ使いに行った土産話なんかをした程度の仲だったが

 いつの間にか、俺たちは恋をしていたんだ。

 そして、二人で幸せになろう。そういう話もしていた時だった」


「だった……」


 ミコトが思わずそうつぶやく。


「サキがたまたま反乱勢力の重要機密を聞いてしまったんだ。

【覇】とつながっていることをな」


「これを知られては今後の組織運営に差し障るとして、総員で先を捕縛、処刑すべしとの号令が出たんだ。


 俺はもちろんサキを庇って共に逃げた」


「だが、逃げてる最中だった。

 敵の矢がサキの背中を射抜いたんだ。いまだに夢に見るよ。あの瞬間は」


 語るユイトの表情は暗く、今にも泣きそうな顔をしながらも前を向いていた。


「その後は、あっという間だった。射抜かれた場所は心の臓の近くで血が止まらなかった。

 治癒魔法は俺もサキも使えずサキはそのまま死んでしまったよ」


「その後は、自暴自棄。最寄りの兵士詰め所に農民に偽装した反逆者がいると通報した後、俺は単身で拠点へ戻ったよ」


「無論、俺も反逆者として殺しにかかってきたけど全員を返り討ちにして、幹部たちはこの手で殺したさ」


 無言で聞いていた、セッカだったがここで口を挟む。


「あなたの力でそんなことができるの?」


「血の記憶ってさっき説明したよな? 

 あれは、古今東西の知識や経験を一時的に得ることができる。

 それは、武術でもそうだ。武装した一般人なんざ簡単だったよ」


「こうして、幹部を失い半壊した反乱勢力は軍によって鎮圧され、俺は行方不明。となっているのが公式記録だ」


 重い空気にセッカが「そう……」と相槌をうつのがやっとの空気だった。


「だが、俺の中でサキは生きている。と思っている。そう感じるようになったのは

 世界の守りを自力で受けることができているとわかってからだ」


「どうしてそれがわかるの?」


 セッカが不思議に思い聞く。


「すべてが終わった後、俺は世界の守りの供給路を破棄し朽ちて死ぬのを一人で待った。

 自殺する勇気はなかったからな」


「だが、待てども待てども、世界の守りの効力は出続けた。

 そこで、精霊に調べさせたんだ。これはどこから来てるのかってな」


「そうしたら、さっき言った通りのことだった。って話だ。

 俺の中で、サキとの縁は繋がっている」


 少しの沈黙ののち


「ユイトさん」


 最初に言葉をかけたのは、ミコトだった。


「ユイトさんは私が来るより前からずっと戦っていたんですね」


「ああ。だがすべてが悪いことじゃなかった。

 失ったものもあるが大切なもののおかげで俺はまだ生きてる」


 そう話を締めくくった。

 

 ***


「それで、これからどうするつもりなのか、計画を聞かせて頂戴」


 雑談と種明かしも一通り済んだところで、セッカがこれからのことを聞いてきた。


「まずは、王都でことを起こすための仕掛けが必要だ。

 お前らの計画ではどうだったんだ?」


 そう、セッカに話を振る。


「まずは、私が先頭に立ち反乱を呼びかけ、呼応した有力者と共に王都へ攻め入る手はずだったわ。

 事前に呼応するように呼び掛けて応じてくれていた有力者もいたし

 王都内にも間者はいたから、それらも使ってね」


「なるほど。正攻法で王都を落とす手はずだったと」


「そうね、けどその計画はもうご破算よ。それだけの組織を構築するだけの力がもうないもの。

 あなたはどうするつもりなの? 」


 そうユイトに話を振る。


「俺は、外から攻めるのではなく中で暗殺してしまうというのが手だと思っている」


 その言葉に難しい顔をするセッカ。


「言うのは簡単だけど、どうやって中に入るのよ」


 すると、ユイトは衝撃的かつ大胆な発言をした。


「俺の元部下で、今の特殊偵察隊の隊長に話を付けよう」


「特殊偵察隊? 」


 セッカがそう聞くと「先の【覇】との1戦の際に、俺が率いた3000人隊のことだ。」とユイトは答えた。


「隊を名乗ってはいるが、実際は少数で特殊な指示を受けて行動する小隊だったよ。

 偵察や暗殺はもちろん。破壊工作、戦地後方での攪乱任務なんかを担当したな。

 この隊の今の指揮官をこちら引き込んで王都へ乗り込む。

 王都では、兵士の駐屯所などを攻撃して一時的に兵士の無力化を頼みたい。

 そしてその隙に、俺たちで王を……殺す」


 ここで一瞬皆が無言になった。

 各々考えることがあったのだろう。


「さてセッカ様。ここであなたに一つ問いたい」


「何かしら」


「あなたは、血の指輪を持つ以上、王族には違いない。

 亡き姉の名前を名乗らずとも、王女になれるのではないか? 」


 そう聞くと、セッカはこう答えた。


「セッカという娘はあくまで王族には数えられない人間。

 血の指輪を持っているのも、本来はおかしい話なのよ」


 胸元にひもで下げてある指輪に手を当てながら、そう言った。


「けれど、私は王族の証を持っている。

 この指輪は、私にとって呪いであり、父との唯一のつながりなのよ」


 そして微笑みながらも芯をもっ言葉でこう言った。


「すべてが成功した際に、ただの町娘が言う言葉より、シズク姉様の言葉の方が強い。

 王都から脱出したあの日、セッカという娘は死んだと思っているわ」


 その言葉に、ユイトは片膝立ちになり、拱手の姿勢でこう言った。


「では、シズク様。王座のこの手に強奪し、勝利を。

 そして、勝利の暁には私とミコトを元の世界へ帰すと約束してください」


 その言葉に、シズクはこう答えた。


「ええ、勝利の暁には、叶えることを約束しましょう」

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