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4章 3部「ユイトの精霊」

「質問してもいいかしら」


 セッカはこの状況にあっても、なお瞳には生気が宿っていた。

 なんとかしなくては。そんな気迫をユイトは感じた。


「どうぞ」


「まずは、なぜこの話を私たちにしたの? 」


「このままでは国は亡びる。そうなれば、ここにいる全員が損をする。

 だから、状況を知り、働いてもらうために説明した」


 そういうと、セッカはこう返した。


「あなたは、部下たちに国を裏切れ、と言っているのだけれどそれでいいの?

 少なくとも、あなたは損をしないはずよ」


「確かに、ヨイチにつけば悪いようにはならんだろう。だがそれではだめだ」


「どうして? 」


「良くはしてもらえるだろうが、俺は元の世界への帰還は叶わないだろうということが一つ。

 もう一つは、英雄召喚の欠陥、だな」


 その言葉に、セッカはハッとした様子だった。


「時間制限のことね」


「時間制限? 」とミコトがつぶやいた?


「英雄召喚はその性質上、どんな人物が呼び出されるかわからない。

 場合によっては、呼ばれたものが暴走し……という可能性もある」


 そうユイトが言うと、セッカが答える。


「そのために、召喚者には世界の守りが付与されず、召喚者経由で付与される。

 最悪契約を切れば長生きはできない。という方法で処分できるようになっているわ」


「だが、それが叶わない場合にも対処できるように、術式の強度をあえて落として設計されているんだよ」


「術式の強度? 」


 ミコトはいまいち理解できていないようだった。


「要は時間経過で魔法が劣化して、最後は維持できなくなるんだ」


「それって……」


「ああ、俺たちはいずれ死ぬ。有限なんだ。この世界で生きるには」


 その言葉に押し黙るミコト。

 セッカも申し訳なさそうにこそしなかったが、その様子をじっと見ていた。


「その代わりにこの術式を展開している間は、被召喚者は歳を取らないといった副産物はあるけどな」


 その発言をした後、セッカが再び質問する。


「次の質問いいかしら」


 ユイトは無言で頷く。


「私を結局どうするつもりでいるの? 」


「最初と変わらないさ。あんたには現王政を打倒し、王に即位してもらう。

 そして、俺とミコトを元の世界へ帰してもらう。これだけさ」


「打倒って言っても、私に私兵は用意できないわよ? 」


 そう言うと、ユイトはこう答えた。


「王都圏にいる俺の元部下、数百人と俺たちで現王を暗殺する」

 

  ***



 話は一通り済み、各々が任務のために散開していった。

 残ったのは、セッカとミコトとアカリ、そしてユイトと、身の回りの警護のための要員3名ほどだった。

 今は、警護要因は周辺警戒。他の面子は再び円を囲みながら話をしていた。


「しかし、あなた。処刑された時の魔法。あれは何だったの? 」


 セッカは不思議そうに聞いてきた。


「というと?」


「数日前から尋問で指を切り落としたりしてたわけだけど、血とかが出ていたわ。

 身代わりの魔法では、そこまでの精度の物はできないわ。

 どんな魔法を使ったの?」


 その言葉にユイトは「それは……まあ隠しても仕方ないか」と諦め込みでこう言い放った。


「出て来いよ。相棒」


 そう言うと、周りに一瞬閃光が走った。

 そして、ユイトの肩に片手に乗るくらいのサイズの小人が現れた。


「せ、精霊!? 」


 3人は驚きを隠せなかった。

 精霊使いがもう1人、いたことに。


「おうおうなんだい、皆へお披露目ってか? 」


「まあ、お前の種明かしをしないと納得してもらえないからな」


「そりゃあ、そうだな」


 と精霊と会話している様子を呆然と見ていた3人だったが、最初に発言したのはミコトだった。


「これが、ユイトさんの……精霊さん……」


「おうよ」


「精霊さんっていろんな種類がいるんですね……」


「あんたのところの精霊は、宿主がいないと骸の姿で顕現するんだったな。

 俺は元からこの姿だぜ。むしろそっちが珍しい」


 その言葉に「へー」と感嘆の声を上げていたミコトだが、セッカは別の質問を投げかけた。


「あなたの、奇跡でユイトは替玉になっていた。ということでいいのかしら」


「おうよ、姿形を完璧に再現できるぜ。そのうえ他人にもなれるし、こいつに憑依させることもできるぜ」


 とポンポンとユイトの耳あたりをたたく精霊。


「なんというか、諜報員向きの奇跡ね」


 と感想を残したセッカ。


「だが、こいつの能力はそれだけじゃあない」


「どういうこと?」


 思わず食いつく、セッカ。


「こいつはな、無限に魔力をため込む精霊だ。そのために魔力も血も吸い取る」


 興味津々といった様子で聞いていたセッカだったがここで凍り付いた。


「待って、魔力はおろか血も……? 」


「ああ、そうだ」


「待って、あなたが契約している精霊って……」


「ああ、本来は討伐されなければならない精霊だ」


「そんな精霊とどうして契約してるのよ。正気を奪われて殺されるわよ!? 」


 思わず、声を張り上げてしまうセッカ。

 それに対して、ユイトは冷静だった。


「確かに、最初はこいつもそのつもりだったようだ。

 だが、この世界に来て、俺と話ができるようになってからは取引をしたんだ」


「取引……?」


「どうやら、俺は生まれついて魔力を生成する力が相当強いようでな。

 昔は病弱になるほどだったんだ」


「だが、俺様が魔力を吸ったところ元気になりやがってな。

 一度に死ぬまで魔力を吸うより、こいつが死ぬまで吸っていた方が俺的にはおいしいのさ」


「で、この世界に呼ばれてからこう契約したのさ。

 魔力は死なない程度に持っていけ。その代わり生きて元の世界に戻るため、力を貸せってな」


「俺がこいつに提供できるのは2つ。

 1つは俺自身が持つ精霊魔法。もう1つは血の記憶だ」


 聞きなれない単語が出たのでセッカは聞き返した。


「血の記憶って何? 」


 すると精霊は饒舌に語りだした。


「血とは人間を構成しあらゆる場所を通る魂の通貨。

 故に、血を吸った者の記憶や経験をこいつに魔力を逆流させる形で与えるのさ。

 あらゆる戦闘経験はもちろん。食べれる野草の見分け方や大道芸なんかも与えれるぜ」


 ふむ……とそこで考え込みだしたセッカ。

 そして考えた末に出てきたのは


「なら、ユイトに魔法に対する抵抗力があったのはこのせいだったのね」


「どういうことです、セッカ様」


 アカリがそう聞くとセッカはこう返した。


「ユイトを以前自白魔法で尋問した際、まったく口を割らなかったのよね。

 魔法を弾いてしまう強力な抵抗力はそれで身についたのでしょうね」


「あのー」


 恐る恐るといった様子でミコトが声を上げる。


「そもそもユイトさんは裏切っていなかったわけで、技にかかっても何も出てこないんじゃ……? 」


 この質問に対し答えたのはユイトだった。


「いや、そうもいかない。何を答えるか。答えさせられるかなんて予想がつかないからな。

 下手なことをしゃべるとややこしいことになる」


「なるほど……」


 その様子を見て「くくく……」と笑う精霊。


「あの程度の魔法では、こいつは魔法にかからんよ。

 それこそ、こいつを呼び出した儀式魔法クラスのを用意しないとなぁ……」


「そこまでの抗魔法耐性なの……? ユイトを一度治癒魔法で治癒した際は

 何事もなく治癒できたのだけど……」


 と、聞いてくるセッカ。


「以前治癒できたのはこいつのおかげだな。抗魔法耐性を一時的に切ってくれたんだからな」


 ユイトは、精霊に指を指しながら答えた。


「そうでなければ、この世界の魔法は大抵のものは弾くぞ。

 俺の魔力に少しでも触れれば、正気じゃいられないからな。抗魔法耐性がないと」


「それはそうね……」


 セッカは腑に落ちたようでふむふむと頷いた。


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