3章 12部「援軍」
ミコトにとって、この世界で心のよりどころになっていた人物は二人いた。
一人はカエデであった。 この世界に来て、いろいろな場面で話を聞いて、慰めてもらっていた。
だが、カエデは間者だった。
どこまでが本心だったのか。今となっては分からないものである。
そしてもう一人、心のよりどころとなった人物の名前は
***
「ユイトさん!」
ミコトは精根尽きかけて、今まさに命を落としそうになったところ。
そこに来てくれたユイトに、喜んでその名前を呼んだ。
「何とか間に合ったな。久しぶり、ミコト」
ミコトはユイトの方へ駆け寄り思いっきり抱き着いた。
訳が分からないまま別れて、もう会えないと思っていた人との再会にミコトは強く抱き着いた。
「あなた、なぜここにいるの……?」
セッカも駆け寄ってきたが、不気味な何かを感じ取って、恐れ半分で聞いてきた。
「なぜって、助けに来た以外あるのかよ」
拷問を加えた後、処刑までしてきた人物を助けにくるなんて不気味そのものである。
その返答の裏には、何があるのか。言葉の通り、助けに来たのかわからない。その何とも言えない、危うさに押し黙っているとユイトは答えた。
「安心しろ。助けに来たのは本当だ」
その言葉の真意をセッカは分からなかった。
だが、どういう事情であれ、助けに来た。この事実だけは確かだった。
「そう……、事情がどうであれ、今はあなたの言葉を信じるほかないわね」
二人は、ひとまず協力できると互いの目を見て頷いた。
そのあと、ミコトに「これから作戦を話すから、離れて」と諭す。
ミコトは名残惜しそうにしながらも、ユイトから離れた。
敵を見ると、落馬した将は起き上がり、こちらの様子をうかがっていた。
ユイトはその様子を見て短く指示を出した。
「仲間が追ってきてる。一緒に脱出するよ」
「仲間って……どこに?」
セッカはそう言いを辺りを見渡した。
すると、ユイトが飛んできた方向に砂塵を巻き上げる何かが接近していた。
「新手の何かが来ます!」
敵も気が付いたのか、警戒を促していた。
「船を用意した。吹き曝しだが、足は速いぞ」
そう言うと、ユイトは立ち上がった。
手にしている銃の先に銃剣を着剣し銃を構えた。
見たところ火縄銃ではあるが、火縄と発射装置がなく改造品であった。
「増援が来るぞ!早く殺せ!」
増援の気配を感じ取り早々に決着をつけんと、取り巻きの兵士たちが騎馬で突撃してきた。
距離にして数秒で詰められる距離。
しかし、その間に割って入るように後方から魔法が飛来し、騎馬した兵士たちに襲い掛かる。
「不動城壁!」
飛来した魔法に対して兵士の反応も素早かった。
見る見るうちに目の前の土が盛り上がり、飛来する魔法を受け止める。
ただ、物理的に壁が立ちはだかり、後方から止めどなく魔法が着弾し兵士たちも動けない状態だった。
「いくぞ!」
三人は、砂塵が舞う方へ走っていった。
敵もそれに気が付いたのか、左右に散開し追ってきた。
敵の魔法使い部隊は、騎馬集団の前を走り防御を行いつつ反撃の魔法も射出し始めた。
大半の敵は、ユイトの仲間が放った魔法により、ユイト達に近づけないでいた。
しかし、何人かはすり抜けて突撃してくる。
「その命、頂戴いた---」
槍を構えた兵士が叫びながら突っ込んできたが、ユイトが一瞬立ち止まり銃を構えた。
その直後、空気が破裂するような音が鳴り響き、兵士の脳天に風穴が空いた。
続けて、前を走っているミコト達の横から突撃しようとしてきた兵士にもう一発、銃を発射し騎兵は馬から崩れ落ちるように倒れた。
セッカも、周りにいる兵士に対し氷魔法で攻撃を加え、左右に展開している兵士へ横から圧力をかけている。
しかし、このままでは馬の脚で回り込まれてしまい包囲分断されることになるだろう。
「俺たちを跳ばせ!」
ユイトは後方からそう叫んだ。
その言葉に、セッカは反応しその場で立ち止まり片膝をついた。
「背負って跳ぶわ。乗って!」
ミコトは何をするのかはわからなかったが、とりあえず、セッカにおんぶされる形で乗る。
足元では魔法が展開され、その輝きは少しづつどんどん強くなっていく。
それ気が付いたのか兵士たちも各々突撃してきたり、魔法も放ってくる。
炎の玉がミコト達に向かって飛来する。
しかし、その火の玉は途中で炸裂し、ミコト達へは届かなかった。
「我らが盾となります。ミコト様はそのままで」
精霊はそう語りかけると、周りから骸の兵士たちが次々と湧き出て、兵士たちへ襲い掛かった。
そして、骸の兵士に気を取られている兵士をユイトが撃ち抜き時間を稼いだ。
「跳べるわよ!早く!」
セッカはそう叫ぶとユイトはすぐに駆け寄ってきた。
そして、地面がひときわ強く輝いた後、三人は強力な衝撃とともに空中へ射出された。
半包囲しつつあった兵士たちを軽く飛び越え、砂塵の方へと飛んで行った。




