3章 7部「私を助けて」
「ミコト様!ミコト様!!」
疲れも抜けきらぬ中、無理やりミコトは起こされる。
目を開けると、セッカも別の精霊に起こされていた。
「どう……したの?」
時刻は夕方。
まだもう少し寝ていたい気持ちを抑え、重い頭で精霊に何の用事かを聞いた。
「歩兵が接近中です。すぐにお逃げを」
その言葉で、ミコトは瞬時に目覚め、飛び上がった。
セッカも同様で、すぐに飛び起きると
「敵の方角は!?」
と状況を確認していた。
「昨日の集落のあった方角からです」
「もしかしたら、駐屯地に通報があったのかもしれないわ。走るわよ」
と、すぐに街道へ飛び出して走り出したミコトとセッカ。
精霊は、そんな二人に追走しながら状況を伝える。
「現在、すでに警戒網の先端には到達しています。
先端にいる同胞たちは、潜伏し情報を報告し続けております」
「それでいいわ、なるべく気取られず、どれほどの追撃隊か情報が欲しいわ」
とセッカは、冷静に指示を出していた。
「お任せを」
そう言いながら、街道を進む。
どこまで行けば振り切れるのか、どこまで逃げれば終わるのか。
ただただ、苦しい逃避行に心が折れそうになりながらも生きたい一心で走り続ける。
そうして走り続けるがほどなくして
「ミコト様、セッカ様、非常によくない報告をお許しください」
と、精霊が話しかけてくる。
「前方の警戒網の先からも兵士が接近しております」
その言葉に、言葉を失う二人。
前後から兵士に近づかれている。
このままでは、挟み撃ちだ。
「横に逃げてすり抜けるわよ」
とセッカがすぐに頭を切り替えるが
「横にもかなり広く展開しているようで抜け切るのは難しいかと」
と、報告してきた。
「恐れながら、この一帯の兵士を総動員し、山を丸ごと潰すように偵察していると思われます。
躱すことは不可能かと思います。」
「じゃあ、どうすれば……」
ミコトはすがる思いで精霊に打開案がないか聞く。
「方法は1つのみ、ミコト様のお力で道をこじ開けます」
「私の……力?」
そう聞くミコトに、精霊は力強く答える。
「私たちは、あなた様の剣であり、盾であり、道です。
ご命令とあらば、脱出路をこじ開けて見せましょう」
その言葉の意味をミコトは最初、理解できなかった。
その様子を見て、セッカは
「私にアカリがいたみたいに、あなたには精霊がいる。
私がアカリに命令を出すように、あなたも精霊に命令を出していいってことよ」
その言葉に、アカリは少し黙り込んだ後、
「精霊さん、あなたのお名前は?」
「私は名を持ちません」
「じゃあ、後で名前を付けてあげる。
けど、その前に」
ミコトは一呼吸置き
「私たちを助けて」
と精霊に告げた。
「全力でお力になりましょう」
精霊はそう答える。
すると、周りに無数の黒い影が出現する。
影からは、骸の兵士が次々に湧き出し前方の兵士がいる方向へ走り出す。
その光景は、ミコトたちにとって心強く、
これが失敗すればすべてが終わることも自覚させていた。




