3章 余談「カエデの任務」
「では、カエデ様。何かあればお呼びください」
そう番兵は言い残し、戸を閉めてどこかへ行った。
しばらくは、その場で立ち尽くしていたけど、やがて与えられた居室にて私は大の字になりながら寝転がり、天井を見つめていた。
「お役目は……終わったんだ……」
そう、私のお役目はシズク様の護衛の名目で監視に入り、情報を流す。というものだった。
政変の際に、その役目は終わる……はずだった。
シズク様は討たれ、替玉のセッカが生き延びたところで、政局には影響しない。
私も、任を解かれどこかに嫁ぐことになるだろう。そう思っていた。
そう、シズクが討たれた後、あの指輪を見るまでは。
セッカは正式に王家に認められた人間ではない。
よって、王家の【血の指輪】は持っていないはずだった。
しかし、持っていたのだ。
おまけに、シズクと容姿は似ている。
これでは、シズクがもう一人増えたようなものだった。
すぐに、このことを上司である父上へ鳥を飛ばして報告をした。
が、返事は来なかった。
代わりに、王都で武人や役人の処刑があったという噂が流れた。
新王即位に反を唱えたとして。
その際に、口封じに父は殺されたと思った。
やむを得ず、私は監視の任務を続けた。
何か理由があったわけではない。けど、やめる理由もなかったのだ。
そうこうしていたら、ある時、王都に近い町へ使いを頼まれたことがあった。
使い自体は無事に終わり、市場で土産物を探してた時だった。
いたのだ、父が。
すぐに父も私の存在に気が付き、再会を喜んだ。
鳥を飛ばしていたが、どうやら鳥は届いていなかったようだった。
父に現状を話し、私は父との連絡手段を確保したうえでセッカの待つ拠点へ帰った。
以後、定期的に、鳥で報告をしていた。
そんな私に、退避命令が出たのは、兵士を動員しての確保作戦が発令されてからだったが、ミコトの精霊によって失敗した。
しかし、最終的には、セッカとミコトを確保し、任務を終えることができた。
アカリには、任務とはいえ申し訳ないことをしたと思っている。
けど、私は元から裏切っていた身なのだ。
何を言っても、もう仕方のないことだと割り切るしかないと思っている。
振り返ると長い、とても長い任務だったな。と振り返っていた。
数十分そのままの姿勢でぼーっと振り返っていたが、やがてお腹がすいてきた。
ご飯でも分けてもらおうかと、起き上がった時だった。
「敵襲!!敵襲!!!」
その声に、反射的に反応した。
近くにあった、弓と矢をつかみ取り、戸を開け見渡すと、目の前から骸骨の兵士が100は迫ってきていた。
「なっ!?」
骸の霊が出るといった類の話自体は、珍しいものではない。
だが、駐屯地に、これほどの数が出るのは人為的だ。
しかも、セッカの私兵にこんな能力を持った人物はいない。
一体だれが……。
と、考え出したがすぐにその思考を打ち切って矢を構えた。
「怖気ずくな者ども!戦え!!」
そう檄を飛ばし、矢を放った。
矢は骸骨の兵士の頭部に直撃し頭蓋骨が砕けた。
頭を失った骸骨はその場に崩れ落ちた。
次の矢を構えたのと同時に、兵士たちも覚悟を決めたのか、骸骨の集団へ突撃していく。
しかし、骸骨も黙っていたわけではなかった。骸骨の半数以上が突撃に合わせて突撃したのに対し、残りの30体ほどは矢を構えているのが見えた。
狙いは、突撃をせず後ろから矢を放っていた私だった。
その狙いを悟りとっさに物影を見渡すがない。
一度建物に戻り中から狙撃を、と後ろへ向かって走り出そうとした。
が、部屋にたどり着くより早く、無数の矢が私を襲った。




