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プロローグ2 「目が覚めると茅葺屋根の家」

「っ、っう…………」


 ユイトは左脇腹の痛みで目が覚めた。

 茅葺(かやぶき)屋根の天井が見えるのでここが室内だということは理解できた。

 手足を動かしてみると自由に動いた。拘束はされていない。

 誰かによって、どこかに運び込まれ寝かされていたようだ。


 (あの武人の仲間、か)


 おそらくユイトを襲った武人の女の子かその仲間がここに運び込んだと予想した。

 体をゆっくり起こす。


 骨が折れた痛みは残っているものの見た目、動作的には問題なかった。

 もちろん、無傷だったわけではない。

 武人の持つ槍で殴り飛ばされたのだ。肋骨の一本や二本は折れていたであろう。

 おそらく誰かが治癒魔法で治療をしてくれたのだろうと思い、あたりを見渡す。


 外は暗く夜であることがわかる。いろりの炭が黄金色に輝き、温かく僅かながら光源の役割を果たしていた。


 そして、いろりの近くで床に雑魚寝しているミコトの姿もあった。

 ただ、その目の周りは赤く腫れていた。

 泣き疲れて寝たのかもしれない。


 起こさないように静かに起き上がり、小屋の戸を開けて外を伺う。

 外を見ると同じような住居が複数あり、どうもどこかの村か集落であると推測できた。

 しかし、ユイトを治療した人や運んだ人間は見当たらず、どうしたものかと考えていると後ろから声がした。


「起きたんだ」


 ミコトはまだ頭が回っていないような顔をしながら、声をかけてきた。


「さっき起きた。すまない、音で起こしてしまったか?」

「ううん、起こしてくれたほうが良かった」


 と、彼女は答えたがすぐにまた泣きそうな顔になる。


「ねえ、これから私はどうしたらいいの……」


 ユイトは答えようにも答えることはできなかった。


 彼女の腫れた目を見るに、一筋縄ではいかない。

 ここで気休めなことを言っても、いたずらに彼女を傷つけるだけだと思ったからだ。


「……さっきここの偉い人から、あなたたちに用があるから起きたら一緒に来て、って言われてるの」


 と、答えないユイトにそう告げた。


「一緒にってことは……君も?」

「うん……」


 その表情は暗く、今にもどこかへ消えてしまいそうな顔だった。


「じゃあ、行くか。案内してくれ」


 わかった。と言いミコトとユイトは小屋を出て、村一番の大きい住居に向かった。


----------------------------------------


 呼ばれて入った家には、数人の人が話をしていた。

 入ってユイト達の顔を見ると、会話をすぐに切り上げてこちらに向き直った。

 どうやら大事な話をしていたわけではなさそうだ。


 話をしていたのは五人。


 育ちの良さそうな雰囲気を漂わせてるお嬢様が一人。


 さっきユイトと死闘を繰り広げた武人系女の子が一人。


 その二人と同い年ぐらいで赤と白の巫女服を着た女の子が一人。


 あと、中年の体躯に恵まれている男と老人の男が一人ずついた。


「上がって座りなさい。体の調子はどうかしら」


 育ちのよさそうなお嬢様は、猜疑心を感じさせる声色で言葉をかけてきた。

 やはり、その目は友好ではなく、こちらを味方かそうでないかを見定める目をしていた。


「じゃあ遠慮なく」


 座敷へ上がり、土間にどかっと座るユイト。

 ミコトもそれに正座で続いた。


「体の調子は良好だ。アバラが折れてたと思うのだが、誰かが治療してくれたみたいだな」

「私が治療したわ。と言っても、あと二日は安静にね」


 治癒魔法は、酷い外傷でもほぼ元通りに直せるが、魔力を糧にした生成物で見た目と機能を代替させている。

 大怪我の場合は安定するまで数日かかるうえ、失血した血は元には戻らない。


「それは、世話をかけたな。ありがとう」

「礼は不要よ。今回は偶発的に起きた半ば同士討ちですもの」


 そういっているということは、こちらのこともある程度覚えているようだ。


「久しぶりだな。姫様」

「ええそうね」

「え、知り合いなの?」


 と、ミコトが聞いてきた。


「以前所属していた集団の長とそこの姫様と会ったことがあるんだ。んでその時、護衛でそばにいたから知っているってわけだ。で、ミコトはどこまで話を聞いているんだ?」

「っ……」


 ミコトは顔を伏せてながらも首を横に振った。


「何も話していないわ。だから今から、ミコトを含めて状況を説明するわね」

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