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1章 9部「逃げ足は速かった 3」

「な、なんですって!? 精霊!? それにその人間の気配を私に知らせるように言った!?」

 シズクは驚きのあまり小屋の外にも聞こえんばかりの大声を出した。

「で、ですよね。信じてもらえないですよね、あはは……」

 ミコトも聞き入れられるか半信半疑で、先ほど聞いた内容をシズクに報告した。

 シズクは驚きのあまりしばらく絶句していたが、少しして元に戻った。

 そして、「か、確認しないと!? ミコト、すぐにいつも集まってる場所に来て!」と言って小屋を飛び出していった。

 取り残されたミコトは何が何やらといった様子だった。


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 少しして、主だった人間が集められた。

 時刻は夕方を過ぎ夜に入ろうとしており、辺りは暗くなり始めていたところだ。

 参加者はミコトやこの村の長老やシズク配下の人間が三名、そしてこの村の若者代表の体格の良い男だった。

 「先ほど、ミコトが妙な話を言い出したため今回は集まってもらっています」

 「妙、とは。どういうことですかな。話がわかりませぬ」

 と長老含め全員がミコトのほうを向く。

 ミコトは恥ずかしさから小さくなってしまう。

(言わなきゃよかったかな……)

 そんなことを思っていると肩に鷹を乗せた一人の男が慌ただしく戸を開けて入ってきた。

 彼は使い魔の目を通して遠くを見ることができる魔法を使える。

 ユイト達が連れて行った使い魔を用意したのも彼だ。

「シズク様! 大変です!!」

 その言葉に、シズクは青ざめた。

「この村から町までの街道に検問が設置されています! それにこの村までの山の中に松明の灯りが多数見えました!」

 その場にいた全員が凍り付いた。

「ど、どういうことですかな!?」

 と長老が慌てながら、シズクを問いただす。

「ミコトが精霊の声を聞いたのです。その内容を元に使い魔を使って付近を探索してもらいました。

 その結果が先ほどの報告です」

「な、なんと……」

 長老も事態の深刻さを理解し青ざめた。

「私の配下の者は、すぐにここから脱出する用意を。

 書類はすぐに焼却して痕跡を残さないように!」

 この号令で全員が慌ただしく動き出した。

 しかし、シズクは長老を呼び止めた。

「長老、道半ばではありますがお別れです。私たちのことは何も知らなかった。いいですね」

 万が一こうなった時のために、取り決めはしていた。

「ははっ。心得ております。シズク様、どうかご無事で」

「あなたと、この村のみなさんももどうか無事でいられますよう祈っております」

 そう言うと、長老も足早にどこかへ行ってしまった。

「ミコト」

 シズクが呆然としていたミコトへ声をかけた。

「助かったわ。今回、あなたの忠告がなければここで終わっていたかもしれないわ」

「ど、どういうことですか?」

 と思わず聞き返えしたミコト。

「言葉の通りよ、あなたが聞いた精霊の言葉。それのおかげで村に捜索が入る前に逃げられるわ。

 間に合うか、怪しいところだけれど」

 ミコトは現状を飲み込めず「は、はい?」と返事をした。

 その様子を見てシズクは現状を嚙み砕いて説明した。

「あなたが言った精霊という存在は実在するわ。

 そして、その精霊がこの村に兵士が迫っていること知らせてくれたの。

 おそらくあなたの身に危険が迫っているから何とか伝えた。ということでしょうね」

 そう言われ、ミコトは動揺した。

「ど、どうすればいいですか?」

 それに対し、シズクは「荷物をまとめて、すぐに」と言ってミコトが寝起きする小屋へ行くように促した。

 付近の小屋や屋外では書類などを燃やしておりその光が赤く揺らめいていた。

 ミコトはすぐに小屋へ戻り、身の回りの物とこの世界へ呼ばれた時に来ていた服をまとめ外に出た。

 外へ出ると馬と屋根のない荷物運搬用の馬車が用意されており、ミコトは馬車の荷台に乗るように言われる。

 荷台に座るとすぐに出発した。

 ミコトにとっては約一か月ほど過ごした村だったので、名残惜しい気持ちもあった。

 が、残るわけにもいかないのも事実で、そんな村を見送りながら、村は少しずつ小さくなっていった。

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