迷宮の魔導書! フィナベル孤立!?
「フィナベル、次の階層へ行くよ!」
アリオンがそう言って、階段を下りていくと、
「何かなこれ?」
フィナベルが地面に書いてある魔方陣を何の気なしに踏んでしまった。
いきなり魔方陣が光りだし、作動してしまった。
「ああ、フィナベル!罠だ!」
アリオンが叫んだ時にはフィナベルの姿はもうそこにはなかった。
「嘘だーーーーー!」
アリオンは絶叫したが、状況は何も変わらなかった。
★☆☆☆☆☆☆☆★
「あれ、ここどこ?」
フィナベルが真っ暗な部屋へ転移されたようだった。
「ライト!」
フィナベルが明かりを灯すと、書斎のような小部屋だった。
「この部屋なんだろう?」
周りを調べていくと、
机の上に一冊の魔導書が置いてあった。
創成迷宮のすべて
【Nexus of Creation】
「ええ、この迷宮の踏破者の書なの?」
フィナベルは好奇心が抑えきれずにその魔導書のページをめくった。
••••••••
はじめに•••
この魔導書を手にしている者は、この迷宮を踏破せし者か、それとも、罠にはまった愚か者のどちらかであろう。
••••••••
こんな書き出しで始まっていた。
「愚か者•••」
フィナベルは愕然としてしまった。
••••••••
まあ、それはさておき、この魔導書を手にしたことには代わりない。
おめでとう!と言わせてもらおうか•••
ここまでの経緯は、正直どうでもいいことなのだ。ここへたどり着いたことに意味がある。
ただし、この最深階層では、生きて行くことすら非常に困難だ。
まずは、ここで生きていけるだけの能力を身に付けなければならない。
••••••••
「ええ、なにこれ•••最深階層って•••」
フィナベルの気分はさらに落ち込んでいった。
••••••••
第一章 【生きろ!】
この最深階層には、強力な魔物がはびこっている。
絶対にその扉を開けてはならない。
この部屋は、特殊な構造で外からの侵入は決まった方法でしかできないようになっている。そのため、安全であることは保証しよう。しかし、外で戦う能力のない者は一生出ることができない。
故に、生き抜くための能力の開発に勤めなければならないのだ!
とにかく、水分と食料の確保を真っ先に行うことが最重要事項だ。
何をするにも、それができなければ何の意味も持たないからだ!
まずは、生き抜くための努力を惜しむな!
生きろ!
••••••••
「ええ、生きろってこの作者は?」
フィナベルは心配になって辺りを見回したが、それらしき死体も痕跡もなかった。
「もしかして外に出ちゃったのかな?」
フィナベルの妄想は限りなく広がって行った。
••••••••
第二章 【死ね!】
この最深階層で生きていくのに、一番の苦痛は、孤独である。
人は、長時間一人でいると、精神に異常をきたす可能性が非常に高い。
孤独を克服するためには、一度、自分自身を殺す必要がある。
もちろん、比喩であるのは言うまでもないが、精神を一度、破壊して死ぬ必要があるのは拭いようのない事実である。
それを克服できれば、無我の境地にたどり着くことができる。
つまり、まずは死ね!
••••••••
「いや、死ねって•••この作者はかなり病んでるみたいだな•••」
フィナベルは悪寒が走った。
ブルッ!
「しかも、魔導書って言ってるのに魔法のことも全然書いてないし•••」
フィナベルは少し呆れていた。
★☆☆☆☆☆☆☆★
その頃、アリオンはやりきれない事態に困惑していた。
「ああ、フィナベルがいなくなってしまった•••どうしたら•••」
アリオンは塞ぎ込んでうずくまってしまった。
「どうにか、フィナベルの安全を確認したい!連絡をとる方法はないかな?」
塞ぎ込んだまま頭の中をいろんな考えがグルグルと渦巻いていた。
「このポーチって、フィナベルのリュックと中身が共有されているって言ってたな!」
顔が少しだけ明るくなった。
「声は無理でも、文字なら連絡がつくかも•••書くものがないか•••」
アリオンはまた壁にぶつかって塞ぎ込んでしまった。
「フィナベルのことだから、ポーチの中にノートくらい入れてあるかも!」
アリオンはポーチを腹側にくるりと回すと、中に手を入れてノートを探してみた。
「これは?日記?」
フィナベルの日記を見つけた。
「さすがに、日記を見るのは気が引けるな•••でも、そんなこと言ってる場合でもない気がする•••」
アリオンはかなり躊躇したが、覚悟を決めて日記を開いて見た。
••••••••
○月○日
私には、魔法の才能がないことを再確認させられた。
学校でなんでもできる生徒を見かけた。彼は、みんなからチヤホヤされてとても輝いて見えた。
それに比べて私は、運動も魔法も全くダメダメで、自己嫌悪に陥るばかりだ。
唯一、魔道具を作っている時だけは、私のゴールデンタイムだ!
この時間だけは、誰にも邪魔させない!
パパやママのような立派な医療従事者にはなれないけど、この魔道具でこの世の中を少しでもよくするのが、私の夢だ!
••••••••
良くないこととは分かっているが、つい日記を読んでしまった。
アリオンは罪悪感を抱えながらも、自分の夢を持っているフィナベルのことが羨ましかった。
「フィナベルごめん!」
そう言ってアリオンは、日記の続きのページにメッセージを書いた。
••••••••
フィナベルへ
勝手に日記を使用してごめんなさい!
緊急事態なので許してください!
まずは、無事の確認をさせてください。
無事なら、このノートの続きに現状を書いてください!
よろしくお願いします。
アリオンより
••••••••
「フィナベルに気がついてもらえるかな•••」
アリオンは心配そうに日記をポーチにしまった。
次回 キューブの部屋と交換日記!?
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頑張って続きを書いちゃいます!




