第20話 元童貞、弟子になる
「調子に乗るなよ! クソガキ!」
「調子に乗るなはこっちのセリフだ!
昔の女のセックスを笑い物にするとかしょーーーーもない男だな!
お前に股開いてる弟子どもも恥知らずのクソ女ばっかだよ!
雑魚狩りしてヤリチン気取ってんじゃねえよ!」
僕はありったけの怒りをモテ男とついでにニーナとミーナにぶつけた。
ピキピキと音を立てるくらいに青筋が浮かび上がってくるがもうどうでもいい。
僕は怒っている。
美少女をはべらかしていやらしいご奉仕を散々してもらいながらも元カノの初体験を晒しあげて嗤う、この男の性根に反吐が出るくらいにムカついていた。
僕は運命として『ヤリティン』の天職を授かっているがその力を悪用しないように心がけている。
自制しているんだ。
なのにコイツは『ヤリティン』でもないだろうに『ヤリチン』として生き、周囲の人々に種と欲望を撒き散らしていて自重のかけらもない。
ふざけるな。
「テメェ! ぶっ殺してやる!」
モテ男がイキリたつと釣られるようにニーナとミーナも憎々しげな視線を僕にぶつけてくる。
「先生に向かって! なんと無礼な!」
「ぶっころされたいの〜〜」
「うるせぇえええ!! セフレどもは黙ってろ!!」
この世界にセフレなる言語はない。
教会の統治の元、清らかな暮らしを誰もが送っているという前提で世界が回っているからだろうか。
だが、あえて性に奔放な前世の世界の言葉を使ってでも罵りたくなるくらいにニーナもミーナも見苦しかった。
彼女たちが元からこうだったとは思いたくない。
きっとこのモテ男に教え込まれてしまった結果だろう。
そう考えると憎さ100倍だ。
「お前みたいな薄っぺらいヤリチンが人の教育なんてできると思うな。
エロ漫画みたいなことされてるだけの女なんか僕なら一瞬で倒せる」
「ほーーーう……大きく出たな。
クソガキ……
だったらやってもらおうじゃねえか!
ニーナ! ミーナ!
人殺しの鍛錬だ!!
今すぐこのガキを八つ裂きにしろぉ!!」
モテ男の怒鳴り声にニーナとミーナは言われるがまま従うようで、腰元の剣に手をかけた。
その時だった。
ガキッィィィィィィィィィィン!
レクシーが剣を納刀し、鍔と鞘を打ちつけた。
冴え渡るその音に臆したようにモテ男たちは動きを止める。
「……街の中で揉め事は起こすな」
静かに、だが強い意志を持ってレクシーは言葉を発した。
モテ男は怒りのあまり肩で息をしながらレクシーに話しかける。
「このままじゃ収まりつかないんだけど。
このガキがテメエの弟子じゃないなら黙ってろよ」
「たしかに……
今はあたしと少年の間になんのつながりもない。
だけど————」
レクシーは僕を見つめる。
期待するような、誘うようなその瞳。
元々、失うものなんてこの身だけ。
我慢ならない怒りを堪えるために何を惜しむ必要があるだろうか。
「ああ! 僕はレクシーの弟子になる!!
野蛮な喧嘩なんかじゃなくて然るべきところで正々堂々お前たちを踏み躙ってやる!!」
怒りに任せて僕は吠えた。




