137. スキル共有回だよ! 同級生ver
名前:聖天冠 望
職業:勇者
レベル:21
スキル:
基本スキル:
スラッシュ レベル3
スロー レベル1
スラスト レベル2
応急処置 レベル2
トーチ レベル3
武器スキル:
剣 レベル3
ハイスラッシュ レベル2
超速突き レベル1
魔法スキル:
光魔法 レベル3
ライトニング レベル2
勇者魔法 レベル2
魔法剣ブレイブソード レベル2
エクスヒール レベル1
ライフボム レベル1
破邪の結界 レベル1
その他スキル:
勇往邁進 レベル3
不屈 レベル2
魅了 レベル1
「あまりレベルが高くなくて申し訳ないのですが、私のスキル構成はこんな感じです」
望はレベルの事を気にしているが、新入生ならばこんなものだ。入学して以降、コンスタントにダンジョンに籠って戦っていれば普通はこのくらいのスキル量とスキルレベルになっている。望は例の薬の探索にも時間をかけているため戦闘漬けにはなっていないのと、勇者のレベルが上がり辛いということもあり平均程度に収まっていた。
「ザ・勇者って感じの構成やな。レベルは低いけれど、勇者魔法が強力すぎるからウチは特に言うことはあらへん」
この俯角の意見にダイヤが同調した。
「何でも斬れるブレイブソード強いですからね。でもライフボムは使わないでよね」
「必要となる時が来なければ使いませんよ。私は英雄の皮を被った自殺志願者でありませんから」
ライフボムは己の生命力を使って攻撃するスキルであり、使ってしまうと大半の生命力が持ってかれてしまう。いわゆる自爆技なのだが威力はかなり高く、レベルが上昇すれば高ランクのボスだろうが一撃だ。ただしレベルを上げるには使い込まなければならず、自爆系のスキルレベルが高い人はあたおか扱いされることが普通だ。
「エクスヒールはレベル一だと大した回復量じゃないんだっけ?」
「そうですね。現状だと下級ポーション程度の回復量でしかないので、当てにしない方が良いです。レベルが上昇すればあらゆる傷や状態異常が治る破格の効果になるのですが、レベルが上がる気配が全く無いのですよね……」
「勇者スキルはレベル上がりにくいらしいからね。特にエクスヒールは一年で一上昇すればマシな方って言われてるくらいだもん」
つまり大器晩成型の職業なのだが、ブレイブソードだけは多少レベルが上昇しやすく、それを使って鍛えろと言っているようなものだった。
「『破邪の結界』は防御系のスキルだよね?」
「はい。範囲内に魔物が入れなくなるスキルです。それと幻惑などの範囲異常を解除する効果もあります」
「やっぱりレベル一だからあまり効果は無いの?」
「そうですね。高ランクの魔物なら簡単に壊せるでしょう。ただし範囲異常に関しては時間をかければ解除可能です。異常レベルが高いと一時間とかかかりますが……」
「それでも無いよりは全然マシだよ~」
永遠に夢の世界に閉じ込められるなんて可能性が低くなるのだ。多様な回復手段を用意しておくべきで、『破邪の結界』はレベル一でも必要な場面が出てくるかもしれない。
「後目立つのは『勇往邁進』だけど、これはバフスキルだったかな」
「諦めずに立ち向かう限りはパーティー全員の精神力と運が少し上昇します」
「運が上昇するタイプのバフは他に無かったから良いね」
このスキルの効果で奈子の奇跡の発動確率が上昇するかもしれない。そう考えると破格の効果とも言えるだろう。
「望君は前衛かな」
「そうですね。ブレイブソードに注力してスキルレベルを上げたので、それでお役に立てるかと」
回復系は効果がまだ弱いため、攻撃に専念した方が望の現在の能力を一番活かせるであろう。
「それじゃあ次は私ね。と言っても知られているからわざわざ書く必要無いかな。それ以外に秘密スキルとか無いし」
次に名乗りを上げたのは密だ。密のスキルはすでに先の決闘の時に公開済なので自発的にカットした。
ポイントはショートソードの『二刀流』、自分と仲間の姿を消せる『朧』、行動スピードを上昇させる『疾風』、防御力無視の二刀流剣技『月光』、そして確率で相手を一撃で撃破する『即死』。
「『朧』の効果だけ確認して良い?」
「ええ」
「消えている仲間同士は視えるの?」
「今はまだ無理ね」
「そっかぁ」
だとすると微妙に使い勝手が悪い。消えた仲間が何処にいるか分からず連携を取れなくなるからだ。スキルレベルが上昇すればこの欠点は解除されるのだが、まだそこまでには至っていない。彼女も新入生なのだから当然か。
「『朧』は単独行動が必要な時だけ使うことにする」
「うん、そうだね」
そうやってフレンドリーファイアが起きないようにすべきだろう。
「他に質問が無ければ次へ行って」
密の合図で前に出て来たのは暗黒だ。暗黒はダイヤからスキルポーションを貰っているため、『精霊使い』でありながら基本スキル以外も覚えている。
名前:常闇 暗黒
職業:精霊使い
レベル:14
スキル:
基本スキル:
スラッシュ レベル2
スロー レベル3
スラスト レベル2
応急処置 レベル4
トーチ レベル3
武器スキル:
暗器 レベル1
関節破壊 レベル1
魔法スキル:
闇魔法
ダークフレイム レベル1
暗殺術
弱点看破 レベル1
急襲 レベル1
その他スキル:
復讐 レベル2
自己犠牲 レベル2
姿隠 レベル1
「長内さんより『隠密』っぽい気がする」
朧とは違い、自分の存在のみ消せる『姿隠』。それに『暗器』や『暗殺術』など、これで職業が『精霊使い』だなんて違和感しかなく、『隠密』や『暗殺者』の方が遥かに似合っている。おそらく転職したらそれらの職業が選べるに違いない。
密の戦士タイプに近いスキル構成と比較すると、確かに暗黒の方が陰な感じがして『隠密』らしい。
「た、確かにそうね……」
当の密は反論出来ないようでただただ困惑していた。
「いや、俺はただの復讐者だ。そんな立派なものではない。長内さんの方が断然素晴らしい」
「え?」
「俺が覚えたスキルは、これまでずっと脳内で思い描いていた復讐に必要なスキルばかりだ。決して褒められたものではない」
「…………」
己を虐めた奴らをどうやって殺してやろうかと、暗黒はそればかりを考えて生きて来た。弱点を見極め、急襲し、関節を潰して動きを封じ、隠し持っていた武器で、急所を一突きにする。いずれそうしてやろうと暗い炎を心に灯らせ、復讐を誓っていた。
その想いに答えたのか、それが実現できそうなスキルを覚えた。あるいはそのことしか考えていなかったため、そのスキルしか覚えられなかったと言っても良いのかもしれない。
自嘲する暗黒にダイヤはすかさずフォローを入れようとした。だがそれより先に密が言葉を投げかけた。
「ふん。どんな経緯があったにしろ、スキルはスキルよ。それ以上でもそれ以外でも無い。使う人が悪人ならレベル一のファイアだって人は殺せるわ。大事なのはそれをどう活かすかじゃないの?」
暗黒に向けて微笑みながらそう伝えた密は、何故か言い終わった後にさっと顔を反らした。
「(何やってるの私!フォローするにしてもあまりにもテンプレっぽくて胡散臭いわよ!)」
どこかで聞いたことがあるようなセリフを使って慰めようとしたことが恥ずかしかったらしい。
「…………」
肝心の暗黒は呆れることなく表情を変えずに無言で密の方をじっと見ていた。
「…………あ、ありがとう」
そしてこちらもまた別の意味で照れながらお礼を口にしたのであった。
「(何これ尊い!)」
女子から慰められて照れながらお礼を言う男子など、なんて尊いのかとダイヤは脳内で悶えていた。もちろん音や奈子などの女子組はダイヤ以上にニマニマしていた。
お互いに照れ合う同年代の男女。もちろんそこにはまだ単なる気恥ずかしさ以上のものは無いが、これをきっかけに何かが始まるかもしれない。同級生達がそんな予感を抱く中、先に冷静に戻ったのは暗黒の方だった。
「似たようなスキルを持っている者同士、色々と教えてくれないか?」
「え?」
ナンパにも思えなくは無いが、恐らくは素の行動だろう。単に強くなるために声をかけただけ。
「もちろん模擬戦という形式でも構わない。全力でやってくれて良い」
「……私は甘くないよ」
「望むところだ」
「言ったわね!」
暗黒の強くなりたいという純粋な想いに密も気付いたのだろう。芽生えかけていた何かは消え去り、良きライバルが出来そうだという予感にワクワクしてしまった。
「(二人がどうなるのかはこれからだね)」
師弟関係となるのか、戦友となるのか、あるいは恋心が芽生えるのか。
これもまた青春の一ページということで、クランメンバーの今後の様子を楽しみにするダイヤとヒロインズであった。
暗黒のスキルの内容は有名なものばかりであるからか、追加の質問は出なかった。スキルに詳しくなくても名前から分かるものばかりだからというのもあるだろう。名前から類推しにくいのは『復讐』スキルと『自己犠牲』スキルであり、『復讐』スキルはダメージを受けると次の攻撃の威力が上昇するというスキル。『自己犠牲』スキルは誰かの危機を自発的に肩代わりするとステータスが上昇するというスキルだ。
「じゃあ次は朋のスキルを僕が説明するね。つい最近聞いたんだ」
朋は絶賛青春中であるため、ダイヤが代わりにホワイトボードに記載した。
名前:見江春 朋
職業:精霊使い
レベル:21
スキル:
基本スキル:
スラッシュ レベル4
スロー レベル1
スラスト レベル2
応急処置 レベル1
トーチ レベル2
武器スキル:
剣
ハイスラッシュ レベル4
斧
パワーアタック レベル1
槍
ハイスラスト レベル1
盾
シールドバッシュ レベル1
魔法スキル:
なし
その他スキル:
鈍感 レベル3
友情補正 レベル2
異剣使い レベル3
異槍使い レベル1
辺幅修飾 レベル2
不屈 レベル2
「え、弱……」
「長内さん、そういうところだよ」
「そ、そうよね。ごめんなさい」
すぐに自分を基準に上下を判断してしまうところが彼女の悪い癖だ。治したいと思っているそうなので、そういう場面が来たらクランメンバーが指摘してあげることになっている。
「ですがダイヤ君。彼女の心配もあながち的外れではありません。このスキル構成ではついていくのはきついのでは?」
同じ『精霊使い』である暗黒のスキルも決して強くは無いが、彼は精霊の力を借りて闇を生み出せるという大きな特徴がある。本人は無茶をして前には出ないと発言していることもあり、今回のような疑問は生まれなかった。
では朋にも暗黒と同じスキル一覧だけでは計り知れない何かがあるのだろうか。
「そうでもないよ」
ダイヤはそもそも公開したスキルだけでも戦力になると判断していたのだった。
「ポイントは『異剣使い』。これは特殊な魔剣を使いこなせるスキルなんだけど、この武器に何を選ぶか次第でぐっと強くなると思うんだ」
「なるほど、魔剣ではなく異剣ですか。面白いですね……」
そして『異槍使い』のスキルもあることから、他のネタ武器も扱えるようになる可能性がある。
「面白い武器なら調査中に山ほど見つかっとるで。使いたい奴がおらへんで倉庫の肥やしになっとるねん。持ってこよか?」
「良いのですか?」
「かまへん。邪魔だから処分したいくらいや。大した売値にならんもんが大半やからやるわ」
「ありがとうございます!」
その武器次第で朋が戦力になるかどうかが決まるだろう。
「『鈍感』スキルで状態異常耐性があり、『友情補正』スキルで友達の僕がいるからステータスが上昇して、『辺幅修飾』は相手を脅かす効果がある。これらはスキルレベルが低いから今回はあまり役に立たないかも」
唯一有効なのは『友情補正』だろうが、他の人がステータス上昇系のバフスキルを持っているため無くても構わない。やはりどのような武器が見つかるか次第だろう。
「朋は強敵と戦う時の心得を理解していて、実際に生き延びた経験もある。武器次第ではかなりの戦力になると思うよ」
「だとすると前衛候補として考えましょうか」
「うん」
後で本人に確認する必要はあるが、スキルの内容的に後衛や中衛ではやれることが無いため、前衛として頑張るつもりで参加しているはず。異論は無いだろう。
スキル共有。
残るはダイヤとヒロインズだ。