ヒロインから悪役へ
魔法帝国ペルシナには火・水・土・風・雷・闇・光の6つの魔法がある。
全ての人には魔法適性があり、希少な魔法を持つものは国で保護され、特に光属性の人は聖女・聖人として崇められる。
私はミライ。
自然豊かでみんなで助け合って生活をしている小さな農村出身だった。
おばあちゃんとおじいちゃんに支えられて、大変でも楽しかった。
しかし、15歳の魔法適性を調べたところ希少な光属性だとわかり、貴族だけが通える魔法学園に通えることになった。
いくら希少な光属性だとしてもそれまで生きてきたのは小さい村なため、染み付いていた癖を治すこともできず、ついつい無作法な行動をしてしまった。例えばタメ口で初対面の人に話しかけてわいわいやったり、王太子だと知らず啖呵を切って勝負をけしかけたり、自然豊かな学園で村でのことを思い出し近くの木に登ったり、お菓子を作ってみんなに分けたり…etc.
すると何をやっているわけでもないのに、平民のことが珍しいのか、いろいろな男の子が寄ってくるようになった。王太子のセドリックのセド、騎士団長の息子のダミアンのダン、魔法局長の息子のアントスのアス…などなど。
小さい農村では女子男子関係なく自由に遊んでいるため、特に何も思わず彼らと遊んでいた…つもりだった。
そのうち何故か嫌がらせをされるようになった。何故に?
私は普通に遊んでいるだけなのに…。
でも、私は気づいたの!
運命っていうのがあるってことを!
いつも通り平民のくせにって言われてたら、セドが来てくれて、庇ってくれたの!
それまでただの友達だと思ってたけど…セドってこんなにもかっこいいんだね…。
でも嫌がらせは続いたの…。
特にセド(王太子)の婚約者らしいセレーナ公爵令嬢などは直接「セドリック様と関わらないでくださいませ!」とか言ってきたのだ。でも、セドとセレーナさんは政略結婚らしいじゃない?恋愛も自由にできないだなんて、セドがかわいそう!あと、いじめられてる私かわいそう…。はぁ、本当になんて不憫なんだろ私…。
そんなことをやってたら、あっという間に学園卒業になった。
そして、卒業パーティで、やっと、やっと、私の王子様になったの!
「セレーナ公爵令嬢!私、セドリックはお前との婚約を破棄する!」
「お前の悪事はもうバレバレだ!ここにいる聖女をお前はいじめていただろ?!証拠は出揃っているんだ!」
「んな!?わたくしはやっておりませんわ!それはそこのアバズレ女が勝手に作り出した嘘の証拠でなくて!?」
「アバズレだとお!?聖女のことをそんなふうにいうだなんて…処刑だっ!」
「そんなっ!セドリック様はその女に騙されているのですわ!」
「うるさい!…さて、聖女、いや、ミライ…私と、結婚してくださいませんか?」
「セド…もちろん!」
「この悪女があああああああ!!!わたくしの、わたくしの、セドリック様に触るなああああ!!!」
「悪女はお前だ、セレーナ!!」
「いやあああ!わたくしが、わたくしが、何をしたっていうのよ!ただ、ただ、愛されたかった、それだけなのに…。わたくしにはそれが許されないのですか?神様!」
「死刑を、執行する」
私はセドの隣で王太子妃としてそれを見ていた。
私のことをいじめたセレーナはキッと私を睨めつけた。
「…っ!こ、怖い…」 あぁ…なんて可哀想な私。
「大丈夫か、ミライ。私がお前を一生守ろう」
「セド…」
こうして、敵は処刑された。
私はそれから王妃教育を頑張ってうけて、完璧な王太子妃…いや、王妃になって、幸せに暮らした。
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「……で!あぁきも………い子。お前は…………!」
何?なんなの?私は天寿を全うして…どうなっているの?
だんだん声が、聞こえt「気持ち悪い」
…え?今なんて?
「なんて悍ましいの!?」
…………は?私は聖女よ?なんで…
「奥様!しっかりなさってください!」
「早く、早くこの怪物を捨てて!」
「…でも…っ!?旦那様…!?」
「…なんだ、これは?闇属性…だと?」
「…っ…はい、そうですね」
「…奥に閉じ込めておけ。名前は…まあ無難にセレーナとしとこう。この公爵家の恥晒しが!」
セレーナ?公爵家?…まさか。
「てん…しぇい…?」
「っひ!?!?しゃ、しゃべっ!呪われてる…なんて呪われている子なの!?」
…拝啓、田舎のおばあちゃん。
私は天寿を全うした後に私をいじめたセレーナ公爵令嬢に転生したようです。
んで、私は闇属性だから家族に嫌われているらしいです。
…まぁ、でも、田舎の暮らしよりも贅沢な暮らしができそうだね!やっぱ公爵令嬢だもんね〜。
と、思ってた時期が私にもありました。
屋敷の奥に閉じ込められ、食事はほぼ残飯。たまにくる母親(だと思いたくない生物)とメイドが暴力を振るい、それも服の裏になるようなところだからたまに外に出る時には誰もそれに気づいてくれない。服もたまに外に出る時だけ豪華で重くて動きにくい服を着せられ、普段はボロ雑巾みたいな服を着せられる。屋敷の奥でずっと掃除をさせられ、嘲笑われ、心身ともに傷ついていく日々。
…こんなの知らない。私は、私は、今まで自分が一番可哀想って思ってきた。
田舎で不便な暮らしをしてきて、それでも楽しかったのに急に学園に連れてこられて、恋をしたらいじめられて。
でも、でも、それでも、みんな私を愛してくれた。
セドもダンもアスも田舎のおばあちゃんおじいちゃんも国のみんなも、前王…今の時代では現王にも現王妃にも可愛がられて…。
その時、私は思い出した。
セレーナの最後の言葉を。
「わたくしが、わたくしが、何をしたっていうのよ!ただ、ただ、愛されたかった、それだけなのに…。わたくしにはそれが許されないのですか?神様!」
そういう、ことだったのか。
私は全然可哀想じゃなかったのか。
とっても幸せだったのか。
…私は、私は、何にも知らなかったんだ…。
こうして、私はこの世というものを知った。