1/1
これは、一人の少年の物語
白い建物。
何も無い、日の光の侵入さえ許さない部屋で、少年が一人座っていた。
着ていた実験着は古いものだったが、少年は気にする様子もなかった。
その部屋に扉が現れ開くと、そこから一人の女性が現れた。「やあ」「...誰?」 少年は女性に見覚えが無かったので尋ねた。「私は■■■だ。君は?」「......分からないよ。僕の名前って、あるの?」「......ああ、そうかい...」 女性は悲しそうに少年の名前を呼ぼうとした。だが、その瞬間、とある放送が流れた。
「0729番、時間だ。部屋を出ろ」
少年は、「呼ばれたから行くね」とだけ告げて部屋から出ていってしまった。」
この施設では少年のことを番号で呼ぶようになっているのだ。そして、部屋から出ていった少年を見て、女性が呟くように言った。「このままで...良いのだろうか?」
それから数年後、『名前の無い怪物』と呼ばれる存在が誕生するのだが、それはまた後でお話しようと思う。