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Battle against adversity ⑤

 高槻ビートグリズリーのホームグラウンドでは二軍メンバーが一週間後の試合に向けて練習をしている。鋼鉄の肉体を動かす彼等の中の幾人かは、慣れない新操縦システムに対応したばかりでまだ動きがぎこちない。

 様子を見に来ていたオーナーの九重弘樹は若干苦い顔をしていた。

 

「ほんとに練習に間に合うのか?」

 

 中年の監督に尋ねた。

 

「ある程度は形にしてみせますがね、使いこなすにはまだまだ時間が足りませんよ。まあ新設チーム相手ならいいハンデにはなると思いますが」

「あまり相手を見くびるな、あそこには上邦炉夢が認めた上原宇佐美がいるんだぞ」

「聞いていますよ、でずが彼以外はズブの素人と聞きます、ラフトボールは一人でやるスポーツではないので大丈夫では」

「残り二人の情報はまだ無いんだ。油断してると足元を掬われるぞ」

「心得ております」

 

 これ以上言っても無駄と判断したのだろう、弘樹は踵を返してホームグラウンドから出ていった。

 

「これが終わったらクビだな、あんなのに任せていてはいつまでも二軍は育たん」

 

 実際、二軍の監督は評判が悪かった。

 弘樹は端末を取り出してある所へメッセージを送る。

 

『やはりお前を二軍に入れる必要がありそうだ』


 それはとある一軍メンバーへのメッセージだった。名前は野中陽子、彼女はメンバーの中でも特に実直で、弘樹の指示に一番従順な人物であった。

 返事は五分程で返ってきた。

 

『かしこまりました』

『機体はこちらで用意した物を使ってもらう、例のコントローラー操縦システムを導入したやつだ』

『了解です、慣れるため三日程シミュレーター訓練に籠らせてもらってもよろしいですか?』

『わかった、監督にはこちらから話を通しておく』

『ありがとうございます』

『くれぐれも油断はするな、相手を素人集団と思って侮ると痛い目をみるぞ』

『心得ております』


 先程の二軍監督と同じ言葉で締められたが、こちらの方が遥かに信用できる。彼女は実際に素人相手でも練習以外で手を抜く事は無く、また格下相手に敗北を喫した経験もあるので、どんな相手でも油断はしないと心に決めている。

 それゆえ信用できる。

 

「さて、残り二人のメンバーの情報は無いのか」

 

 どうやら妹の祭は徹底して情報の管理を行っているようだ、おそらく試合直前まで知ることはないだろう。尻の青い子供だと思っていたが、妹もいつの間にか成長しているらしい。

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 インビクタスアムトのメンバーもまた、来週の試合に向けて戦術を練っているところだった。今はビートグリズリーの過去の試合動画を見終わったところである。

 

「これが今年最後の試合映像よ」


 祭が停止ボタンを押した。見せられたのはビートグリズリーの今年最後の試合、それも一軍のものだ。戦う相手は二軍なのに、どうして一軍の映像を見せられたのか。理由は二つあって、単純に二軍の映像が手に入らなかったのと、一軍メンバーの中に要注意人物がいるからだ。

  

「気をつけるのはこのタイトエンドの機体よ」

「他との違いがわかりやせんね」

 

 確かにそうだ、炉々の言う通りビートグリズリーの機体は同一機体で統一されており、それぞれ番号と装備で違いを確認しないといけなかった。

 インビクタスアムトが個性的すぎるだけでもあるが。

 

「背番号一六番、搭乗者は野中陽子。彼女は基礎に忠実であらゆる状況に対応してくるわ」

「私のネコチャンで奇襲しても?」

「直ぐに対応するわ」

「うへぇ」

 

 よくよく思い返してみても、確かに先程の映像で彼女の機体は素早く事態に対処していた。また守備についているので対峙する時は一対一になる事が多い。そうなると彼女は止められない。

 

「付け入る隙があるとすれば、彼女が手を出せないロングパスでタッチダウンをとるか、地道に複数人で取り押さえて機体を破壊するしかないわ」

 

 映像でもそうしている対戦チームが多かった。

 だが一つ疑念がある。

 

「あの九重さん」

「なにかしら? 宇佐美君」

「この人一軍のエースなんですよね? 僕達が戦う二軍にはいないんじゃないですか?」

「甘いわね宇佐美君、あたしの兄貴は性格がねじ曲がっていて世界で一番汚くて汚くて汚くてゴミみたいなデブなのよ、一軍メンバーを二軍にねじ込むぐらいさらっとやってのけるわ」

「怨念強すぎない?」

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