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Bird Scramble ⑫

 観客席では宇佐美側が先制点を取ったことで歓声が起きていた。

 

「よっしゃあ! 心愛が先制点とったで!」

「悪くない作戦じゃないか、祭もそう思うだろ?」

 

 突然恵美から作戦の是非を問われて祭が戸惑った表情をみせるが、直ぐに引き締めて小さく息を吐いた。

 

「でも二度目は無いわ、人数が本来の十三人ならまだしも、たった三人だととれる戦術の幅が狭くなってジリ貧になっちゃうもの」

「そういう意味では有利なのは宇佐美達といえるねぇ」

「せやせや、宇佐美らを信じたらなあかんで」

「そうね、そう……ね」

 

 元気なく呟く祭、視線は他のメンバー同様にモニターを向いているが、その想いは別のところにあった。

 誰にも聞かれないよう小さく、鳥の囀りのより小さく祭は囁く。

 

「なんであたしが選ばれなかったのよ」

 

 その心中は対戦メンバーに選ばれなかった事の悔しさと怒りで煮えたぎっていた。

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 『う、上手くいって良かったぁぁぁ』


 宇佐美と漣理のスピーカーに心愛の声が響き渡る。彼女が発案した戦術だから余計に緊張したのだろう。そんな心愛の安堵を理解している二人は軽くほくそ笑んでからディフェンスポジションにつく。


『次はディフェンスだよ。さっきはレオニダスに僕らがまとめて倒されてしまったから、まずはレオニダスを何とかする方向でいく?』

『ボクが何とか抑えるから、宇佐美がリリエンタールを抑えるとかはどうかナイル?』

『無理して語尾つけなくてもいいよ』

『あ、あの私そろそろアレを試そうと思うんだけど、いいかな? やっと使えるようになったし』

『あぁ、アレか。じゃあ貴族君がレオニダスを抑えて、僕がその間にリリエンタールを止める、失敗したら水篠さんが止めるて感じで』


 否定する意見は無かった。

 最前列にいるTJが準備完了の合図を送る。遅れてレオニダスも同じ合図を送って試合開始となった。

 当初の作戦通りまずTJが前に出てレオニダスを牽制する。流石に二回の攻防で学習したのかしっかりフェイントを入れた事で今度はちゃんとレオニダスに組み付く事ができた。

 

『あら、やるじゃない』

『いえいえ』

 

 レオニダスを封じれたのならあとはリリエンタールを倒すだけだ。ハミルトンは全力で駆けてリリエンタールと距離を詰める。

 ブースト点火してタックルてなった時、心愛から通信がとんでくる。

 

『宇佐美後ろ!』

『え?』

 

 振り返った瞬間目の前に大きな板のようなものが広がっていた。慌てて手を上げてガードして衝突に耐えるが、完全に動きが止まってしまった。見下ろすと飛んできた板はレオニダスの盾だった。

 そして止まった瞬間を逃す筈もなく、リリエンタールが片手でハミルトンの頭を掴んで足払いした。

 あえなく倒されたハミルトン。

 

『水篠さん! そっちに行った!』

『う、うん!』

 

 クリシナに迫るリリエンタール、実力差は圧倒的で直ぐに勝敗がつくと思われたが、突如リリエンタールが足を滑らせて転倒したのだ。

 これは別にリリエンタールがドジしたわけではなく、クリシナに装備されていた遠隔操作型の妨害武器で足をすくわされたからだ。三ヶ月もの長い訓練を経てようやくモノにした水篠心愛の武器である。

 

『やった! どうだ! 私のネコチャンは!』

 

 この遠隔操作型妨害武器、形状が猫なので名前がネコチャンとなっている。

 

『だめだ水篠さん! まだ終わってない!』

『うえっ』

 

 ルールはボールが地面についたら攻守交代、転んだ時リリエンタールは咄嗟にボールを持ってない方の手で受身をとって背中から着地、直ぐに起き上がって足に貼り付いたネコチャンを剥がして遠くへ投げてから走り出した。

 慌ててネコチャンを操作するも間に合わず、クリシナはリリエンタールのタッチダウンを許してしまった。 

 

『ごめんなさぁい』

『いいよいいよ、やっぱり一筋縄じゃいかないね』

『しかもあれでブランクありだから恐ろ信濃川』

『語尾が変わった』

 

 次の攻撃で宇佐美達は失敗し、続く防衛でもまたリリエンタールの侵入を許して点を取られてしまった。

 一対二でいよいよ後が無くなってきた。

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