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Bird Scramble ③

「そろそろかな」

 

 美浜市の玄関口とも言える国道沿い、かつて都市開発を行おうとして無理な道路工事をした名残で不自然に出来上がった駐車場に、瑠衣と炉々が来ていた。

 目的は本日来る予定の新メンバー候補のお迎えだ、ラガーマシンを持参するらしく、トレーラーで来るらしい。普通車ならともかく、大型車両では通れる道が限られているのでその案内に免許を持っている瑠衣と、クジ引きで決めた炉々が担当となる。

 須美子が悔しがっていたのは当然である。

 

「ドスコミちゃんには悪いでありやすが、あっしとしては新メンバーをいち早くまみえるチャンスを逃したりはできねぇでやつでさぁ」

「誰に言ってるの?」


 メタ発言である。

 

「もしかしてあれかな」

 

 瑠衣が指差した方向、はるか先の道路を大型トレーラーが走っているのが見える。

 

「多分そうでありやしょうね」

 

 そうこうしてるうちに大型トレーラーが目の前にきて駐車場に入る。この駐車場はただ白線がしかれてるだけの無料駐車場なうえ、玄関口とはいえ山沿いにあるので誰もここに停めたりしない。

 

「ナンバープレートが姉御から聞いてた番号と一致しやす、間違いねえでやす」

 

 ゆえにトレーラーは瑠衣の案内のもと適当に駐車した。

 トレーラーから運転手と付き添いらしき人が降りてくるのを確認してから、瑠衣と炉々はトレーラーへ近付く。

  

鳥山厚(とりやまあつし)さんと影浦大蔵(かげうらたいぞう)さんですね、お待ちしておりました。インビクタスアムトの白浜瑠衣です」

「はいはいはーい! あっしは武者小路炉々でありやす!」

 

 来年には就活を始めるからか既に社会人としての対応を見せる瑠衣と、無邪気に元気よく挨拶する炉々であった。

 対する二人は流石の大人ゆえ、落ち着いた雰囲気のまま。

 一人はスーツをピチッと着こなし、細いフレームのメガネをかけた理知的な雰囲気の男性であった。ワイシャツの襟もキッチリたっていてこまめにアイロンをかけている事が伺える。

 

「この度チームに招かれた鳥山厚です。祭お嬢様がいつもお世話になっております。また、わざわざのお出迎えに感謝します」

「あら、迎えに来てくれたのがこんなに素敵な男の子だなんて思わなかったわ、ねえあっちゃん、あたし化粧崩れてないかしら?」

「いいから名乗れ」

 

 先程の落ち着きが一瞬ナリを潜めて怒り心頭の厚。

 怒りを向けられたもう一人が、厚とは違ってレディースのレギンスパンツと白いTシャツといった実にラフな格好の男性である。化粧をして口に紅を塗っているため女性のようにも見えるが、間違いなく骨格は男性のものだ。

 

「はぁい、あたしが影浦大蔵よ。気楽に可愛くウラて呼んで頂戴な」

「あ、はあ。よろしくお願いします」

 

 流石の瑠衣も戸惑う。


「ああ、すまないが早速案内してもらえないだろうか?」

「ええ、この車についてきてください」

 

 助け舟とばかりに厚が話題を変えたおかげで、瑠衣もこれ幸いとのっかって自分の仕事を行うことに注力できた。

 移動中、車内で炉々はこんな事を呟いた。

 

「しっかしこれまた癖の強そうな人が来やしたねぇ」

 

 炉々も中々癖が強いではないかと瑠衣は思った。

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 瑠衣達が戻った時、インビクタスアムトのメンバーは休憩時間に入っていた。入っていたのだが。何故か三機程が休憩時間に筋トレをしていたのだ、ラガーマシンで。

 ラガーマシンでスクワットをし、ラガーマシンで腕立て伏せをしている。

 

「なにしてるんですか?」

 

 トレーラーを駐車場にいれた厚が、真っ先に見えた光景で呆気に取られているのは当然ともいえよう。

 

「いつもの事なので」

「気にしない方がいいでありやすね」

 

 見慣れている二人としてはその謎めいた光景を、まるで家にあるタンスのように当然という風でスタスタと中へ入っていく。

 やや戸惑いつつ厚と大蔵も付いていく。その傍らでは変わらずラガーマシンがスクワットしていた。

 

 余談だが、すぐに整備士長が「機体に無駄な負担かけるな!」と怒鳴りこんで、筋トレしてた一部パイロット達が締めあげられた。

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