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Carnival Robotech ①


 宇佐美が見つめる先にある端末の画面では、星琳大学ラフトボールサークルとの試合映像が流れている。

 入院中に何度も見返したこの映像では、今まさに武尊のラガーマシンであるアリがボールを持って敵陣地へとくい込んで行くところだった。そのアリの周りをクレイとクイゾウとT.Jの三機が固めてガッチリ守っている。

 

 このまま強引に突破しようとしたのだが、星琳チームの守護神ライドルが棒を高速で突き出してクレイを打ちすえる。続けてクイゾウとT.Jも目にも止まらぬ速さで沈めていった。

 その間にアリはライドルの死角から抜けようと画策し左から走り抜ける。

 

 ただそこはライドルの方が一枚上手、目前にアリがいないのを確認するとカメラすら動かさずにすぐさま死角を打つのだった。

 おそらくほとんど賭けだったのだろう。

 賭けはライドルの勝ちだった。ボールこそ奪えなかったものの、アリの足を止めたのだ。

 

 なんとかライドルの棒を躱したアリではあるが、足を止めた瞬間に他の星琳機によって押し倒されてしまった。

 

「ふ〜む、やっぱり」

 

 形としてはアリの敗北なのだが、宇佐美はそこに何かを感じていた。そしてそれを裏付けるかのように、他の星琳チームの試合を観ていく。

 残念ながらライドルの出場した試合で映像記録が手に入ったのは二つしかなく、比較するには少し物足りなかった。

 

「他の試合ではライドルを抑えてからエンドラインに向かってるなぁ、やはり一対一は避けるのがベターか……あれ? じゃあタイマン仕掛けた僕って」

 

 それ以上は考えない事にした。

 

「アリだけなんだよね……うーん、アリの性能がというより武尊が、かな。武尊が持ってて僕等に無いもの……あ、あれかな……いやそうだきっと! よし」

 

 急がば最短でジェット機使って駆け抜けろということわざがあるように、宇佐美は早速思いついた事を実行すべく武尊へと連絡をとる。

 コール四回の後、武尊との通話が可能となった。

 

「あ、武尊? 僕だけどさ……うん、退院は明日だよ……そう、それでさ、たなびたいことがあるんだ」

 

 どこぞの非常に描きやすい宇宙人のような頼み方をして通話は続く。

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 同日、美浜市郊外のラフトボールフィールド横のプレハブ小屋にて、事務所の机にぐったりとへばりついて九重祭は溜息を深く吐いた。

 

「あぁ〜〜やっと書類整理終わった〜〜。もう嫌だやりたくない。一生分の脳みそ使った」

 

 ここしばらくは来月の予算案と整備スケジュールの組み立て、練習スケジュールの組み立て、それとコーチ候補への依頼などの事務作業に追われていた。

 元々学力の無い祭にとっては一つ片付けるのに多大な時間を用する。

 

「決めたわ……事務員を雇う、経理ができる事務員を! ていうか最初からそうすれば良かった」

 

 ハァとまた溜息を吐く。

 ふと、その時カレンダーが目に入った。8月のカレンダーにはお盆前に◎でチェックされた日がある。

 

「あー、そういやあと一週間ちょいぐらいか」

 

 その日は上原宇佐美と白浜瑠衣の一騎打ちがある。

 ここまで時間が掛かったのには、宇佐美の入院やら、両者のスケジュールやら、解散した星琳チームの機体の確保やらが手間取ったからである。

 

「一騎打ちかぁ……それで終わるのもつまらないわよねぇ…………おっ、ひ〜らめいちゃった〜」

 

 ウシシと悪い笑みを浮かべながら祭は固定電話(何故か黒電話)の受話器をとる。そしてダイヤルを回して彼女は祖父へと繋げた。

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