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Robotech Touchdown ─ロボテック タッチダウン―  作者: 芳川 見浪
第十一章
100/137

Merry Merry Merry ①

 時はクリスマス……の少し前、この日、インビクタスアムトの高校生組は大きなイベントが発生していた。そう、期末考査の結果発表である。

 夏の期末考査の時は赤点四天王なる組織が出来上がってしまうほど高校生組の成績は悪いものだが、流石に多少は成長したと思われる。

 中間考査の時は赤点でもペナルティは無かったのでスルーしていたが、期末考査の場合は赤点をとろうものなら補講が待っている。

 

「赤点だったわ!」

「ワイもや!」

「高貴なる僕がまさか高貴なる赤点とは」

 

 インビクタスアムトの会議室にて、三人が謎の自信と共に赤点を宣言した。

 

「だが問題ないわ! 今回は赤点四天王四人目候補の涼一君がいるのだから!」

 

 むしろ問題だらけなのだが、その辺のツッコミはしない方が良さそうだと赤点回避組が一斉に同調する。それどころか距離を取り始めた。

 

「あっし、前回襲われやしたし」

「返り討ちにしたけどね」

「自分、念の為クイゾウできておいたっす」

「頼りにしてるよ」

 

 前回の事を踏まえて身構える宇佐美と炉々とクイゾウ、新規参戦組の心愛と涼一と澄雨はわけがわからないという顔をしながらおずおずと点数表をテーブルの上に置いた。

 まずは心愛だが、平均五十点と全体的に点数は低めだが、赤点ではない。むしろバイトと練習を掛け持ちしながらよくとれたものだ。

 次に澄雨、なんと全教科九十点台と非常に優秀。文句無し言う事無しだ。

 最後に期待の新星涼一、赤点四天王候補の彼の点数は。

 

「ぜ、全教科百点やと?」

「う、嘘でしょ? ゼロが一つ多いんじゃない?」

「ぼぼぼぼボクの五百倍の点数!!」

 

 漣理の計算は色々とおかしいが、実際涼一の点数は事実であり、彼は言動に反して非常に頭が良かった。

 

「我、特に何もしていないが」

「嘘や! 絶対裏でめちゃくちゃ勉強しとるで!」

「いや武尊、それむしろ褒めるべきところだよ」

「兄さん、家での勉強は教科書読み返すだけで三十分もしてませんよ」

 

 勉強時間のマウントは不毛だからここまで。

 

「まあつまり、赤点四天王は三人だけてことね」

「あかん、健二が抜けたのが痛いで」

「しかし奴は赤点四天王の中で最弱、全く赤点四天王の面汚しよ」

 

 赤点四天王という肩書きそのものが面汚しなのだが。

 さて件の健二だが、実はこの時宇佐美と健二は期末考査の話をしており、宇佐美は健二の期末考査の結果を知っている。

 

「ちなみに健二は向こうの学校で赤点とったんだって」

「「「赤点四天王の友情は不滅だ!!!」」」

 

 と赤点四天王の結束が強まったが、翌日から彼等は補講のためまるまる二週間勉強漬けとなってしまったのは言うまでもない。

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 クリスマスになると活気付く人がいる。サンタさんを信じる子供達、子供の夢を守ろうとする親達、かきいれ時と意気込むケーキ屋、エッチなイベントを開催する風俗店等々。クリスマスというだけで様々なイベントがある。

 そしてここにもまたクリスマスイベントにかこつける人がいた。

 

「きょ、今日は来てくれてありがとう!」

「須美子ちゃんからのたってのお願いだからね」

 

 碇須美子、この日、意中の人である白浜瑠衣をクリスマスデートに誘うことに成功していたのだ。これには須美子応援クラブ会長の炉々も大はしゃぎ、心愛も巻き込んでデート衣装などを用意したりしていた。

 だがこのお誘いには罠がある。実はこの日インビクタスアムトのメンバーでクリスマスパーティをする事になっており、須美子はその買い出しという名目で瑠衣を誘ったのだ。つまり瑠衣は甘酸っぱい気持ちでここには来ておらず、あくまで買い出しのために来ているため二人の気持ちはズレている。

 

「それじゃ行こうか須美子ちゃん」

「は、ははははい!」

 

 横並びになって街を歩く男女、隣を歩いている瑠衣には悪いが、須美子本人としても周りから見ても全く釣り合わない二人だった。方や細身のイケメンで、方や肥満体型の女性。並んで歩いても恋人には決してみえない。

 それゆえ自然と須美子の足は重くなっていき、ついには瑠衣と二メートル以上離れてしまった。

 須美子の異変に気付いた瑠衣が駆け寄り心配そうに尋ねる。

 

「どうしたんだい?」

「いえ、あの」

「歩くのが速かったね、ごめんね須美子ちゃん。ほら手を繋ごう、そうすれば大丈夫だから」

 

 そう言って瑠衣は澄子の目の前に自分の手を差し出した。指にレバーを握る事でできるタコがある。指先はスイッチ操作で硬くなっている。典型的なラガーマシンを操作してる者の手だ。

 自分も同じ手をしている。

 お互いの手を結び合わせ、再び二人は歩き出した。

 瑠衣は釣り合う釣り合わないなど考えもしない、それは買い出しだからというのもあるが、彼自身の本質がそうなのだ。ゆえに須美子はそんな瑠衣と本当の意味で釣り合えるよう努力しようと心に硬く決めたのだった。

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

「やあ九重さん、今帰り?」

「ええそうよ、宇佐美君は今から行くの?」

「うん」

 

 宇佐美がクリスマスパーティの会場へ向かう途中で祭とバッタリ出会った。彼女は補講が終わって今帰る所なのだそうだ。

 

「せっかくだから一緒に行きましょ? 目的地は同じなわけだし」

「そだね」

「でも先にコンビニ行って来るわね、ちょっと手が冷えちゃったからホットドリンクでも買ってくる」

「行ってらー」

 

 近くのコンビニへ駆け込んで行く祭を見送り、宇佐美は付近の建物の壁に寄りかかって待っている。ふと宇佐美の目にブティックのショーウィンドウが写った。それを眺めて何か思いついたのか、ふら〜と店内へ入りある物を購入した。

 元の場所に戻ると既に祭が待機しており、宇佐美を見つけるとぷくーと頬を膨らませて怒りを顕にした。

 

「ちょっと宇佐美君どこに行ってたのよ!」

「ごめんごめん、これ買ってて」

「何これ?」

「クリスマスプレゼント、九重さんに」

「ふぇ、ありがとう」

 

 あまりにも直球で言われたからか、祭の頬は膨れ面から照れからくる赤面へと変わっていた。宇佐美から受け取った袋を開けて中の物を取り出す。

 

「手袋?」

「うん、流石にこの時期に素手は寒いし」

 

 付けてみると暖かい。よくみるとレース状の模様があり、今着用しているコートとマッチしている。

 

「ありがと、うん暖かいわ」

「それは良かった」

「それに可愛いデザイン、宇佐美君センスあるわね」

「ほんとに?」

「ほんとほんと、ナイスセンス」

「やったね!」

 

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