初対面の王太子殿下に真実愛する人がいるから、お前を愛せない。お前も勝手にしてくれといわれたので、庭を勝手に改造して、自分の趣味に没頭してしまった悪役令嬢のお話。
「私には真実愛する人がいる、だからお前を愛することはできない」
「はあ」
「だからお前も勝手にしてくれ」
初対面でこんなことを告げられたら、返答に困りますわよ。
私は王太子殿下の婚約者に選ばれたアイリスといいます。
公爵令嬢である私は、王宮に婚約者となった殿下にあいさつにきていきなりこう言われました。
私は王太子妃教育をうけにこちらにやってきたのですが……。
とうの王太子殿下がこれで私を放っておくので、完全に私は無視された状態で、使用人も誰一人として連れていくことが許されなかったので少し困っておりました。
お部屋さえ用意されず、困っていましたが、なかなかよさそうな場所がありましたので、そちらに住むことにしたのですわ。
割と快適にしあがったのでよしとしましょう。
「ふんふーん」
「……これはいったいなんなのだ!}
「いえ、勝手にしろといわれたのでしたのですわあ」
「ここにはなにもないはず…」
殿下がいきなり現れて、私が鼻歌を歌いながらバラに水をやっている光景をあんぐりと口を開けてみておりますわ。
取り寄せた器具で水をまいているだけですわあ。
「……どうしてこんな立派な家に!」
「白い壁に赤い扉、かわいい赤いお屋根、素敵ですわよねえ」
「いや材料……」
「召喚しましたの」
「はあ?」
「召喚してとりよせましたの」
私は召喚師、それを忘れていたようで、殿下がものすごく驚いています。勝手にしろと言われたので魔法研究をしていたのですけども。
とりよせて、組み立てて、組み立てるのは私がやりましたのよ。
「レンガ、レンガじゃなくてこれは!」
「さあ、何の素材でしょうかしら、私にもわかりませんわ」
焦る殿下、私も取り寄せている材料が何か皆目わからないものもありますの、立派な素材だと驚いて白い壁に手を置いて、なでてますわ殿下。研究して絶対にこの品物たちがどこからきたのか調べてみせます。
「どうしてこんな素晴らしい能力を隠していたんだ!」
「隠してませんわ」
目を丸くする殿下、あ、真実愛する人がいればその相手と添い遂げてくださいねと私が笑うと、おい、と私の手をとる殿下。
「お前のような強い魔力を持つ人間がいれば我が王家も」
「だから、真実の相手と幸せになってくださいまし、陛下は婚約解消を了承してくださいましたから、私たちは他人ですわ」
「え?」
「強い魔力を持つ人間を婚約者とすれば、あのバカも目が覚めるだろうが、ダメだったなとおっしゃられまして、あ、真実の相手という私の妹とどうかお幸せに! あの子は魔力はありますが、使うのが大嫌いで鍛錬をまるでしてないので、ほぼ魔法は使えませんわよ!」
真実の相手だ相手だというので調べてみたら、私の妹で、いつも私を地味眼鏡とからかう妹でしたわ。眼鏡で悪かったですわね!
「いやその待ってくれ!」
「ではごきげんよう!」
魔力の高さで見直されても、いやですわよ。
私はにっこりと笑ってさようならを告げましたわ。
あ、陛下に見捨てられた殿下が廃嫡されて、妹が彼を見限ったのはこの後でしたわ。
私は魔法研究にまた打ち込むために学園に入り直し、平和な生活に戻れましたの。でも何を本当に取り寄せてるのか皆目わからないのもこまりますわぁ。
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