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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第五章 戦争の季節

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469侯爵執務室の朝食会

 朝。エルシィは目を覚ました。

 昨晩は元帥杖による権能を気を失わない程度ギリギリに使ってから就寝したため、その寝覚めはあまり良いとは言えない。

 幾ばくかの気怠さのような感覚が残っているのだ。


 ゆえに、というワケではないがエルシィは目が覚めてもすぐにベッドから起き上がったりしない。

 目を瞑って横たわったままで、聞こえてくる様々な朝の音を楽しむ。

 これはエルシィの中の人がこの世界に来ておよそ一年で身についた習慣と言ってもいいだろう。


 ではなぜエルシィは目が覚めてもすぐに起きないかと言うと、別に怠惰なわけではない。

 侍女であるキャリナたちが来ていないからである。

 姫たるもの、侍女が来ないうちに勝手に起きてウロウロするなどもっての外なのだ。


 さて、目を瞑ってしばし、このまま二度寝もいいかとウトウトし始めた頃。待ち人たる侍女たちがやって来た。


 トントンという静かなノックの後に入ってきたのは侍女頭であるキャリナ。

 続いてジズ公国時代からいるもう一人の侍女グーニー。

 最後に彼女たちよりおおよそ小柄なエプロンドレスのねこ耳侍女見習いカエデが入ってくる。


「エルシィ様。朝でございます」

 キャリナにそう声を掛けられ、エルシィはようやく目を空けることが許される。

 エルシィはここぞとばかりにバチンと目を空けて勢いよくバネ仕掛けのおもちゃのように上半身を起こした。

 目覚めた時は気怠くあったが、しばらく瞑目していたおかげで「動きたい」という意識が強く芽生えていたせいと言えよう。

 最近は一年前に比べてかなり体力もついて来たので、毎日が割とこんな感じだ。

 キャリナはそんな我が姫の様子に諦め顔で毎日ひとつ、ため息をつくのだ。


 その後はグーニーとカエデが二人がかりで身体拭きとお召し替えである。

 これが済むまで、エルシィは無の境地にて二人のなすがままになる。

 タライに立たされてお湯を掛けられるので、気分は花まつりのお釈迦様像だ。


 その間、キャリナが何をしているかと言うと、簡単な部屋の掃除である。

 この掃除は清潔整理整頓の為なのはもちろんのこと、この部屋に今何が足りないのか、また何が余分なのかなどを見極める意味合いもある。

 最近だと前の晩、寝る直前にエルシィが持ち込んで広げた各司府からの報告書や申請書を執務室に戻すためのチェックもまた主な仕事となる。


「エルシィ様。お部屋に仕事を持ち込みますと寝つきが悪くなります。

 おやめ下さいと再三申し上げております」

「……あい。気を付けますデス」

 お湯でホカホカになったエルシィは二人に身体を拭かれつつ、全く反省のない顔でそう答えた。


 こうして身支度が済むと今度は朝食となるわけだが、エルシィは時間を惜しんで執務室へと向かう。

「おはようエルシィ」

「おはようございますアベル」

 部屋を出てすぐに近衛であるアベルと合流し、侯爵館を出たところで近衛府長でもあるヘイナルと合流する。


 この二人は日によってこの合流地点が入れ替わる。

 つまり夜番が交代勤務なのだ。


「皆さま、おはようございます!」

 エルシィが執務室に入ると、すでに室付きの文官や、その長というべき宰相ライネリオがいる。

「おはようございます」

 彼らは恭しく首を垂れてエルシィを迎え入れ、彼女が自らの執務机に着くのを待つ。

 着いたらいよいよ朝食の時間である。


 文官たちも自分たちの為のデスクを与えられているので、それぞれがそれぞれの席に着くと、侯爵館から運ばれてきた朝食メニューが配られる。

 ちなみにメニューは固焼きパンとスープ、そして小さなひとかけらのチーズ、そして数本の腸詰肉である。


 非常に質素に見えるが実はこのスープが手間のかかっているシェフおすすめの逸品だ。

 野菜とお肉をコトコトと弱火で数時間煮込み、出る灰汁を丹念にとり、最後に布漉して完成する黄金色のスープ。


 最初にエルシィがこのスープを提案して作らせた際、侯爵館の料理長は感動しつつ「スープは今、完成された」と言ったとかなんとか。


 ちなみにこの食事は戦場にいる兵たちにも同じものが提供されている。

 というか戦中はエルシィの方針で「執務室付きの者は兵たちと同じものを食べる」ということになっている。


 さて、配膳が終わるといよいよ「いただきます」なのだが、ここには実はエルシィの側仕えと執務室付きの者たち以外にもいる。

 厳密には「いる」というか列席しているとでも言った方がいいだろうか。

 つまり、元帥杖による権能で作られた虚空モニターによって、遠く離れた地の者もまたここに顔を出しているのだ。


 具体的に言うと今日いるのは戦場方面のそれぞれの指揮官であるスプレンド将軍とデニス正将。それからホーテン卿だ。

 日によってはヴィーク男爵国方面に出張しているバレッタや当地の技官責任者であるトウキなどもいることもあるが、今日はいない。

 というかバレッタはここしばらく顔を出していないので、何しているやらそこはかとなく不安ではある。


「では皆さん、いただきましょう」

「いただきます」

 皆が声を合わせて食事を始める挨拶をし、朝食会兼報告会が始まるのだ。

食事会が始まる前に終わってしまった_(:3」∠)_

続きは金曜日に

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― 新着の感想 ―
ヴィーク男爵国組の進捗はどうなってるんでしょうね? 海賊するしかなかった国も、エルシィ麾下に入ることで産業が起こり、ちゃんと食べられるようになってるんでしょうか? 石油産業はどのくらい研究進んでるんで…
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