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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第四章 大領セルテ編

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361/473

361降伏するとどうなるの

誤字報告ありがとうございました

ぺったんしました

「どどどどうするにゃ!?」

 顔面蒼白にしたチガヤ氏が会議場となっている屋敷に戻ってきた。

 こいつなんの策もなく行ったのか、と議場にいた長老衆はあきれつつも、それぞれがやはり顔を蒼くして「うーん」と下を向いた。

 この時点でここにいる誰も良い策など持っていないのだ。


「この期に及べば、もう降伏しかないのではないかにゃ?

 どうせ全面的に抗っても勝てないのにゃ」

 長老衆の一人が開き直った顔で言う。

 ボーゼス衆はそもそも身体能力を鍛える方向へ特化したアントール衆とは違い、この里で割と安穏と生活してきた。

 チガヤ氏が率いる外部との接触を担う者たちはそれなりにやれるが、それ以外はいわゆる人並みの戦闘能力しかもっていない。


 ではこの里の衆がただの暢気な田舎者なのかと言えばそうではない。

 メギスト神の手ほどきを得ており、薬学に関する知識や技能であれば人並み以上どころか大陸でも有数の技能集団なのである。


 とは言え、この期に及んでは是非もない。

 現在、アントールの手練れ衆に囲まれたこの状況では、いくら「よく効く風邪薬アルヨ!」と言ったところで意味がないのだ。


「しかし、我らが里の者が侯爵様を襲い、その報復なのにゃ。

 降伏したところで果たして許されるのにゃ?」

「むこうの棟梁は『命まではとらぬと保証する』と言ってたにゃ。

 きっと大丈夫にゃ」

「そんな口約束があてになるにゃ?

 命が助かっても奴隷のような生活は嫌にゃ」

「それは……そうにゃ」


 また各員が沈んで「うーん」とうなる。

 と、その時、最長老であるねこ耳老がウコギ茶をすすりながら気楽な顔で言った。

「まぁそうにゃ。

 いっそ、降伏したらどうなるのか訊いたらどうにゃ?」


 この言葉には皆一様に衝撃を受けたようだ。

 誰もが「その発想はなかったにゃ!」と言いたげな顔で雷に打たれたようにのけぞっている。

「それはいい案にゃ!

 さっそく誰か……いやチガヤが訊いてくるにゃ」

「俺にゃ!?」

「お前が外渉担当にゃ」

「いや待つにゃ。むこうは嘘ついたチガヤにいい印象持ってないはずにゃ。

 他の誰かが行くにゃ」

「誰が行くにゃ?」

「……」


 しばしの無言のうち、視線は最長老に集まった。

「やれやれ、爺使いが荒いにゃ。

 しかたにゃい、わしが行ってくるにゃ」

 そうして、最長老がよっこらせと痛む腰を酷使しつつ立ち上がった。



 ボーゼス衆の最長老が里を囲う柵までたどり着くと、その外ではアントール衆が変わらず門を外から封鎖するように布陣していた。

 その中心人物と思われる草原の妖精族(ケットシー)にしては大柄なねこ耳が棟梁だろう。

 そう目星をつけて最長老はえっちらおっちらと門をくぐってかの人物(ねこみみ)の元までやってくる。

 手には小さな白旗を掲げている。

 これは戦闘を一時停止して交渉がしたい、と言う印である。


「そちらの棟梁とお見受けするにゃ。

 わしはボーゼスの里の最も年老いたねこ、ロウバイにゃ。

 ひとまず降伏した場合のわしらの処遇について聞きたい」


 ぶっちゃけたな。

 と思いつつも、これを受けたアオハダは話が早い、と老ねこに正対して立った。

「私はアントール衆を取りまとめる棟梁、アオハダにゃ。

 先にも言った通り、我らが主君は寛大であるゆえ、ボーゼス衆が素直に降伏を受け入れるなら命はとらず、我らが配下として働いてもらうことになるにゃ」

「……それはわしらに奴隷となれ、と言うことかにょ?」


 ロウバイ老の即座の返答に、アオハダは面を食らってぽかんと口を開けた。

 最長老はこの顔を見て「そんなことは考えてもいなかったな」と察した。

「では、配下となって何を求めるにゃ」


 あ、言わずとも伝わった。同族は便利にゃ?

 などと感心しつつ、アオハダは大きくうなずいて答える。

「一つは、身体能力に優れるねこと、街に住みたいというねこには我ら忍衆に合流してもらうにゃ。

 仕事は我らと同様、様々な工作任務や情報収集にゃ」

「同様、と言うが、待遇は違うのであろうにゃ?」

「……? なぜにゃ? 同じ仕事したら同じ待遇になるのは当たり前にゃ?」


 この返答にはロウバイの方が呆れた。

 もっとも狭い里社会では下手に待遇の優劣など付けるとそこが不和の原因となることもある。

 ゆえにアオハダの考えはアントール衆にとっては当たり前の意識でもあった。

 同じ仕事なら同じ待遇。優れた仕事にはより多くの報酬。

 当たり前のようでなかなか当たり前ではないのが現状ではあるのだが。


「ではそれ以外の者はどうするにゃ?」

「それ以外の者はそのまま里で暮らしたらいいにゃ。

 あ、そういえばボーゼス衆は毒薬を使うとも聞いているにゃ。

 エルシィ様に言えばそっちでも取り立ててくれるかもしれんにゃ?

 あ、そうそうあと金印? とかいうのをエルシィ様がお求めにゃ。

 里にあるはずらしいから、これは遅滞なく差し出してほしいにゃ」


 あまりに平然と言うアオハダの様子に、今度はロウバイの方があっけにとられた。

 さっきまで「里が滅びる」などと懸念していたのがアホのようだ。

 というかここまでの攻めは何だったのか、と言うくらいあっさりした話である。

 金印、と言うのがいまいちよくわからないが、まぁ向こうがあるというのだから里を探せば出てくるだろう。


 ロウバイは彼の一存にて小さな白旗を大きく振った。

「わかったにゃ。

 その言が真である限り、我らボーゼス衆はご主君に降伏し忠誠を誓うにゃ」

続きは金曜に

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― 新着の感想 ―
独り歩き!している鉄血姫の噂が浸透してなくて良かった良かった
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