358にゃんこ忍法
※ナンバリングがずれていたのでなぜかと調べたところ、20話くらい前のエピソードが1話分抜けていることがわかりました
なぜ抜けたかは不明(投稿忘れたのか間違えて消したのか)
と言うわけで「326フレヤからの報告」を挿入しました
「今こそ、エルシィさまより授かった御業をお披露目する時にゃ」
「にゃぁ!」
ピンチに際し、ねこ耳忍者たちが俄かに沸いた。
そして全員がキッと柵向こうから投げ込まれた松明へと目を向ける。
「いや、わたくしがお授けしたわけじゃないんですけどね」
モニター越しのエルシィがつぶやくが、まぁ結果として彼女の家臣になったことが御業、つまりは覚醒スキルを得た引き金なのだから誰も否定はしない。
さて火のついた松明がこの柵の中。夾竹桃の園に落ちてしまえば地獄になるのは明らかである。
踏めばわかるが咲き誇る夾竹桃の下には燃えやすいようにと乾いた柴が敷き詰められている。
これは外敵を誘い込んで必殺するために準備された罠なのだ。
「なんの。ツルナ三兄弟の出番にゃ!」
「にゃー!」
アントール衆も見ているばかりではない。
棟梁アオハダの指示の元、三人の猫耳がそれぞれが松明に向かう。
「ハマナ! スナカブリ! 行くにゃ」
「任せるにゃ兄者!」
「見るにゃ、これが我らが御業。
『超・大跳躍』にゃ!」
叫び、三人が飛ぶ。
まず最初のジャンプの跳躍力が異常だ。
彼らを囲う策自体が彼らの何倍もの高さがある。
それを楽々と飛び越えるジャンプ力である。
そして。
「『空中二段』にゃ!」
彼らは空中の何もないところを蹴って、方向を修正した。
ツルナ三兄弟と呼ばれた猫耳たちは、それぞれが空中でパッと広がるようにそろって方向転換を果たし、飛び込んできた三つの松明を見事キャッチする。
「おー!」
モニター越しの執務室でも歓声が上がった。
燃え盛る松明の空中キャッチ。これは大道芸のような花がある。
「見事にゃ!
次行くにゃ!」
「にゃー!」
棟梁に言われ、新たに二人のねこ耳が進み出た。
鼻の穴を膨らませてフンスと息を吐いた彼らは、大地にちっかりと足を広げて立ちそして叫んだ。
「吹けよ大風、『神風の術』にゃ!」
「はにゃ!?」
言葉と共に大きく回転させた腕から、竜巻にも似た暴れ狂う突風が生まれ出る。
そして、宙にいたツルナ三兄弟が抗議の声を発するより早く、彼らの身体をさらに高く舞い上がらせた。
「あちち、あちぃにゃ!」
誰もがこの目論見が失敗だったことを一瞬で悟る。
なぜなら、風にあおられて松明の火がより大きく燃え上がったからだ。
「おまえらなにしてくれてるにゃ!
種火にゃあるまいし、松明の火が風くらいで簡単に消えないのは知ってるにゃ!?」
「言われてみれば習った気がするにゃ」
「棟梁、申し訳ないにゃ!」
松明がなんであるか。
それは夜道を歩くときなど、明かりを取るために使う道具である。
そうそう簡単に消えたら使い物にならない。
だが言っている場合ではない。
アオハダは具体的な指示を出さなかった自分の失態であると判断しすぐに指示を出しなおす。
「水にゃ、水の術持ちは一斉にぶっかけるにゃ!」
「了解にゃ!」
言われ、数人のねこ耳が進み出た。
「『水弾の術』」
「『降雨の術』」
「『タライ落としの術』」
水に関する術なのだろう。数人の猫耳たちが思い思いの御業を呼ぶ。
最初、細く水圧の高い水の筋が何本も立ち上り松明の火に直撃した。
これにとって燃え上がった火勢が緩む。
そして小雨のような広範囲に広がる雨粒で、柵内のあらゆるものがしっとりする。
最後に松明それぞれに、それをお手玉するように持っていたツルナ三兄弟も巻き込みつつ、バケツをひっくり返したような水が降り注いだ。
「ひどい扱いにゃ!」
三兄弟は叫びつつも、自然落下の後にシュタッと着地した。
傍らには火の消えた松明も一緒である。
「おー」
皆一様に拍手である。
「暢気してる場合にゃ!?」
「土使いはすぐ松明を埋めるにゃ」
「にゃ!」
「『大鍬返し』にゃ」
途端にあちこちに人が埋まるほどの穴が開き、そしてまだ火種がくすぶる松明が放り込また。
「これで安心、みっしょんこんぷりーとにゃ!」
「いや全然まだにゃ? むしろ里攻めするここからが本番にゃ?」
一つピンチを乗り越え、アントール衆に笑いが広がった。
続きは来週の火曜に




