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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第四章 大領セルテ編

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296司府再編の一歩

288の時系列に戻ります

 レオが友達になった野良犬たちと共にお手紙を届ける試験を行った日、その午後のおやつ時。

 アベルから合格を言い渡されて満面の笑みをたたえるレオは「だいすきなにいちゃ(アベル)」と共にエルシィの執務室へ訪れた。


「それで、レオくんのお仕事ぶりは」

「ああ、こいつは役に立つと思う。特にエルシィの負担も少しは和らぐはずだ」

 エルシィの問いに、アベルは静かにそう答えた。


 エルシィの負担とは。

 まぁ現在エルシィが受け持っているお仕事と言えば国営に関する森羅万象なのであって全般が負担と言えば負担なのだが、まぁそのうちの一つが通信である。

 なにせエルシィが元帥杖の権能を使えば、ジズ公国、ハイラス領、セルテ領、それぞれにいる家臣と瞬時に連絡を付けることができるのだ。


 そのあまりの便利性から、ちょっとした通信でさえエルシィがホイホイと受けもっててしまうありさまだった。

 ゆえにこれが地味に重しとなっていたのである。


 この通信を郵便網という形で仕事分けすることができれば、エルシィの負担は減るだろう、という話だった。


 いや、そもそも郵便という仕事は今に始まったことではない。

 実は内司府文司の業務に「各種文書伝達使」というものがあり、政府文書に関してはこれが郵便の代わりをしている。

 また、城内や近隣の伝達であれば高官子女が就業前の見習いとして付く「申次」というお役目もある。


 ただ前者については「何かのついでに届ける」であったり、遠方なら「外司」の外交使や「財司」の徴税官に委託されることもあるし、後者に至っては優先業務ではあるがすべてが徒歩である。


 であるから、連絡を申し付けても届くスピードはまちまちであり、あまり早いとは言えない。


 そうした経緯もあり、エルシィの負担軽減を除いたとしても通信網の整備は急務であった。

 この話が実現するならさすがにエルシィの元帥杖通信にはかなわなくとも、それ以外の旧態に比べれば断然早いのである。


 という訳で、レオがこの仕事に最適であるならば渡りに船であり、その為にアベルを監督官としてレオの能力についてテストしていたのだった。


 まぁ、エルシィはすでにレオのステータス画面から彼の固有スキルと覚醒スキルについて知っていた。

 だが 文面(ヘルプ)から察することと実際の運用では異なる場合がよくあることも知っている。

 ゆえに、アベルの報告には大いに喜んだのだ。


「ではレオくんには郵便屋さんの任についてもらうということで良さそうですね」

「街中だけじゃなくて近隣の町村も範囲に加えて大丈夫そうだ」

「わふ! まかせて姫さま!」


 レオの頭を撫でながら言うエルシィに、レオは頭をぐりぐりと押し付けながら自信ありげに言い放った。

 エルシィとアベルはうんうんと頷き、そして周りにいた他の側仕え衆も微笑まし気にその様子を見守った。


「ところでペグル村へのお手紙はどのように?」

 と、エルシィは突っ込んだことを訊ねる。

 今回、テストのお手紙に領都からおよそ半日の距離にある場所も混ぜていた。

 そのペグル村とは、例の水利で揉めていた村だ。


 レオはくりっと首をかしげてアベルを一度見、彼が頷くのを確認してから嬉しそうに応える。

「あのね、おともだちに頼んだの! 領都(ここ)にはおともだちたくさんいるの!」

「まぁ、知っていると思うが、何かと問題になっていた野良犬たちだ」

 アベルが補足を入れる。

 これに関してもまたエルシィの目論見通りの結果だったので、彼女は大いに頷いて見せた。


 セルテ領都の野良犬問題。

 これはすでに日常化しすぎて領都に住む者たちはあまり感じていなかったようではあるが、やはり外から来た者たちにとっては大問題なのである。


 先にも述べたが、この街にいる野良犬たちは数は多いがなぜか比較的行儀がいい。

 身に危険がありでもしなければやかましく吠えたりもしないし、率先して人の領分を侵したりもしない。

 とは言え彼らの食事や糞尿の問題はある。


 実はこれらを処理しているのは警士府の警邏番の者たちであり、また街の自警団の面々であった。


 そして最大の問題が狂犬病などの伝染病だ。

 当然ながら我々の世界とは違いワクチンなど存在しないし、この犬たちは誰一人として接種を受けていない。

 なので何かの拍子に噛まれでもすれば、死に至る病に侵される危険もあった。


 これらの問題を一挙に解決、または軽減させることができるのがレオの覚醒スキル「みんななかよく(ワンダフルカンパニー)」だった。


 これはつまり、在野の犬をレオの配下として統率することができるスキルである。

 レオ自身は「ともだち」と表現しているので「支配する」というほど苛烈なものではないが、それでも犬と対話ができるというのは大きな進歩である。


 今後は食事や糞尿を決まった場所でするよう指示することもできるし、それどころか郵便業務を頼むことができるならむしろプラスになるのだ。

 さらに具合が悪い()がいればいち早く休ませたり治療に専念させることもできる。

 これを「野良犬問題解決」と言わずしてなんと表現できるのか。


「さて」

 一通りレオの頭をわしゃわしゃと撫でまわし満足したエルシィは、少しだけ真面目な顔に戻って言う。


「郵便庁を設立するとして、その長官についてもらう人選をしましょうか」

 そう、さすがにレオにその監督すべて任せるわけにはいかない。

 上から彼らの仕事を見下ろし、的確に指示や差配をする者が必要となるだろう。


 エルシィはかねてからの案を実行するためにある者を呼ぶことにした。

続きは金曜に

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