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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第四章 大領セルテ編

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289クーシー親子と話し合い

 いぬ耳の男の子レオ。

 彼はエルシィの正式な家臣となる為に旧セルテ侯国へ戻って来た。

 幼い彼が親と離れ、なぜ一人でエルシィの元で勤めているのか。

 それはこんなやり取りがあった。


 時は少しだけ遡る。

 ダプラ将軍の乱が収束して数日後。やっと彼ら山の妖精族(クーシー)親子の処遇について話し合う場が設けられた。


 エルシィと侍女頭キャリナ、宰相ライネリオ。現在山の妖精族(クーシー)親子が滞在しているハイラス領の府君クーネル。

 そして当の山の妖精族(クーシー)親子が参加者である。


 他にもこの行方に興味津々な者たちはいたが、残念ながらみんな忙しそうに駆け回っている。

 まだセルテ候継承によって発生した様々な行政の引継ぎが終わっていないのだ。


 一同が会したのはハイラス領の伯爵執務室。

 現在は府君であるクーネルがこの部屋の主だが、今は最上位の執務机にはエルシィが座っていた。

「わたくしは応接席でいいですよ」

 と言ったのだが、「いやいや」「いやいや」と皆が言うので、あれよあれよという間にその席に着かされてしまったのだ。


「それで、彼らのことはどうしましょう?」

 あれこれの挨拶ややり取りの末、やっとこさエルシィはそう切り出せた。


 彼ら。

 もちろん山の妖精族(クーシー)の親子だ。

 父、オスカ。現在、現在文司預かりで探偵方を務めている。

 母、ベラ。現在、庁舎食堂付きの調理手伝いを務めている。

 子、レオ。現在、場内にて高官子弟たちと共に申次(もうしつぎ)を務めている。


「それに関してですけどね。あたしはこのまま勤めていただきたいんですけど。

 ええ、もちろんエルシィ様の家臣を継続しなかった場合でも正規に雇いなおす所存ですよ」

 と、真っ先に主張したのはハイラス府君クーネルだ。

 彼もまたエルシィがセルテ候を継承したことで、忙しさが増した一人である。

 いや、むしろ最も忙しい目を見ているのは彼かもしれない。


 その彼は最初から徹頭徹尾、いぬ耳親子のハイラス配属を主張している。


「しかしですね。くーしーさんたちはセルテ領生まれでしょう?

 郷への思い入れもあるのではないですかねー」

 エルシィはそう返事しながらちらりといぬ耳親子を見る。

「わふ。卑賎なる身で貴顕の皆様方の前で発言をお許しいただきたく。

 ……話が見えません」

 視線を向けられたいぬ耳親子は揃って首を傾げつつ、父オスカがおずおずとそんなことを言い出した。


 もちろん城内天守の高き場所に呼ばれたからには何か理由があるのだろうが、あるいは解雇もあるかもしれない。くらいには思っていた。

 ただ、どうもそうではないらしい。と、首をかしげているのだ。


「ああ、失礼しました。まずは意思確認からでしたね。

 くーしーさん……いえ、オスカさん、ベラさん、レオさん。

 あなたたちはこのままわたくしの家臣として仕えてくれる意思はございますか?」

 改めて、意識の齟齬があることに気付いたエルシィがそのように問う。


 いぬ耳父母は面食らってわたわたしてから頭を下げた。

 レオだけは何のことだかいまいちわかっていないようで「わふ?」と不思議そうにまた反対側にコテンと首をかしげるのだ。


「わふ。もったいないお言葉です。私たちはペグル村で奴隷として養われておりました。

 そこからお救い頂いた尊いお方に恩が返せるのであれば、是非もありません」

 いぬ父オスカがそう言うと、いぬ母ベラもわふわふと何度も頷いた。


「ということでね、彼らの配属をぜひハイラス領に!」

 と、ここでまたクーネルの主張だ。

 あくまで冷静な嘆願の態ではあるが、その実、必死である。

 エルシィたちがセルテ領に行ってしまい人材薄くなったハイラス領を治めるのに、有能な人材は少しでも多く必要なのだ。


「ふむー」

 対して、エルシィは悩んで見せる。

 彼女の治めるセルテ領もまた、ハイラス領ほどでないにしろ人手不足ではあるのだ。


「わふ。再び発言をよろしいでしょうか。

 ハイラス府君閣下にお求め頂き、これ至極恐悦です。

 が、繰り返しますが私たちはエルシィ様に救われた身。

 その御恩をお返しする機会を与えていただければと存じます」

 オスカの言葉にエルシィは大いに頷きながらも、ちょっと気になった。


 オスカは探偵方ですぐさま一級線の活躍をこなしている。

 これは読み書きと算術が問題ないレベルででき、なおかつ論理的な思考ができる証拠である。

 そうでなければこなせる任務ではない。


 これができるのは一定水準の教育を受けた者でなくては無理だ。

 そしてその水準の教育を受けるのは、それなりに裕福な家庭でなければ無理なのだ。

 教育にはお金がかかるのである。


「少し話を脱線しますけど、オスカさん、もしかしていいとこの出身だったのでは?」

「わふ……」

 エルシィの問いに、オスカは少し目を伏せ、そして昔を懐かしむように遠くへ視線を写した。

「まぁ、それは良いではありませんか……」

 と、オスカは首を振りながら苦笑いを浮かべてそう返した。


 どうやらあまり愉快な話でもないらしい。

 なら無理に聞き出すこともないだろう。

続きは来週の火曜日に

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