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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第三章 大国の動向編

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274/473

274大国は大国らしい戦いを

「まぁ……、神様視点でその将軍さんの砦がセルテ領内ということなら、あまり問題じゃないですね?」

 最初こそ慌てた顔だったエルシィだが、土地の管理神であるイナバ翁からの話や、その後の話を聞いているうちにすっかり落ち着いた。

 その上でそんなことを言うので、何人かの家臣たちは感心したり疑問顔を浮かべたりと様々だ。


 エルシィはそんな反応を眺めつつ、自分の言葉を裏付けるよう続ける。

「つまりですね。ダプラ将軍さんのいる砦がセルテ領内なのであれば、わたくしはこの杖で『家臣』さんたちをその場に送り込むことができるんですよ」

 と、ごそごそと取り出した元帥杖を掲げ持った。


 すでにその権能を目にしている幹部家臣たちは「おお」と声を上げる。

「なるほど、暗殺ですか。

 確かに手っ取り早いですね。

 なんなら今日中に片が付いてしまいます」

 そしてエルシィの傍らに控えている侍女キャリナもまた、エルシィの言葉を補足するようにそう呟いた。


 これらの言葉に納得気味な表情を浮かべる者と、眉をしかめるなり難しそうな表情を浮かべる者、二つに分かれた。

 主に文官寄りの者が前者で、武官寄りの者が後者だ。


 その武官寄りの代表とも言えるスプレンド将軍が小さく手を挙げた。

「よろしいでしょうかエルシィ様」

「どうぞ?」

 何がいけないのだろう、とエルシィは小首を傾げながら発言を促す。

「確かにダプラ将軍とその手勢を排除し鎮圧するには、将軍そのものを討つ首狩り戦術は手っ取り早くて有効です。

 が、今回の場合の手段として暗殺を選んでは、民衆が納得しないでしょう」


「民衆、ですか……」

 キャリナをはじめ、文官衆が怪訝そうに眉を寄せる。

 中でもライネリオだけは「なるほど」という顔で深刻そうな顔を浮かべていた。


 エルシィも「戦争が早く終わるならいいのでは?」とあまりよく解かっていなかったので、同様の様子の文官たちを見回してから説明を求めるよう目を向けた。


 その視線を受け、スプレンド卿は続ける。

「逆の立場であればそういう手もアリでしょう。

 ですが暗殺という手管はどちらかと言えば搦め手です。

 そして搦め手とは弱い立場の者が強者を打ち破るために使う手なのですよ。

 少なくとも、世間ではそう理解されています」


 ここまで聞いて合点がいった。

 つまり土地を治めなければならないエルシィは、戦における勝利と共に、その戦を見知ることになる土地の者たちの世論をも気にしなければならない立場ということだ。


 特にエルシィは新たにやって来た為政者である。

 今はまだセルテの民からすれば「どういう人物か」が透けていない状態と言える。

 そこで起こった反乱に対し「暗殺」という搦め手を使ったとなれば、エルシィの世評がそういうモノに固定されてしまうのだ。


 これは単に戦いにおける優劣だけではなく、政治の問題とも言えるだろう。

 政治は奇麗ごとだけでは済まされない世界ではあるが、その恩恵を受ける民衆が求めるのは奇麗ごとなのである。


「為政者めんどい……」

 エルシィはへにょんと力を抜いて会議机に突っ伏した。

 だが、それも一瞬のこと、すぐにしゃきっとして難しい顔でスプレンド卿、そしてホーテン卿へと顔を向けた。

「では正攻法で砦攻めとなりますか……それで、その国境砦に詰めている兵数はおいくらなんです?」

「戦闘可能な人員としてはおよそ五〇〇、だな」

 答えたのは旧セルテ侯爵エドゴルだった。

 そもそも、それぞれの国境砦に人員を配したのは彼なので、この情報を知るのは当然である。


「五〇〇……」

 エルシィはまた難しい顔をする。

 今のところ、即応で動かせるこちらの兵数もまたおよそ五〇〇なのだ。

 いや、単純な兵を数えればもっとたくさん動かせるのだが、エルシィの元帥杖ゲートで移動できるのは、家臣化された五〇〇ということになる。

 そうでなければ現地に軍勢を送り込むだけで一ヵ月近くかかってしまうだろう。


「同数で砦攻め、勝てますか?」

 結局のところそこなのである。

「普通にやれば無理であろうな。

 だが、砦から奴らを炙り出せれば同数同士の野戦となる。

 であれば俺とお前で負ける道理がない。であろう?」

 難しい顔のエルシィに、不敵な顔でニヤリと笑うホーテン卿がそう応えつつ、同僚であるスプレンド卿へと話を振る。


 五〇〇の兵を動かす場合、その指揮官となるのはスプレンド将軍だ。

 当のスプレンド卿もまたホーテン卿の振りに答えてニヤリと笑った。

「そうですね。先日の戦いではお見せ出来なかった、私の授かった御業をお見せできるでしょう」


 で、あれば。

 と、エルシィは少し難しい顔を解いて眉根をくにくにと揉み解す。

「わかりました。考えがありますので、お二人はすぐに出撃準備をお願いします」

「承知」

 ふたりのトップ武官は恭しく敬礼を挙げると、すぐに翻って少年の様な笑みを浮かべながら会議室を退出していった。

 そして続き、残った者たちには解散が告げられ、不完全燃焼ながら会議はこれにて閉幕となった。

続きは金曜日です

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