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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第三章 大国の動向編

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248/473

248突入、その前に

「では拙者が先導いたしますにゃ」

 と、エルシィが他の皆をゲートで呼んでいる間に着替えたねこ耳棟梁アオハダが畏まってそう言った。

 見れば彼はすっかりセルテ侯国警士の軽装備に身を包んでいる。


「その装備はどこで手に入れたのです?」

「先ほど壁を越えた時にいた見回り警士からですにゃ」

 彼の早着替えに感心しつつエルシィが訊ねると、アオハダはえへんと胸を張って答える。

 どうやら警士に出くわすことは本当に織り込み済みだったらしい。


「で、その頭の耳は隠さなくていいのか?」

 そう訊ねるのは、皆にはエルシィの一番家臣と見られている神孫の弟アベルだ。

 彼の問いに合わせて視線を追えば、アオハダの頭の上にはねこの耳がぴくと揺れていた。

「それは断固拒否するにゃ」

「……そうか」

 何かゆずれないこだわりがあるようだ。と、一堂はこれ以上追及することをやめた。



「さてさて、みんな揃ったところで行動開始と行きましょう!」

 以下、アベル、ホーテン卿、近衛のヘイナル、フレヤ、そして侍女のキャリナとカエデが揃ったところでエルシィが小さく握りこぶしを上げる。

 今のところセルテ侯国側の人が周囲に見当たらないとはいえ、さすがに大きな声を上げるのははばかられる。

 倣って、一行の各々も小さく「おー」と応えた。


「『ピクトゥーラ(画像表示)』……もいっこ『ピクトゥーラ(画像表示)』……!」

 皆がくぐって来た扉サイズの虚空モニターを消し、エルシィは新たに小さな虚空モニターを二つ出す。

 どちらも七インチモニターくらいのサイズである。

 そしてちょいちょいと操作して映し出されるのは、それぞれ西門東門へ向かった合計五〇〇の兵たちである。


 とは言え、全員をフォーカスするわけではなく、それぞれの指揮官にピンとは合わされている。

「スプレンドさん、バルドメロさん、準備はいかがですか?」

 エルシィの問いかけに、それぞれのモニターで指揮官が振り返る。

 スプレンド卿はもうすでにお馴染みであるこの遠征の将。

 そしてバルドメロとは、この度の迎撃戦において将補と取り立てられた人物で、あご髭を短く刈り揃えた三十路の三白眼だ。


 モニター越しに見る西門東門はどちらも同じような造りをしている。

 もちろん主城の防衛機構であるので、ただ壁に門を取り付けただけのような雑な造りではない。

 各門の外側には少しの空地(くうち)を取った上で堀が設けられているし、門の上部には弓兵が立てるような櫓もある。

 とは言え、今は彼らにとって戦時ではないのだろう。

 櫓には見張りの警士がそれぞれに二人、あくびをかみ殺しながら立っているだけだった。


「万事整ってますよエルシィ様」

「いつでも下知を」

 両名はそう言葉少なげに返した。

 エルシィは満足そうに頷く。


「ではいよいよ、作戦を開始しま……」

「いや、姫様待ちなさい」


 と、勢い込んで言いかけたところでストップがかかった。

 ズルっとずっこけかけたエルシィが体勢を持ち直して振り返る。

 止めたのは老偉丈夫ホーテン卿だった。

「どうかしたのです?」

 彼が待てというからには何かそれなりの理由があるのだろう、とエルシィは怪訝そうに眉を寄せて訊ねる。

 ホーテン卿はアゴだけをしゃくって皆の視線を誘導した。


 見れば、モニター向こうの東門側。

 ちょうどスプレンド卿たちがこれから突入を仕掛けようとしている側に、息を切らせた騎馬兵が駆けこんでくるところだった。

 もちろん、卿たちは門前で身を晒しているわけではなく、少しずつ分隊して潜んでいる状態でそれを見ていた。


「なんですかね?」

「おそらく伝令でしょう。かなり急ぎの報のようです」

 ヘイナルが答える。

 言われてみればあれほど急いだ様子なのだからそうなのだろうと納得だ。

 では、なんの報なのか?


「カタロナ街道の敗戦報告……それとも昨日の村の一件でしょうか」

 キャリナがそう疑問を口にする。

 彼女は基本的にエルシィの身の回りのことや礼儀については口出しするが、行動に関することは黙っていることが多い。

 が、今回は隠密行動に同行していることもあり、不安が募っていたのだろう。


「どうだろう。村のことではないのではないか?

 村には駐在警士もいなかったし、あのような問題が起こるからには巡回警士も滅多に来ないはずだ。

 であれば、やはりカタロナ街道からの伝令なのではないだろうか」

 と、これはヘイナル。

「ふむ、確かに村のことが昨日の今日で伝わる可能性は低いと思うが……村の者が近隣の駐屯地に通報したということも考えられぬことではない」

「……なるほど。見つけたら斬らねばなりませんね」

 ヘイナルの考えを補足するように付け加えられたホーテン卿の言葉に、フレヤは暗い笑みを浮かべて己の腰に差した短剣をまさぐった。


 エルシィは「別にあの村の方はわたくしの家臣でも臣民でもないので許したげて」と言いかけたが、なんかややこしいことになりそうだったのでひとまず飲み込んだ。


「まぁ何の報告かはこの際どうでもよい。

 ひとまずアレをやり過ごしてから突入しよう」

「はい、ではタイミングはホーテン卿にお任せしますね」

「うむ、任された」

 と、そういうことになった。

今回で216話の時系列に戻れると思ったのに……おかしいね?


続きは金曜日です

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