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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第三章 大国の動向編

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247城壁越え

 忍衆(しのびしゅう)がそれぞれの役割を負って消えた後、エルシィとその一行はハラハラヤキモキしながら時が経つのを待った。


 時間は夕刻のちょっと前。

 とは言え、季節的に日が長く、まだまだ明るい時間には余裕がある。

 残暑の陽もこの日陰た場所ではジリジリと照り付けることもなく、その点についてはこの待ち時間も然程苦痛ではなかった。


 まぁ、先に述べた通り、忍衆が上手くやるだろうか、という心配は払拭できるものではないが。


 しばらくの時間が過ぎた頃。

 エルシィたちの目の前、つまり先ほど忍衆棟梁アオハダがスルスルと登って行った城壁と石垣に、一本のロープが降りて来た。

 また、その直後には当のアオハダがこれまたスルスルと降りて来る。

 そしてエルシィの前にぱっと跪いた。


「エルシィ様。内側の準備、整いましてございますにゃ」

 アオハダの言に、エルシィは「ほー」と安堵のため息をついてから大きく頷いた。

「誰かと遭遇したようですが、大丈夫でしたか?」

「は、警戒が薄いとはいえ、警邏がいることは織り込み済みですにゃ。

 万事、計画通りでございますにゃ」


 そ、そうなんだ。織り込み済みだったんだね。うん。

 などと思いつつ億尾にも出さず、エルシィはまた大仰に頷いた。

「大義です。では引き続き予定通りいきましょう。

 スプレンド卿もよろしいですね?」

「万事承知です」

 エルシィとはこれから別れて、引き続き五〇〇の兵を率いることになっているスプレンド将軍は、恭しく腰を折って答えた。



 ここからの計画はこうだ。

 まずエルシィはお側衆と共にアオハダの手引きで北壁側から城壁内へ侵入する。

 別動隊であるスプレンド卿は隊を二つに分け、やはり忍衆の手引きで東西の御用門から侵入する。

 東西合計五〇〇の兵が城内、または門前で騒ぎを起こし、その隙にエルシィたちは天守へ向かい、侯爵の元へ押し入る。


「完璧な計画ですえへん」

「さすがですエルシィ様」

「いや、そうかぁ?」


 この立案について話し合った時、一部の側仕え衆の反応である。



「では予定通り進めますにゃ。

 ……失礼するにゃ」

 と、アオハダがより深く頭を下げてから軽く身を起こしてエルシィを抱え上げた。

 お姫様だっこではない、麦袋を持つ時のような肩担ぎである。

 当然エルシィはアオハダの進行方向とは逆側を向くわけだが、そんなことは全く気にも留めた風でなく、シュタッと片手を上げてひとまずその場に残る側仕えたちに言葉を掛けた。

「ではちょぴっと行ってまいりますので、ちょぴっとお待ちください」


 これに続いてアオハダはねこ耳をちょっと揺らして挨拶と替えると、すぐに先ほどのロープを伝って石垣と城壁を登り始めた。

 エルシィを荷物の様に抱えたまま。



 そうしてひと時の上昇下降アトラクションを楽しんだエルシィは、無事、城壁内へと足を付けた。

 城壁内はそれなりに広い空地となっており、まばらに庭木が立っている。

 ほぼ警戒区域ではないためだろう、人の姿もない。


 いや、アオハダ配下の忍衆が一人、安全確保の為、木陰にひっそりと隠れていた。


 エルシィを担いだアオハダが城壁内の土に降り立つと、そのねこ耳忍がそそとやって来て跪く。

「異常はありませんにゃ」

「よしにゃ」

 そういうと、そのねこ耳忍びはまたそそとどこかへ駆けて行った。

「トゲガシさんはどちらに行ったのですか?」

 エルシィがそう訊ねるとアオハダはギョッとした。

「トゲガシを知っていたにゃ!?」

「まぁ、忍衆の皆さんの名前はちゃんと憶えてますけど?」

 元々恐ろしい人だと思ってはいたアオハダだが、今、また改めて彼女の恐ろしさを肌で感じた思いだった。


 それはともかく、アオハダに降ろされたエルシィは、さっそく木陰で元帥杖を振る。

「『ピクトゥーラ(画像表示)』!」

 その言葉に応え、お馴染みの虚空モニターが現れる。

 ところが画面は真っ暗なままで、白文字で「『マップが未登録の地域です』」と表示されている。


 まぁこれもすでにお馴染みと言えるだろう。

 ここはあくまでセルテ侯爵領であり、エルシィの支配地域でない土地なのでこのような表示になる。

 とは言え、裏技もあることを確認している。


 エルシィはいつもの調子でちょいちょいと操作して「家臣一覧」という画面を表示させる。

 そしてその中から「アベル [剣士]」という表示を見つけて、ちょいちょいとその名前を杖で軽く叩いた。

 するとたちまち画面は名前の示す人物を映し出した。

 つまり、それはたった今越えて来た城壁の向こう側だ。


 エルシィは続けて「おーぷんざげーと」と言いながらスマホ画面をピンチアウトする要領で虚空モニターを広げた。



「これ、エルシィが旅してくる必要なかったんじゃないか?」

「まぁ家臣を送り込んでおけばそこに(ゲート)が開けるというなら、そうであったかもしれんな」

 その虚空モニターのゲートをくぐって来たアベルとホーテン卿が難しい顔でそう呟き合う。

「ところがそこまで便利でもないみたいなんですよね~。

 開いたゲートの先が領地ならそれもできますけど、そこが領地外だった場合はわたくしの方に来てもらう一方通行しかダメみたいなんですよ」

「それは……まぁそれだけでも充分ズルいですけどね」

 と、これはエルシィの反論とヘイナルの反応だった。

スプレンド卿と五〇〇の兵を同道させなかったのは、さすがに城の裏手とはいえ五〇〇人をゲート移動で侵入させたら目立つだろうからです

どうせ目立つなら別の場所で陽動ということで

続きは来週の火曜日にノシ

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― 新着の感想 ―
[一言] ワープ能力とかズルい!正しくチートですが元帥杖持った人間が自ら敵の懐に入らないといけないというのはやはりリスキーですね
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