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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第三章 大国の動向編

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243/473

243ヒレの国の軍

「人魚の大軍じゃと? ヒレの国の連中か!?」

 幼女男爵レイティルが困惑と驚愕をまぜこぜにした顔で叫ぶ。


 ヴィーク男爵国は島住みの民族ではあるが、同時に海の民族だ。

 同じ島国とはいえジズ公国よりもその傾向が強い。

 なぜなら、ヴィーク男爵国の国土は寒冷なため、ジズ公国よりもさらに農作物が育ちにくい土地だったからだ。


 だからこそ彼らは海に活路を見出し、いつしか海賊国家として生きるようになっていた。

 それが現在のヴィーク男爵国の成り立ちだ。


 よって、その海の民族(ヴィーク男爵国)は人魚、つまりマーマン族に出会うことも多く、彼らについては近隣の他国より詳しい。

 ただし、人魚たちの群れ、国家との交流はない。

 ないが、互いに不干渉を貫いてきた歴史はある。

 それは、そういう取り決めがあった訳ではなく、暗黙のままに住み分けていただけだった。


 ところが最近になってその人魚たちがハイラス伯国の商船や警戒船に同行することが多くなっていた。

 気にはなっていたが、レイティルは疑問に持ちながらも、その人魚が少数だったためこの問題を放置していた。


 そこへ来て、今回の大襲来である。

 もはやこれはハイラス伯国とヒレの種族の国が同盟でも結んだのではないか、とさえ思えてくる。


「マーマン族など半分は人の形をしておりますが、話が通じる種族だとは思っていませんでした。

 よもや伯国と結託するとは……」

 レイティルの斜め後ろに控えている少年侍従ラグナルもまた、驚きと共にいささか差別的な発言をする。

 まぁ、大なり小なり、陸に住む者たちの多くがこのように思っている。

 ゆえに、ヴィーク男爵国は長年マーマン族とはお互い見て見ぬふりをして住み分けて来たのだ。


「ええいそんなことは良い!

 どうすれば良いのじゃ?

 人魚どもと戦ったことがある者はおらんか?」

「船にいるたいていの者は戦ったことがあるでしょう。

 なにせ近頃は伯国の船を襲いに行けば必ずマーマン族が随伴していますから」

 レイティルの問いに、すぐラグナルが答える。

 だが当然ながら彼の主はバンバンと甲板を踏み鳴らした。

「そうじゃが、そうではないのじゃ!

 たった今問題としておるのは、迫りくる人魚どもであろう」

「そうでした」

「よし、共通理解が出来たところで今一度問おう。

 人魚の大軍といかにして戦ったらよい?」


 だがこの問いにラグナルは何も答えを持っていない。

 なぜならヴィーク男爵国は未だかつて人魚の軍勢と戦ったことなどないのだから。

 ラグナルは困り、近隣にいた船員たちに助けを求めるよう視線を漂わせた。

「判りません!」

「存じません!」

「知りません!」

 そして、当然ながらに、すべての者が声をそろえて同じ内容のことを言った。


 そうしている間に人魚の群れの大波が、彼らの艦隊に到達する。



「なに? どうなってるの?」

「私にも判りかねます」

 困惑はハイラス領艦隊側でも広がっていた。

 バレッタがすぐさ周りに問うが、当然ながら誰も判らない。

 だが、彼らがヴィーク国艦隊と違うのは、「マーマンとはすでにお互い意思の疎通ができている」というところである。

 なので、バレッタはすぐさま船べりへ駆けて行き、艦の近くを泳いでいた人魚の男に訊ねた。

 彼はハイラス領の水司に雇われているマーマン隊の一人だ。


「あれは何? 敵? 味方?」

 ものすごく端的な質問である。

 端的ではあるが、今、最も重要なのはそこだった。

 敵であれば逃げる。

 味方であれば共にヴィーク国艦隊を攻める。

 そう、単純な話のだ。


 答え、マーマン隊の男もまた少しだけ困惑した顔で言う。

「恩あるバレッタ様に我らヒレの国が弓退くとは思えません

 しかし……あっ、今、向こうから伝令が来ました!」

 ちょうど、そのタイミングで一人のマーマンが猛スピードで彼に泳ぎ近付いてきた。

 装備品がハイラス支給とは違うので、割とすぐにマーマン隊ではないと区別できる。


 そのやって来たマーマンと、マーマン隊の男がしばし話し、そしてマーマン隊の男がパッと笑顔になってバレッタの艦に振り返る。

「バレッタ様、あれはやはり味方です。

 女王様からの伝言があります!」

 そう言い、そのまま伝令人魚へと引き継いだ。

「ネプティーナ様からの言葉をお伝えします。

『エルシィ様、およびその臣であるバレッタ様におかれましては安心召されよ。

 今こそが恩を返す時』とのこと。

 合力して海賊どもを撃退しましょう!」


 一〇〇〇にもなろうかという人魚の大軍が、次々と海面から高く飛びあがり一本の矢のごとくカッ飛んだ。

 その手には三又の槍が握られている。

 これは彼らマーマン族の熟練戦士が船の者と戦う時に見せる伝統的な戦法であるという。

 彼らはそのままヴィークの船の上を通り過ぎる様にして反対側の海へと落ちていく。

 その過程で、軌道上に運悪くいた者を斬り裂き、または貫いていく。


 幼女男爵レイティルは、早々に白旗を上げることを決意した。

次回は金曜日です

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― 新着の感想 ―
[一言] 合力して海賊どもを撃退しましょう←力を合わせるまでも無く勝ってしまってるんですが!?ここまでの苦労はいったい何だったのか… まあ色々課題になりそうな事が見えたのは今後の為には良かったのかな?…
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