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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第三章 大国の動向編

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228鎮圧

 謎の貧相な武装集団に攻撃を受け防戦を敷いている村。

 これを前にエルシィは思案する。

 割って入り、助けよう。ということにはなったが、ではどのようにすればよいのか。

 という具体策についてである。


「俺が突っ込んで蹴散らしてきてもよろしいのですかな?」

 そんなエルシィに焦れたのか、声を掛けるのはホーテン卿だ。

 エルシィは一瞬その様を想像する。

 そもそも攻守併せても一〇〇人に満たない粗末な装備の連中だ。

 鬼騎士ホーテンであれば、それこそ一騎当千であそこに集まった集団をことごとく蹴散らしそうではある。


 エルシィはブルブルと首を振ってその想像をかき消した。

「いえ、それではダメです。

 犠牲が大きすぎます」

 彼女の言葉に、ホーテンを除く一同が深く頷いた。

「このホーテン、老骨ですが、あの程度に後れを取るほど耄碌はしてませんぞ」

「いえ、そうではなく」

 勘違いして口を尖らす爺に、エルシィは苦笑いをこぼしつつ、言葉を濁した。


「ではいかにしましょう?」

 と、こう訊くのは近衛フレヤである。

 この問いは今ここにいる側近衆、皆の代弁ではあるが、その顔を見ると期待するところが違うのがわかる。

 具体的に名指しで言えば、声を出したフレヤはホーテン卿同様、突撃することしか考えていない顔だ。

 再びエルシィの脳裏に、前方の集団がすぽぽぽーんと蹴散らされる像が浮かんだ。

 もちろん、飛んでるのは村人も込みだ。


「ダ、ダメです」

「……何がです?」

 またブルブルと首を振ったエルシィを、不思議そうに眺めるフレヤだった。


 さて、蹴散らせば確かに鎮圧は出来るが、ではなぜそれではダメとエルシィが思っているのか。

 それには理由ある。


 つまり、村が攻められているが、どっちに理があるかというのは本当のところ分からないからだ。


 先にホーテン卿が言ったが、野盗がいかにもな格好して山林や洞穴に住んでるとは限らない。

 ひょっとすると攻められている村の方が野盗の村、ということもありうるのだ。

 であれば、双方にできる限り被害を出さずに鎮圧し、しかる後に事情を見分し、その上で理のない方を裁く必要がある。


 もっともここはエルシィにとっては他国であり、そこまで気にする必要もないと言えばない。

 だが、一度身についてしまった為政者視点は、そうそう拭えるものではないのだ。


 ゆえに、ホーテン卿とフレヤをけしかけるのはマズい。

 二人を解き放てば、おそらくあっという間に事態は収束するが、それは多くの首級上げたから鎮まった、という結果になるだけである。


 であればどうするか。

「少し早いですが、スプレンド卿を呼びましょう」

 と、そういうことになった。



「おい、警士は来ないのか!」

「来るわけねーだろ? 今はハイラス伯国に攻め入ってるらしいじゃねーか」

 武装農民という風体の集団に攻められているペグルという名の村で、とある若者が叫び合う。

 もちろん、彼らの手は止まらずに柵際で防戦の為の投石などに準じているところだ。

「なんで伯国攻めてんだ? 確かあっちの国主様はうちの国主様の御親類だろう」

「しらねーよそんな事情は。だけど攻め入ってんのはマジなはずだ。

 しばらく前にたくさんの兵隊が通ったじゃねーか」

「そういやそうだ。なら奴らはそれを見越して攻めて来たんだな?」

「おめぇ、頭いいな。なるほど、なんで急に、思ったがそういうことか!」

 二人がまたそう叫び合いながら内容に納得すると、後ろからゲンコツが飛んで来た。

「おめーら、くっちゃべってねーで、働け。

 ほら、奴らも死に物狂いだぞ」

 そういうのは村の有力者の一人である髭もじゃの大男だった。

 若者たちは首を縮めて「へーい」と小さく返事した。


 と、その次の瞬間、またその若者が声を上げた。

「おい、ありゃなんだ! 援軍か? それとも奴らの仲間か?」

「何を……なんだぁ!?」

 大男はまた若者を注意しようとしたが、彼らの目線を追って絶句した。

 攻め入って来る奴らとは別に、大勢のちゃ()()()()()()()を付けた兵士が、村の外にこつ然と現れたからだ。


 一瞬、お国の騎士か警士が駆けつけてくれたかと思ったが、どうも様子が違う。

 というか、掲げられた旗が見慣れぬモノだった。

「『大鳳の旗』と『盾と冠の旗』?」

 首を傾げている間に、その武装集団は動き出した。

 まさに電光石火だ。

 彼らはたちまち村と、村を襲う武装集団を取り囲んだ。

 村を襲う武装集団の方も、これはただ事じゃないと攻める手を止める。

 同時に村側も迂闊に動けず、防戦の手を止める。

 騒がしかったこの平原は、たちまち静寂に包まれた。


 そしてそんな沈黙を破るように、一組の人馬が包囲集団の中から進み出た。

「双方、武器を捨て、神妙にせよ。

 そしてこの騒ぎが何であるか、疾く釈明せよ」


 それはこの五〇〇からなるこの群を率いる、スプレンド卿であった。

 彼は正しくエルシィの意を汲み、威圧という手管を持ってこの争いを治めることにした。

 さすがに攻守併せても一〇〇いない集団は、これはマズいことになった。と諦めて手にしていた粗末な武器や農具を地に落とした。

続きは来週の火曜です

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