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じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第三章 大国の動向編

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203/463

203朝の風景

「エルシィ様、おはようございます」

「……ふぇ?」

 侍女キャリナから声を掛けられて初めて覚醒したエルシィは、寝ぼけ頭のままに半身起こしてのそのそと見回す。

 ここはハイラス主城内にある伯爵館の寝室だ。

「朝です……ね?」

「そうです、朝ですよ。さぁ目を覚ましてくださいまし」

 エルシィが半分であろうととりあえず目を覚ましたことを確認して、キャリナはいそいそと支度をしながら流し気味に受け答えた。

 もちろん、エルシィが着替える服などを準備しているのだ。

 とは言え、これらはもう一人の侍女であるグーニーが、昨晩のうちにある程度揃えてあるので手間というほどの事でもない。

「あー、あれ?」

 あまりに日常的な朝の風景に、エルシィは少しだけ戸惑ったように首を傾げた。


 昨日、ハイラス領都から馬で五日という距離にあるナバラ街道にて、ついに山脈を挟んだ向こうにある隣国、セルテ侯国の軍と戦端を開いた。

 ここ一ヶ月で、ナバラ街道には砦や土塁、堀といった防御施設を即席的に設えており、その砦将にはナバラ市府太守であるクーネルを据えた。

 そのクーネルも上手く砦の兵を掌握してくれたようで訓練も順調に進み、そして昨日の衝突で初防御戦を勝利と飾ったのである。


「そうでしたそうでした」

 未だベッドに座ったまま、エルシィはその辺りを思い出してうんうんと頷く。

 自分では日常の疲労とそう変わらないと思っていた。

 だが、いつもならキャリナ来室までには目覚めているエルシィが、今日は起こされるまでそのままだった。

 やはり戦争が始まったという非日常の空気は、それなりの重圧をもってエルシィを消耗させていたのだろう。


 とは言え、一晩寝てしまえばスッキリなのが若さの素晴らしいところである。

 エルシィは「ほっ」と掛け声を吐き出しつつベッドからぴょんこと飛び降りた。

「ベッドから飛び降りない!」

「ひゃい!」

 キャリナから飛んで来たピシャリとした叱り声に頭を叩かれた様な気分で返事をするエルシィであった。


 その後、朝の清拭や着替えを済ませて食堂へ向かう。

 お供にはキャリナの他、近衛士のフレヤやアベルもいる。

 食堂では館の料理人がエルシィたちの朝食を用意して待っているもまた、いつも通りだ。


 さて、食堂には朝のパンだけではなく、ハイラス領騎士府長として領都留守居を拝命しているホーテン卿もまた待っていた。

「おお、おはようございます。エルシィ様」

「おはようございます、ホーテン卿。

 朝ごはん前からどうされました?」

 食事が終われば、また天守執務室へ向かい、領地運営の執務と並行して戦争の行方を見守らなければならないわけで、ホーテン卿とは今日もそちらで落ち合う予定であった。

 そう考えればここにいるホーテン卿が謎なのである。


 ところがホーテン卿と来たら朝からとてもいい顔でウキウキした様子を隠そうともしない。

「いやいや、年甲斐もなく続きが気になってしまいましてな。

 つい、いつもより早く起き出してクレタに追い出されてきたという訳ですわ」

 クレタというのはホーテン卿の奥方であり、エルシィの教育係でもあるクレタ先生のことだ。

 ホーテン卿と共にハイラス領へ移住してくれたクレタ先生は、今ではエルシィの知恵袋役と並行して、文司へエルシィの政策を伝え指導する役を担ってくれている。


 戦争が楽しみとは困った御仁だ。

 まぁ武人というのはこういうものかもしれないなぁ。

 と、エルシィは少し呆れ気味に肩をすくめてから、ホーテン卿にも朝食の席を勧めることにした。

「おっとこれは申し訳ございませんな。

 もちろん喜んで頂きましょう」

 当然ながら自宅で朝食は済ませているホーテン卿だが、そんなことはおくびにも出さず、勧められたとおりに席に着いた。


 エルシィが一番奥まった上座に腰を落ち着け見渡せば、エルシィの左右の席に神孫の姉弟、ニコニコ顔のバレッタと真面目顔のアベルもまた席に着く。

 ホーテン卿は遠慮してか、そのさらに隣に落ち着く。

「おはよう、お姫ちゃん!」

「おはようございます、バレッタ」

 こちらとも挨拶を交わし、いつも通り元気だねぇ、と年寄りじみた感想を抱くエルシィだった。

 ちなみにアベルやフレヤとは部屋を出た後すぐ会っているので、そこで挨拶を交わしている。


 程なくして、ねこ耳メイドのカエデがキャリナやグーニーと共に、朝食のパンやスープを運んで来た。

 本来であれば給仕は侍女や侍従の役目だが、今この城ではまったくもって人手不足なので、カエデは「侍女見習い」という肩書で働かされている。

 ゆえに、最近では給仕の役割もやらされるようになってきているのだ。


 先日、エルシィに毒を盛った張本人なのににゃぁ。

 と、カエデの方が逆に腑に落ちない顔をしている。


「さて、今日もきっと忙しくなります。

 ばちっと食べて、ばちっと働きましょー。

 では! ……いただきます」

 こうして、エルシィの挨拶と共に、にぎやかな朝食が始まった。



 朝食が終わってエルシィがまた着替えを済ませると、一行は揃って天守四層にある執務室へと向かう。

 ここは先日皆で集まった会議室とそれほど変わらない広さがある。

 本来であれば領長の侍女侍従、側近、各司府の長などが出入りして報告や執務に当たる部屋なのであり、この広さも妥当といえる。

 だが、現在ハイラス領の長として手腕を振るうエルシィには、そもそも側近が少ないので、この部屋も何か閑散とした雰囲気がある。

 その執務室には、エルシィの来庁を待っていた内外司府長の他、吟遊詩人ユスティーナや元ハイラス伯家中のライネリオも待っていた。

「おはようございます」

 ここでもまた朝の挨拶を済ませ、いよいよ開戦二日目が始まるのだった。

息抜きに日常風景入れようと思ったら一話まるっと使ってしまたよ

ふむー(。ω゜)ン?


次回は来週の火曜日です

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