表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
じょじたん~商社マン、異世界で姫になる~  作者: K島あるふ
第二章 ハイラス鎮守府編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

165/463

165山中行

 リーン リリーン……

 エルシィはまどろみの中で鈴の音を聞いた。

 うーん、もう少し寝ていたいですね……。

 そんなことを思いながら、もう一度眠りの中へと潜るため寝返りを打とうとしてハタと気づく。

 うん? わたくし、今、縛られてます?

 そう、身動きが出来ないように、椅子の様なモノにロープか何かで胴をぐるぐる巻きにされている感覚があった。

「……なにごとです!?」

 エルシィの頭は一気に冴え、そしてバッと目を開けた。

 そこは背の低い灌木と草に囲まれた山の中であった。


「おやエルシィ様、お目覚めですか?」

 背後から若い男の声でそんな言葉が飛んで来た。

 ああ、そうだ。これはエルシィの筆頭近衛ヘイナルだ。

 そうだそうだ。エルシィとその一行は、ナバラ市府の太守館に一泊した後、アンダール山脈にあるという山里を訪れる為に山中を進行中だったのだ。

 ちなみに今回はアウトドア行なので、キャリナは太守館でお留守番である。


 さてさて、では何故、エルシィが縛られているかと言うと、それは彼女がヘイナルの担ぐ背負子に乗って移動しているからである。

 落ちないように、いわばシートベルト代わりにロープが使われているという訳だ。

 案の定、心地よい揺れに誘われてすっかり寝入っていたので、この対策は間違いがなかった。

 と、ついてきていた側近たちは頷き合ったものだ。


「ふぁ……おはようございます」

 そんなちょっと間の抜けた挨拶を投げかけつつ、エルシィはキョロキョロと周囲を見回す。

 さっきまどろみの中で聞いた鈴の音の元を探しているのだ。

 すると、一行の先頭にいるねこ耳メイド改め、ねこ耳間者カエデがしゃがみこんで、草の中にある細いロープを掴んでいるのが見えた。

 そのロープに、小さな鈴がついている。

 ともすれば夢の中の出来事かとも思ったが、あの鈴の音は紛れもなく現実だったたようだ。

「その鈴は何の為のものですか?」

 エルシィがヘイナルの背からにゅっと首を伸ばして問いかける。

 ヘイナルと背合わせの姿勢になっているので、ちょっと頑張らないと前が見えないのだ。

 カエデは規則的な間隔を以て鈴を鳴らしながら答える。

「これは里に人が来たことを知らせる鈴にゃ。

 外の人なら知らずに足を引っかけて鳴らすし、里の人なら決まった鳴らし方で帰りを知らせるにゃ」

「おぉ、帰るコールですね」

 一同、エルシィの言葉の意味は微妙に判らなかったが、まぁ納得して頷いた。


 すっかり目覚めたエルシィは、周囲を観察しながらヘイナルの背で揺られる仕事へと戻る。

 ひと眠りしたおかげでもう流石に目が冴え、エルシィは興味に任せて風景を眺めた。

 先にも述べた通り、山と言ってもあまり緑深くない。

 どちらかと言えばハゲ山と言った方が近いかもしれないが、まぁこういう風景は中央アジアなど比較的標高の高い山岳地帯にありがちな景色と言えるだろう。

 もっと高い岩山然とした頂の方は、うっすらと雪をかぶっているのが見える。


「わたくし、どれくらい寝てましたか?」

 エルシィはふと思い立って訊ねる。

 これだけ標高が高そうな場所にいるということは、結構長いこと寝ていた可能性もあるだろう。

 ところが後ろを歩くアベル少年からの答えで拍子が抜けた。

「どれくらいかな? だいたい四時間くらいか……」

 登山時間からすれば標高差八

 カエデは「何をいまさら」とちょっとビックリ気味に振り向いた。

「何をいまさらにゃ」

 実際、口に出しても言った。

「さすがエルシィ様です」

 何が流石なのか判らないが、フレヤがなぜか胸を張ってそう褒め称えた。


 ともかく、里が近いらしい。

 エルシィはより一層、周囲を注意深く見るようになった。

 とは言え、木々が生い茂る山とは違い、こうも見晴らしいいと何かが隠れる場所すらない。

 「忍者の里」的なイメージを持っていたエルシィからすれば拍子抜けである。

 思えば伊賀などがある三重奈良あたりの山地は険しく、そして緑深い。

 同じ険しいでも、これでは木々の間を飛び走る修行はできないだろう。

 いや、本当の実在の忍者が枝から枝に飛んでいく訳ではないだろうが。

 ではここで里の者たちはどのように修行しているのだろう。

 などと愚にもつかないことを想像しつつ、エルシィは里に到着するまでのわずかな時間を過ごした。


 こうして一つ二つの小さな丘を越えると、ちょうど他から隠れるような谷になった場所にその人里はあった。

 外周を、石を積み上げた人の背丈の倍くらいの外壁で囲んである以外は、何の変哲もない田舎の村に見える。

「ここの村にはどれくらい住んでいるんだ?」

「あたしは知らんにゃ。里に入ったら長に聞くと良いにゃ」

 ヘイナルの問いに、カエデがすげなく答える。

 それを聞いてヘイナルは少し難しそうな顔で肩をすくめた。

「何か問題でも?」

 ヘイナルの様子に、エルシィは首を傾げる。

「いえ……まだ味方になった訳でもない、自領でない土地ですからね。

 エルシィ様をお護りするためには必要な情報かと」

 この言葉にいち早く目を輝かせたのはフレヤだった。

 彼女はぐりんとカエデに顔を向ける。

「なるほど! それは重要ですね。

 カエデ、この村にはどれだけ住んでいるのですか?」

「だから知らんにゃ!」

 これは何のコントだ?

 と、エルシィは大きく脱力して身体を傾けた。

アルプスの少女ハイジとかあの辺の風景を思い浮かべてもらえれば近いかと


次の更新は金曜です

ではではー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ